屏東　レトロ＆アートな旅時間

屏東　レトロ＆アートな旅時間

企画構成／高田雅子　文／高田雅子　写真／張晉瑞

屏東　レトロ＆アートな旅時間

 

屏東

レトロ＆アートな旅時間

台湾鉄道屏東駅は屏東県内最大の駅。2015年に高架化された新駅舎は、ビジターセンターなど屏東市の玄関口にふさわしい設備を備えている。駅西側の新バスターミナルは屏東市から屏東県内各地へ延びる交通網の起点だ。古き良き地方都市の雰囲気を残しつつ進化を続ける屏東の街には、歴史遺産を利用した新スポットやお洒落なショップも次々に誕生している。懐かしい空気が流れる屏東で、レトロ＆アートな旅時間を過ごそう！

台湾鉄道屏東駅から徒歩、レンタサイクル、タクシーで各スポットへ
※タクシーは駅前以外では探しづらいため、あらかじめ駅やホテルなどでタクシー会社の電話番号を聞いておこう

屏東市レンタサイクル
pbike.pthg.gov.tw

 

 

注目スポット

歴史建築や最新アートにであう

驛前大和咖啡館

屏東駅駅前ロータリーから続く大通りの角に面した薄茶色の優美な建物は、1939年（昭和14年）に完成した「大和ホテル」だ。L字型の3階建て鉄筋コンクリート建築で、日本時代に流行したモダニズム建築様式のシンプルな美しさを持つ。

戦後は「大成旅社」と改名し1999年まで営業していた。貴重な歴史的遺産の建物を保存するため、現オーナーの許氏は2011年から「大和ホテル」の再生計画を始動。2014年には屏東県により建物が歴史建築に指定された。そして2020年5月にホテルの復活に先駆けて1階のカフェがオープンし、その美しい佇まいが各界の話題をさらっている。

カフェでは世界各地のスペシャルティコーヒーや、厳選した台湾産の豆をそろえている。瓶入りの水出しコーヒー「冰滴咖啡」はすっきりした飲み口でスイーツや食事のお供にぴったり。「鳳梨氣泡咖啡」は、コーヒーに屏東産のパイナップルジャムを加えて炭酸で割った、パイナップルの香りが爽やかな一杯。

スイーツは新竹県にある系列のスイーツ店「欣悅甜法式點心」から焼き菓子を直送しており、カステラのようなもちっとした食感のレモンケーキ「檸檬糖霜蛋糕」やガーリックバター風味のバターロールパン「鹽之花奶油捲（原味）」が人気。ホテル開業後はカフェが朝食会場となる予定だ。

オープンが待たれる2階から上の宿泊エリアでは、開業に向けて現代の消防基準に合わせた補強工事が進められている。館内インテリアはモダンなデザインを取り入れつつ、あえて新築に見えるような補修は施さず、壁、窓、天井、階段などは可能な限り元の姿のまま保存。建物全体に生きた美術館のような雰囲気に満ちている、「大和ギャラリー」と呼びたくなる美しい佇まいに完成への期待が高まる。2023年内開業予定。

屏東縣屏東市民族路163號
08-766-9777
9:00-18:00
ミニマムチャージ：1人1杯ドリンク／席利用：2時間まで
facebook.com/yamatocoffee
台湾鉄道屏東駅から徒歩2分

 

 

屏菸1936文化基地

台湾初の「たばこ」がテーマの博物館。建物の前身は1936年（昭和11年）に建てられた「台湾総督府屏東支局葉煙草再乾燥場」。戦後も紙巻きたばこや刻みたばこを生産していたが、専売制の廃止、喫煙人口の減少などの影響でたばこ産業が衰退し、2002年に工場は閉鎖された。その後、2010年に葉たばこ再乾燥場、ボイラー室、中山堂などが屏東県の歴史建築に指定され、2017年には指定が工場全域に拡大された。貴重な近代産業遺産である工場や倉庫は元の姿をほぼ完全な形で残したまま整備され、2022年2月に博物館として一般公開された。

工場本体と16号倉庫からなる「菸葉館」の1階では常設展「菸・葉・廠―複薰的金黃記憶（タバコ・葉・工場―よみがえる黄金の記憶）」を展示。実際の工場設備に最新技術を組み合わせた現代的な展示空間が印象的だ。

2階の「屏東客家館」では屏東を中心とした客家文化を紹介。別館の倉庫はシーズンごとに異なる特別展を開催している。ミュージアムショップではオリジナルグッズや屏東土産も購入できる。

屏東縣屏東市菸廠路1號
08-721-0234
屋外9:00-22:00、月曜休園
展示館9:00-18:00、金曜-日曜9:00-21:00（最終入場閉館1時間前）、月曜休館
常設展（屏東菸葉館・屏東客家館を含む）NT$199
没入体験型展覧館は別料金（展覧会により異なる）
www.cultural.pthg.gov.tw/pt1936
台湾鉄道屏東駅からタクシーで8分

 

屏東県民公園（HEITO 1909）

かつての製糖工場とパルプ工場の跡地を利用した公園で、敷地面積は20haにおよぶ。「台湾製糖株式会社阿緱製糖所」が操業を開始したのは1909年（明治42年）。「阿緱」は屏東市の旧名で、製糖工場の建設により、周辺に鉄道、空港、水道などのインフラの整備が整ったことで街が発展した。

戦後、製糖工場は国民政府に接収され、1977年には大量のサトウキビの搾りかすを使用するパルプ工場が操業を開始。その後、製糖業の衰退に伴い1990年代に工場が相次いで閉鎖されると工場と倉庫群は廃墟化したが、2015年の調査で数十年ぶりに歴史的価値が再評価され、敷地内を流れる殺蛇渓と湿地と併せて「屏東県民公園」として整備された。

2021年2月に一般公開されると、無機質なコンクリートと鉄の遺構を活かしたアートな空間が台湾内外の注目を集め、日本のグッドデザイン賞をはじめとした世界の名だたる建築・デザイン分野の賞を次々と受賞。歴史遺産と自然生態が融合した新しい屏東のランドマークとなっている。

屏東縣屏東市復興路（復興路出入口）
24時間
入園無料
v台湾鉄道屏東駅からタクシーで5分

 

 

屏東原百貨

屏東に台湾で最初の空港「屏東飛行場」が建設されたのは1920年（大正9年）。その後、飛行場付近には日本の陸海軍の軍人のために大量の宿舎が建設された。第二次世界大戦終結後、宿舎群は「勝利新村」と改称され、中国大陸から渡ってきた将校や兵士の住まいとなった。現在はアートスポット「勝利星村創意生活園区」として整備され、宿舎の大部分がカフェや書店、資料館などに生まれ変わっている。「屏東原百貨」は、この「勝利新村」の一角に2021年5月にオープンした新スポット。テーマが異なる6軒のショップで構成されており、グルメ、インテリア、服飾、音楽、アートなどバラエティに富んだ台湾原住民族文化に触れられる。一軒ずつ見て回れば、屏東の土地の温もりに溢れた土産物にも出逢えるだろう。

屏東縣屏東市康定街2號～12號（勝利星村創意生活園区内）
11:00-21:00ごろ、火曜・水曜休園（詳細は各店公式サイトを参照）
pingtungharvest.mystrikingly.com
台湾鉄道屛東駅から徒歩12分
※6軒のうち2軒は新店舗準備中

 

原音

世界の楽器、中古レコード・CD、屏東アーティストの音楽作品を販売。庭に録音スタジオがあり、レコーディングやイベントも行っている。

屏東縣屏東市康定街4號
13:00-19:00、火曜・水曜定休
facebook.com/tolan.space

 

原織

台湾原住民族の工芸品や服飾品を販売する雑貨店。原住民料理の軽食や酒類、ドリンクも提供しており、不定期でイベントも開催している。

屏東縣屏東市康定街6號
11:00-21:00、火曜・水曜定休
bit.ly/3HMy4Mq

 

原家

パイワン族やタイのアーティストが作る、月桃などの自然素材を利用した家具・雑貨・アート作品を展示・販売するインテリアショップ。

屏東縣屏東市康定街8號
11:00-19:00、不定休
facebook.com/vuvumade

 

原聚

屏東を中心とした台湾原住民族関連のクリエイティブグッズや小規模農家の特産物などを中心に取り扱うショップ。カフェ利用もできる。

屏東縣屏東市康定街12號
11:00-21:00、火曜・水曜定休
pingtungharvest.mystrikingly.com/bulay

 

屏東県立図書館総館（森林図書館）

2020年8月にリニューアルオープンした屏東県立図書館の本館。緑豊かな公園内に佇む図書館は1階がガラス張りの前衛的なデザイン。外から眺めると、鏡のようなガラスに周囲の樹木が写り込み、図書館全体が森の中に溶け込んでいるかのようだ。

図書館は誰でも利用できる。モダンなインテリアの館内には、ソファ、一人掛け、勉強用のテーブルなど、用途に応じた多彩な座席が用意されており、寛いだ雰囲気のなかで自由に読書が楽しめる。1階ロビーにはカフェや雑貨店も入店しており、散策の途中に立ち寄るのもおすすめ。

屏東縣屏東市大連路69號（千禧公園内）
9:00-21:00、月曜休館
台湾鉄道屛東駅からタクシーで8分

 

屏東職人町

古いアパートの外壁にヨーロッパの街角の風景を描いた3Dアートを施した「屏東職人町」は、若者に人気のSNS映えスポット。向かい合う2棟のアパートの各部屋にはカフェや食堂、アートスタジオなどが入居しており、全体がおしゃれなアートビレッジになっている。

屏東縣屏東市仁德路43巷1-2號
屋外24時間、店舗は店ごとに異なる
facebook.com/propingtung
台湾鉄道屛東駅から徒歩10分

 

 

おしゃれグルメ

SNS映えの新ショップ

長安製麺 Changan Noodle Bar 職人町

おしゃれスポット「職人町」で商いを営む食堂。コンクリートブロックがむき出しの店舗と入居している建物の壁画がモダンな印象を醸し出している。店頭には打ち立ての麺が干してあり雰囲気満点だ。

麺のメニューはネギ油で和えた「蔥油拌麵」と醤油ベースのたれを絡めた「臊子麵」がメイン。好みで麺の太さが選べ、特製ラー油をかけても美味。麺のお供に頼みたい小皿料理は、台湾風のキムチ「黄金泡菜」や豚ほほ肉の煮物「嘴邊肉」などが人気だ。店内で販売している製麺所自慢の乾麺はお土産にぴったり！

屏東縣屏東市仁德路43巷2號1F
10:30-19:30、月曜定休
shop.changantw.com
台湾鉄道屛東駅から徒歩10分

 

美菊麺包店

流行に敏感な若者から観光客にまで人気が広がり、平日の昼間も大盛況のベーカリー。店舗はコンクリート打ち放しの壁にシンプルなロゴを配し、カフェのような雰囲気。店内もシンプルモダンな明るい雰囲気で、中央の陳列台に大量のパンが並べられている。

パンは本格的な欧風パンから台湾の総菜パンまで幅広いラインナップ。台湾の枝豆を練り込み胡椒をきかせた「黑胡椒毛豆」、ローゼルとクリームチーズの組み合わせが爽やかな「洛神蜂蜜乳酪」、オレンジとカスタードクリームのデニッシュ「香橙可頌」、タロイモクロのデニッシュ「芋頭可頌」など、どの商品もはずれのない美味しさだ。

屏東縣屏東市公園路66號
12:00-19:30、火曜・水曜定休
facebook.com/meiju88
台湾鉄道屛東駅から徒歩11分

 

 

伝統グルメ

地元民が通う定番の味

正老牌屏東肉圓

屏東名物の「屏東肉圓」は、米をすりつぶして作った皮で豚肉餡を包んで蒸しあげた料理。「小」サイズ1人前が3個入りなので、小食な人ならこれだけでも満腹になりそう。蒸した肉圓はあっさりした餅のような風味だが、醤油だれとすりおろしたニンニク、スープセロリが味を引き締めている。好みで唐辛子だれをかけてもいいだろう。付け合わせには魚のつみれスープ「魚丸湯」か固めた豚の血入りのスープ「豬血湯」がおすすめだ。営業時間は早朝から昼過ぎまで。平日も営業時間中はイートイン、テイクアウト共に客足が絶えず、人気のほどがうかがえる。ぜひ早起きして名物を味わいに出かけよう。

屏東縣屏東市民族路61號（屏東夜市61番）
4:30-14:00
台湾鉄道屛東駅から徒歩7分

 

詹記肉燥飯・幸福湯

看板商品の「肉燥飯」は、皮つきの豚バラ肉を細かく刻んで醤油ベースの甘めのたれで煮込んだそぼろを白米にのせたそぼろ飯。「幸福湯」は、虱目魚（サバヒー）の皮、魚肉、つみれ、アサリ、ショウガなどが入った具材たっぷりの海鮮スープ。具材にわさび醬油をつけて食べるのが地元民の定番だ。ゆでた素麺にそぼろと肉団子をのせた「乾麵線」やどんぶりに山盛りのゆでモヤシ「燙豆芽菜」なども人気。どれもとにかく量が多いので、注文時に頼みすぎないように気を付けよう。

屏東縣屏東市博愛路26號
10:00-14:00、17:00-20:00、月曜定休
台湾鉄道屛東駅から徒歩8分

 

発財車旗魚黑輪

中央市場の傍らにたつ、カジキマグロの練り物を揚げた「旗魚黑輪」の専門店。香ばしく揚がった練り物のなかにはゆで卵が包まれており、そのままでも辛い唐辛子だれをつけて食べてもうまい。食事をすると台湾風の甘い味噌汁が無料サービスとなる。

屏東縣屏東市福建路78號
12:00-17:30、月曜定休
台湾鉄道屛東駅から徒歩10分

 

 

スイーツ＆ドリンク

まったりタイムの相棒

秋林牛乳大王

搾りたてのフルーツジュースやフルーツ山盛りのかき氷が人気の店。夏は夜遅くなっても行列が途切れず、閉店を待たずに売り切れる商品が続出するほど。看板商品の超濃厚なパパイヤミルク「木瓜牛奶」は、出来立ての美味しさを味わうため20分以内に飲み切ろう。季節のフルーツを盛り合わせたかき氷「水果冰」は2人でシェアしても十分のデカ盛りのうえ、1杯わずか50元とコストパフォーマンスも抜群！

屏東縣屏東市信義路28號
11:00-22:00、水曜定休
台湾鉄道屛東駅から徒歩7分

 

壹拾壹豆沙牛奶

綠豆沙牛奶（緑豆ミルク）と紅豆沙牛奶（小豆ミルク）が人気のドリンクショップ。緑豆も小豆も粒あんにそのままミルクを加えたような粒感のある濃厚な仕上がり。一見するととても甘そうだが、上品な甘さで非常に美味。

屏東縣屏東市光復路2號
0980-617-276
11:30-19:30（予約制）、土曜・日曜定休
facebook.com/BeanMilk11
台湾鉄道屛東駅から徒歩4分

 

 

一足のばして

屏東観光バスでめぐる
カカオとコーヒーの旅

屏東県の定期観光バス「郵輪巴士」を利用すれば、交通が不便な観光地へも気軽に遊びに行くことができる。なかでも「603C 185沿山可愛咖」は台湾原住民族文化と屏東県の特産物のカカオ・コーヒー・パイナップルを一度に満喫できるツアー。台湾原住民族郷土料理のランチ、カカオ園でのDIY、コーヒー園見学、パイナップル園でのアフタヌーンティーと、屏東ならではの楽しみがギュッと詰まっている。

路線ルート

郵輪巴士 603C 185沿山可愛咖（予約制）
詳細は台湾好行バス公式サイトを参照（日本語）
bit.ly/40AnJtZ

 

 

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