美味しく元気に! 漢方グルメ
企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/陳伯瑋・陳正國・視野創異行銷
美味しく元気に!
漢方グルメ
「薬膳」は中国伝統の中医学の理論に基づき、漢方薬の原料である生薬と旬の食材を組み合わせて作る身体に良い料理。「薬食同源」の養生を大切にする台湾では、薬膳が生活のなかに根付いている。今回紹介するのは、漢方薬店にルーツを持つプロが作る漢方グルメ。漢方食材を美味しく味わいながら、旅で疲れた身体のバランスを整えて元気になろう!
薬膳の五味と五気
五味:食材の味、酸・苦・甘・辛・鹹(塩辛い)
五気:身体に作用する食材の性質、寒・涼・平・温・熱
※五気の性質は加熱すると変わることが多い。
目次
正一堂養生膳食坊
漢方薬店が開いた薬膳レストラン
MRT圓山駅近くの「大龍峒」と呼ばれるエリアは歴史ある寺廟が並ぶ古式ゆかしい雰囲気の街。保安宮わきの商店街「哈密街」に店を構える「正一堂養生膳食坊」の本業は1963年創業の漢方薬店「正一堂国薬號」だ。薬膳料理は2010年に2代目社長の林正川さんが提供を開始した。
店に足を踏み入れると入口には昔ながらの薬箪笥が置かれており、奥のフロアが薬膳料理レストランになっている。食事メニューは定食で、1人でも薬膳料理を体験しやすい。
基本のセットは、薬膳スープとチャンチンを使ったジェノベーゼ風素麺「香椿麵線」または五穀米、ゆで青菜。一番人気の「干貝鮑魚雞」はアワビと鶏骨付き肉のスープ。鶏骨付き肉と豆腐のような食感の雞佛(鶏の睾丸)入りの「雞佛雞」も人気がある。
スープのベースは、気と血を補い疲労虚弱を改善する「十全」、血を補い体力虚弱や冷え性を改善する「四物」、元気を補う「人蔘」、虚熱を冷まし胃腸の機能を強化する「涼補」の4種類。このほか杜仲、首烏(烏骨鶏)、薑味(生姜)も選べる。スープはどれも濃厚な味わいでありながらも漢方の苦みや香りは控えめで、普段薬膳になじみがない人も飲みやすい。
台北市大同區哈密街108號11:00–14:00、17:00–20:00、日曜定休
定食を注文しない場合はミニマムチャージ1人NT$80
facebook.com/Herbalkitchen0225919631
MRT圓山駅から徒歩10分
永晉薬膳坊
薬膳師のこだわりが詰まった薬膳
もとは漢方薬店を営んでいた黄福雄さんは、大病をきっかけに食の重要性を再発見し、2007年に漢方薬膳料理店「永晉薬膳坊」を立ち上げた。
店で提供する薬膳料理は、黄さんの30年以上にわたる漢方関連の知識と経験に基づき、塩など余分な調味料を使用せずに、厳選した生薬と食材の自然な味わいを引き出している。
初めての人には、西洋人参、杜仲、龍眼などと烏骨鶏の肉を煮込んだスープ「何首烏湯」、「漢方の王様」と呼ばれる高麗人参入りのお粥「人蔘粥」、滋養強壮に効果があるとされる黄耆(オウギ)入りのスープと皮付き羊肉の煮込み素麺「黃耆羊肉麵線」などがおすすめだ。
黄さんによると、生薬で身体の調子を整える薬膳料理だが、体調や体質、年齢によっては食べてはいけないものもあるため、注文前にぜひ確認してほしいとのこと。薬膳料理以外のメニューも多彩なので、組み合わせて食事を楽しもう。
新北市三重區萬全街72號12:00–14:00、17:00–21:00、火曜定休
www.yong-jin.com.tw
MRT三重国小駅から徒歩7分
◆薬膳料理を食べてはいけない人◆
・風邪 ・咽頭痛 ・腫物 ・高血圧 ・高血糖 ・高脂血症
・生理中 ・妊娠中 ・産後(40日まで) ・10歳以下の児童
・服薬中・ワクチン接種3日前から10日後まで
※このほか疑問点は注文前に確認を
一滴滴 EDD 漢方甜點専売店
罪悪感なしで楽しめる漢方スイーツ
「一滴滴」は台北松山空港近くの住宅街に佇む1986年創業の漢方薬店「信源參薬行」併設の漢方スイーツ専門店。店長の王心盈さんは、父親が数十年かけて積み上げてきた漢方薬の知識を活かし、パティシエと共同で漢方スイーツを作り上げた。
人気の「黑夜 芝麻杜仲生乳捲」はゴマと杜仲、フランス産生クリームを合わせたロールケーキ。「木屑蛋糕」はポルトガル語で「おがくず」を意味するセラドゥーラ(serradura)をアレンジしたお菓子で、砕いたクッキー、フランス産生クリーム、練乳を重ねて作る。
「春桂」は桂花(キンモクセイ)と包種茶を組み合わせた春にぴったりの味わい。「夏洛」はバラとローゼルの爽やかな甘酸っぱさ。「秋合」はコーヒーを思わせる決明子、優雅な香りの百合、菊花のコンビ。「冬杞」はカカオの風味と桑の実とクコのジャムが冬らしいリッチな味わいだ。
カフェ利用も可能で、冬虫夏草のパウダーをふりかけた「蟲草拿鐵」などの漢方入りのカフェラテや漢方茶なども味わえる。
台北市松山區復興北路427巷20號10:30-18:30、土曜・日曜定休
ミニマムチャージ1人NT$100、席利用2時間
www.edd.tw
MRT中山国中駅から徒歩7分
※日本語メニューあり
※木屑蛋糕は冷凍保存3か月(食前に常温で30分解凍)、冷蔵5日
元益與宝来
コーヒーと漢方の幸せな出会い
薬食同源の養生の考え方が広く生活に浸透している台湾だが、若い人たちにとって漢方薬店はなじみが薄いものになってきている。
1984年創業の新北市新荘の漢方薬店「元益蔘薬行」2代目の張修豪さん、張惠雯さん、張博勛さんの三兄妹は、若い人にもっと漢方に興味を持ってもらいたいと考え、2016年代に漢方薬店のなかに漢方カフェ「元益與宝来」を立ち上げた。
店内でコーヒー豆の焙煎を手がけるのは、大学時代からコーヒーについて学んできた末っ子の博勛さん。カフェラテと生薬を合わせた漢方ラテは店の看板メニューだ。おすすめの「八角拿鐵」は甘みと苦みを持つ八角のラテ。「桂花拿鐵」は桂花(キンモクセイ)の甘い香りが華やか。
コーヒーが苦手な人は、黄耆、麥門冬、枸杞、紅棗、挂圓、西洋蔘、陳皮、甘草の8つの生薬をブレンドした甘い「八寶益氣茶」をお試しあれ。ドリンクのお供には、リュウガン蜂蜜をかけた紅ナツメのワッフル「比利時紅棗鬆餅」や、ほんのり当帰が香るタロイモのシロップ煮「當歸蜜芋頭」などの漢方スイーツを合わせて、ゆったりカフェタイムを満喫しよう。
新北市新莊區建安街121巷30號9:00-20:00
ミニマムチャージ1人NT$130
yuanibaolai.weebly.com
MRT丹鳳駅から徒歩12分
世春薬行
手軽に携帯できるボトル漢方茶
新北市三重の「世春薬行」は1978年創業の漢方薬店。現在店を切り盛りする2代目の盧建達さんは2022年に店舗をリニューアルし、古い看板は残しつつ、店内を明るくモダンな空間に生まれ変わらせた。
取り扱うのは、生薬をはじめ、スパイス、漢方茶ティーバッグ、薬膳料理キットなど。なかでもおすすめはボトル入りの漢方茶。
粉光養氣茶(免疫力アップ)、去油茶(ダイエット)、晴明飲(眼精疲労回復)、心甘飲(心臓・肝臓機能アップ)など、効能別に数種類取り揃えており、気に入った漢方茶はティーバッグを購入すれば自宅でも楽しめる。
西洋人参と白キクラゲ入りの美容ドリンク「花旗蔘木耳露」やツバメの巣「即食燕窩」など、そのまま食べられる漢方デザートもぜひ試してみたい。
新北市三重區大同北路18號10:00-21:00、日曜定休
instagram.com/shichun1978
MRT台北橋駅から徒歩8分
品盛堂-保安薬房
散策の疲れを癒す漢方ドリンク
1904年創業の「保安堂薬行」は淡水老街で120年続く老舗漢方薬店。2017年に4代目と5代目が立ち上げた新ブランド「品盛堂」では、忙しい現代人の生活にも取り入れやすい養生茶や漢方入浴パックなどを取り揃えている。店頭で販売している漢方ドリンクは淡水散策の疲れを癒すのにぴったりだ。
新北市淡水區中正路89號8:30-20:30、水曜8:30-17:00
facebook.com/pinshengtang
MRT淡水駅から徒歩8分
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