嘉義 東石・布袋 海まちめぐり
企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/溫宏嘉
嘉義 東石・布袋
海まちめぐり
嘉義県沿岸部は雲林・嘉義・台南にまたがる「雲嘉南浜海国家風景区」の域内で、美しい湿地帯が広がるエリア。嘉義県内の東石(ドンシー)と布袋(プーダイ)はカキの養殖で知られ、嘉義県のカキの水揚げは全国の5割近くを占める。名産のカキを味わうなら、5月から9月のカキの水揚げ時期がおすすめだ。潮風そよぐ、海まちをめぐる旅に出かけよう!
おすすめコース
1日目:高速鉄道嘉義駅→東石→布袋泊
2日目:布袋→台湾鉄道新営駅
雲嘉南浜海国家風景区管理処
swcoast-nsa.gov.tw/ja
目次
東石
古くからカキの養殖と漁業が盛んだった東石。現在も東石のカキは「東石蚵」として全国で最も高い知名度を誇る。美味しいカキと素朴な漁村の風景を満喫しよう。
東石漁港
東石漁港は休日になると観光客でにぎわう観光漁港。朝から漁に出ていた漁船が漁港に戻るのは昼過ぎ。「東石魚市場」では、観光客も午後1時半から始まる競りを見学できる。
漁港西側の「東石漁人碼頭」には、北緯23.5度の北回帰線の通過位置を示す記念碑「東石北回帰線地標」をはじめ、展望台や人工ビーチなど、みどころが盛りだくさん。
堤防の展望台から海を見渡せば、目の前には見渡す限りのカキの養殖筏。時おり漁船が筏の間を通り過ぎていく、のんびりした漁村の風景に、ほっと心がほぐれていくことだろう。
東石漁人碼頭
嘉義縣東石鄉彩霞大道420號
9:00-21:00
高速鉄道嘉義駅から高速鉄道シャトルバス7211で朴子バスターミナル下車、嘉義客運バス7233A(休日運行)に乗り換え「東石漁人碼頭」下車、徒歩7分
東石魚市場
嘉義縣東石鄉觀海三路300號
8:00-17:00、月曜休市
蚵老大海鮮碳烤
東石漁港では、数多くのレストランでカキの炭火焼きの食べ放題を実施している。その中でも、冷房が効いた部屋で漁港を眺めながら炭火焼きを楽しめるのが「蚵老大海鮮碳烤」だ。
カキの食べ放題を注文するなら直接2階の炭火焼きコーナーへ。注文して支払いを済ませたら、冷蔵庫から桶に入ったカキを取り出し、炭火で焼いていく。カキはどれも大ぶりで、うまみたっぷり。カキが一番肥え太る7月から8月はとくに大きなカキが揃う。
カキ以外の料理を食べたい時は、1階の海鮮レストランのメニューを注文できる。塩コショウで味付けし、たっぷりのニンニクをトッピングした「鹽烤胡椒魚」やカキの炒めそうめん「炒蚵仔麵線」、エビのマヨネーズがけ「鳳梨蝦球」は、ほとんどのテーブルで注文される人気メニューだ。
嘉義縣東石鄉觀海三路307號10:00-20:00、日曜10:00-21:00、月曜定休
カキの食べ放題:大人NT$200・子供NT$100、席利用:連休・休日は3時間
tinyurl.com/5bmubx35
先天宮
300年以上の歴史を持つ「先天宮」は、東石地区に住む漁民の信仰の中心。海に面して威風堂々と建つ廟は、壁面から天井まで精緻な彫刻、絵画、装飾が埋め尽くし、参拝者を圧倒する。
主神は五府千歳(王爺ともいう)。5年に1度、王爺を乗せた船「王船」に火を放って天に送り、厄除けを祈願する「王船祭」は最も重要な祭典だ。
嘉義縣東石鄉猿樹村243號5:30-20:00
高速鉄道嘉義駅から高速鉄道シャトルバス7211で朴子バスターミナル下車、嘉義客運バス7223・7233Aに乗り換え「東石」下車、徒歩6分
先天宮廟口六十年蚵嗲老店
看板メニューの「蚵嗲」は、小麦粉と大豆粉を合わせた衣の上に、キャベツとニラのみじん切りの上に大ぶりのカキを並べ、一番上にショウガのみじん切りを加え、最後にもう一度衣をまとわせて揚げて作るカキのかき揚げだ。
できたて熱々にかぶりつけば、サクサクの衣の中からジューシーなカキがショウガの香りをまとって現れる。甘い醤油だれや唐辛子だれをかけても美味い。カキのオムレツ「蚵仔煎」やエビのオムレツ「蝦仁煎」も人気。
614嘉義縣東石鄉東石村199-1號10:00-17:00、月曜・火曜定休
鰲鼓湿地
全長10.5㎞の堤防に囲まれた「鰲鼓湿地」は、もとは1960年代から台湾糖業により開拓がすすめられ、1972年に東石農場、鰲鼓農場、渓子下農場などの農場が開かれた場所だった。
当時はサトウキビの栽培や養豚などが営まれていたが、のちに地盤沈下や塩害が深刻化し、農地は廃棄された。自然が回復する過程で、湿地化した土地に豊かな生態系が形成され、2012年には湿地の生態を保護するため「鰲鼓湿地森林園区」が設立された。
面積約1500haの域内ではカタグロトビ、セイタカシギなどの留鳥のほか、冬にはクロツラヘラサギやインドアジサシなどの渡り鳥の姿が見られる。最も多くの鳥類を観察できる9月から翌年5月までは、バードウォッチングのベストシーズンだ。
嘉義縣東石鄉鰲鼓村
鰲鼓湿地生態展示館
鰲鼓湿地を訪ねるなら、まず最初に「鰲鼓湿地生態展示館」へ足を運んでみよう。小学校の分校だった建物を利用した資料館では、鰲鼓湿地の歴史や自然生態を紹介している。
1階のインフォメーションセンターでは旅行案内、鰲鼓湿地で観察できる鳥類の紹介、望遠鏡や自転車の貸し出しなどを行っており、管轄する農業部林業及自然保育署のオリジナルグッズのほか、阿里山森林ハニービール、森林蜂蜜などのお土産も販売している。
2階の常設展では、豊富な資料とマルチメディア展示を通して、楽しく鰲鼓湿地の生態と自然の魅力に触れられる。
嘉義縣東石鄉鰲鼓村四股54號9:00-16:30、月曜休館
参観無料
高速鉄道嘉義駅から高速鉄道シャトルバス7211で朴子バスターミナル下車、嘉義客運バス7225に乗り換え「四股(農場)」下車、徒歩3分
向禾休閒漁場(蔡牽海盜村)
清代に台湾海峡で暴れまわった海賊王・蔡牽をテーマにしたレジャー漁場。鰲鼓は蔡牽亡き後、一味の残党が隠れ住んだ海賊村だった。オーナーの蔡恭和さんは実家が営む魚の養殖場を利用し、地元に伝わる海賊伝説と湿地の生態を組み合わせたレジャー漁場を作り上げた。海賊船風のボートや海賊の像などがあちこちに置かれた場内は海賊村ムードたっぷり。
体験エリアでは、ボート漕ぎ、寒天の原料となる海藻のオゴノリ狩り、ハマグリの潮干狩り、タイワンダイ釣りが楽しめる。
思い切り遊んだら、海鮮の炭火焼に舌鼓。自分で採ったハマグリは美味しさもひとしおだ。お土産には、海藻パイナップルビネガー、海藻クラフトビール、海藻クッキー、海藻ソープなどの漁場オリジナル商品がおすすめ。
嘉義縣東石鄉鰲鼓村12鄰四股67-6號05-360-0959
9:00-12:00、13:30-17:00
入場+体験:大人NT$380、12歳未満の児童NT$300、3歳以下の乳幼児無料
facebook.com/yolofun
高速鉄道嘉義駅から高速鉄道シャトルバス7211で朴子バスターミナル下車、嘉義客運バス7225に乗り換え「四股(農場)」下車、徒歩18分
※1週間前までに予約をおすすめ:yolofun.rezio.shop/zh-TW(予約ページ)
※体験コース内容:ボート漕ぎ、潮干狩り、魚釣り、炭火焼き、海賊衣装貸出を含む
※炭火焼きは人数分のカキと潮干狩りで採ったハマグリ、エビ1人1匹を含む
※大きな魚を釣り上げた場合は調理代NT$50元で炭火焼き可、魚の追加注文は1尾NT$200
※5人以下のグループは木炭代として1組あたりNT$150追加徴収
ひと足のばして
白水湖寿島
2020年公開の台湾映画『消失的情人節』(邦題:1秒先の彼女)のロケ地として、一躍有名になった新スポット。もとは日本時代に開発された塩田だったが、台風が来る度に堤防が決壊し、流れ込んだ海水で塩田一面に白波が立った様子から「白水湖」と呼ばれるようになった。
1983年に政策により製塩が機械化されると、この地は田舎の一漁村に姿を変えた。長年の地盤沈下により満潮時に道路や家屋が水没することから住民が去り、現在は無人の廃墟が残るのみとなっている。
映画公開後はSNSでも人気が急上昇。満潮時の水没した道路、干潮時に現れる陸地、圧巻の夕陽など、時間帯で表情を変える風景が観光客を惹きつけている。
嘉義縣東石鄉掌潭村白水湖高速鉄道嘉義駅から車で30分
※チャータータクシー利用をおすすめ
布袋
かつて「布袋嘴」と呼ばれていた布袋は、清代から漁業や製塩業で繁栄した。現在も観光漁港や洲南塩場の塩田が往時の繁栄ぶりを伝えている。
布袋漁港
布袋観光魚市
嘉義沿岸で最大規模を誇る布袋漁港は、大勢の観光客が訪れる観光漁港。漁会(漁協)の「布袋魚市場」では毎日午後1時半から競りが行われ、一般客も業者が魚に値をつける様子を見学できる。
隣接する「布袋観光魚市」には、小売りの鮮魚店や乾物店、海鮮料理店や屋台が軒を連ねており、観光客も手軽な価格で買い物や食事が楽しめる。鮮魚店で購入した魚介類を海鮮料理店に持ち込み代理調理してもらうことも可能だ。
嘉義縣布袋鎮岑海里中山路3號10:00-19:00、土曜・日曜9:00-19:00
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布新橋」下車、徒歩4分
高跟鞋教堂
青い空に映えるハイヒール形のガラスの教会は、布袋を代表するランドマーク。高さ17m、幅11mのハイヒールは、1269本の鉄筋に320枚あまりの青いガラスを取り付けた構造で、世界唯一の造形美を誇る。ライトアップされた夜間の姿もロマンチック!
嘉義縣布袋鎮新西路5號24時間開放、ライトアップ18:00-21:00
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布新橋」下車、徒歩14分
布袋彩虹屋
2023年に登場した新スポット。布袋漁港にビビットカラーで塗装された民家が並ぶ様子が、基隆の正濱漁港に続く「台湾版ヴェネツィアブラーノ島」として注目を集めている。
嘉義縣布袋鎮後寮路84號(観覧は対岸の嘉義縣布袋鎮順安路61號から)台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布袋遊客中心」下車
黒皮海鮮餐庁
布袋観光魚市に隣接する海鮮レストラン。英語の「Happy」と同じ音を持つ店名「黒皮」には、オーナー・游志豪さんの「楽しく食事してほしい」という願いが込められている。
看板メニューの「巨無霸海鮮肉圓」は、通常の何倍もの大きさの巨大な肉圓。でんぷんの皮は蒸してから油で揚げるため、外側はカリカリ、内側はプルプルの独特な食感だ。肉餡の具材は、煮卵、豚肉、嘉義産鶏肉、布袋産エビ、北海道産干貝柱、大甲産タロイモ、埔里産シイタケの7種で、ほんのり五香粉風味。これだけでも満腹になりそうなくらいボリューム満点な一品だ。
このほか、角切りのカラスミとサクラエビ入りの「黃金烏魚子炒飯」、直径5㎝はありそうな巨大イカ団子揚げ「巨無霸花枝丸」、茹でカキ「五味鮮蚵」、茹でイカ「冰鎮軟絲」などもぜひ注文したい。
嘉義縣布袋鎮中山路43號11:00-18:00、水曜定休
Ticket:ミニマムチャージ1人NT$90、持込禁止
happyfood.u98.com.tw
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布新橋」下車、徒歩5分
布袋港蚵嗲王
カキのかき揚げ「蚵嗲」の店の名物は、カキを三段に重ねた「全蚵三層」。レア状態のカキはプルプル、衣はサクサクの仕上がり。完全に火を通したい場合は注文時に伝えよう。もうひとつの名物「鰻魚飯」は、以前はウナギ養殖を営んでいたオーナー自慢の鰻丼だ。
嘉義縣布袋鎮中山路42號5:00-18:00
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布新橋」下車、徒歩5分
村上桃貴手做烘焙
若い夫婦が妻の実家がある布袋にUターンして開いたベーカリー。店名の「村上」はオーナーの祖父の日本時代の姓、「桃貴」は夫人の兄のあだ名に由来する。洲南塩場の自然塩をはじめ、東石東石の落花生粉、茶山部落の黒糖、義竹の桑の実など、嘉義の特産品を使ったパンやスイーツが人気。
嘉義縣布袋鎮海運街154號15:00-21:00、火曜・金曜・土曜定休
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布袋遊客中心」下車、徒歩7分
※パンの焼き上がり時間は16時、事前に電話予約するか焼き上がり時間前の訪問をおすすめ
塩田の記憶
洲南塩場
清代から塩田の開発が進んだ布袋では、かつては製塩と漁業が主要な産業だった。「洲南塩場」の設立は1824年。第二次大戦後の1970年代に黄金時代を迎えた天日干し製塩は、その後の機械化により衰退していく。さらに輸入食塩にシェアを奪われた結果、2001年に塩田は閉鎖された。
その後塩田は放置されていたが、2008年に布袋で生まれ育った蔡炅樵さんを中心とした「布袋嘴文化協会」により、文化塩田として再開された。
協会では旧塩田の従業員たちと力を合わせ再整備した2haの塩田で天日干し製塩を行い、地元の塩田製塩の文化と技術を未来につなげている。天秤棒担ぎや塩の天日干し、塩の収穫などを体験するガイドツアーは、団体旅行や教育機関の体験プログラムとして人気が高い。
嘉義縣布袋鎮新厝仔402號05-347-8817
8:00-17:30、土曜・日曜休場
参観無料、予約制体験ツアーは別料金
taiwansalt.com
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布袋鎮公所」下車、徒歩16分
※予約制体験ツアー(中国語)は2週間前までに予約、詳細は問合せ(HP>活動予約>一般団客)
布袋塩山
東石郷、布袋鎮、義竹郷にまたがり、面積2000haを数える「布袋塩場」は、清代から日本時代にかけて開発された洲南塩場などの塩田を統合し、第二次大戦後に設立された製塩場で、六大塩場のひとつだった。
天日干しによる製塩は1960~1970年代に最盛期を迎えたが、機械化や民営化により徐々に衰退。2001年には塩田が閉鎖され、産業としての塩田製塩はその歴史を終えた。台湾塩業の売店前に盛られた小さな塩山が、かつての塩田の歴史を伝えている。
嘉義縣布袋鎮新厝仔13號屋外24時間開放、売店9:30-18:00
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕6で「布袋鎮公所」下車、徒歩7分
ひと足のばして
1920美漾森林
海岸沿いの湿地に広がる「1920美漾森林」は、知る人ぞ知る秘境スポット。もとは台湾最大のサバヒーの養殖地だったが、強風と飛砂から農地や建物、公共施設を保護するため、1937年に「第1920号飛砂防止保安林」に指定された。
南北2.5㎞、東西230m、面積約118haの域内と周辺には、少なくとも340種の植物が生育しているほか、14種類の哺乳類、68種類の鳥類、8種類の爬虫類、5種の両生類が生息しており、沿岸部の森林と湿地の生態系保護においても重要な役割を果たしている。水路や池の周囲にモクマオウ林が広がる風景は、平地でありながら山深い森林のような神秘的な雰囲気が漂う。
嘉義縣布袋鎮好美里虎尾寮24時間開放
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕5で「好美里」下車、徒歩26分
好美船屋(好美農漁産)
布袋鎮好美里は、民家の壁に3Dアートが描かれたアートビレッジとして近年注目を集めている漁村。好美里でひときわ目を引く大型船を模した建物「好美船屋」は、地元の農水産品や文化を紹介するアンテナショップだ。
運営するのは好美里の3D壁画を描いたアーティストの曽進成さんで、館内は天井から床、商品棚に至るまで、海をテーマにした3Dアートで彩られている。
海鮮のうまみたっぷりのXO醤、からすみ、洲南塩場の天日干し塩など、布袋ならではのギフトも販売しており、お土産探しにも最適だ。休日限定でハマグリやサバヒーなどの魚介類をふんだんに使った海鮮麺も提供している。
嘉義縣布袋鎮好美里虎尾寮700號10:00-18:00、火曜定休
facebook.com/haomei400
台湾鉄道新営駅から大台南バス棕5で「好美里」下車すぐ
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※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。