淡水 & 八里
企画構成・文/朱佳雯 写真/宋育玫・視野創異行銷
台湾本島北西角にあたる、「淡水」は17世紀にスペイン人やオランダ人が拠点を築いたところだ。台湾でも異色のエリアといえる。もとは小さな漁村にすぎなかったであろう。しかし列強の求めに応じて1860年に開港されるや、各国の商人が交易に訪れ、この町は黄金時代を迎える。その美景も愛でられ、1927年には台湾日日新報によって「台湾八景」に選定されてもいる。しかし上流からの土砂が堆積して、外国船が入港できなくなり、時代から取り残されていく。しかしいまそのノスタルジーがツーリストをひきつけてやまないのである。
淡水河両岸に位置する淡水と八里には、そうした忘れられた歴史を留めるスポットや史跡が点在するほか、雲門劇場や十三行博物館など文化施設も少なくない。ぜひ異国情緒豊かな河岸の旅を楽しみたい。
1628年
スペイン人が淡水に「サントドミンゴ城」建設。現在の「紅毛城」
1642年
オランダ人がスペイン人を駆逐し台湾北部占領
1661年
明代末期、鄭成功軍がオランダ人を駆逐し、港湾として利用
1860年
天津条約により淡水が開港され、やがて台湾最大の貿易港に発展。淡水の黄金時代到来。
1872年
マッケイ博士淡水に上陸 1895~1945年 港に土砂が堆積し、日本時代、台湾の玄関口は基隆に取って代わられる
1997年
MRT淡水線開通。淡水駅営業開始
目次
淡水
淡水の注目スポット
雲門劇場
淡水ゴルフ場と滬尾砲台の中間に位置する雲門劇場は、台湾を代表する現代舞踊集団「雲門舞集」の拠点。観音山と淡水河口を眺望する絶好のロケーションに位置し、淡いグリーンに光る鏡のような建築が周辺の緑に溶け込み、見事な景観を産み出している。「雲門」はかつて八里に稽古場をもっていたが、2008年の大火でこれを失った。幸い内外から多くの義捐金が寄せられ、現在の「雲門劇場」が2015年に落成した。台湾では初めての民間資本による劇場の誕生だった。
園内には、450席の大劇場のほか、二つの練習場・小劇場・事務室、そして1,500名収容の野外劇場を具える。劇場ではバレエの公演や展示会が随時開催されており、事前に予約すれば団体による参観を受け付けている。劇場入口のパネルには建設募金に応じた人々の姓名が刻まれている。屋外に設置されている彫像は「雲門」創設者の一人「羅曼菲」が出世作「輓歌」を舞う様を再現したもの。そのほか火災跡から助け出されたかつての稽古場の一部が保存・展示されている。
園内の「花語餐庁」では、小籠包・パールミルクティなど台湾ならではのスナックが提供されている。また老木の下にたたずむ「大樹書房」では書籍や雲門グッズのほか、スイーツや紫米から醸造した雲門限定ビール「日光」などが販売されている。屋外のテラスからは淡水河口が一望できる。
+886-2-2629-8558
屋外空間 6:00-20:00, 花語餐庁: 日曜-木曜11:00-18:30、金曜・土曜11:00-20:30、月曜定休 大樹書房: 火曜-日曜10:30-19:00、月曜定休
www.cloudgate.org.tw
淡水のお薦めの美食
之間Between
淡水出身のデザイナーEasonと友人のアーチストが開いたティーサロン。店内のインテリアはすべて自製。まさに唯一無二の空間である。その独創性が評価され、2015年GOOD DESIGN AWARDを受賞した。中国・日本および欧風の文化が交差した趣きは、まさに淡水の歴史を反映している。「茶食」をコンセプトに、軽い食事とティーメニューが用意されている。台湾茶は茶碗で供され、店員により差し出された茶葉の香りを客人が確かめてから、茶師により茶が淹れられる。店内で使用している器具はすべて購入可能。不定期に淡水の暮らしにかかわる展示会や工房を開いている。
お薦めの「香煎牛蒡烤年糕綴白芝麻pizza」は、さくさくの生地と年糕=お餅がコラボした逸品。
「法式麺包佐黒胡椒蕈菇薯泥」は、フランスパンと濃厚なポタージュの組み合わせを楽しむ。
「荷蘭鬆餅」は鉄鍋に盛られて登場するワッフル。新鮮フルーツとの取り合わせが若い女性に人気だ。
紅楼餐庁
1899年落成の洋館で、淡水を代表する歴史建築。当地の富商の手で建てられて以降、民家として使われてきたが、2000年にレストランにリノベーションされた。淡水を眺望できる立地は素晴らしく、「達観楼」とも呼ばれる。回廊・ベランダ・緑の欄干、そして池のあるガーデンなどビクトリア風の建築様式を保ちつつ、北投産の唭哩岸石や台湾産の赤レンガが使用され、東西の美が見事に融和している。屋外の空間および一・二階は中華レストラン、三階はカフェとなっており、アフタヌーンティーにも最適。ライトアップされる夜間の姿も美しい。
レストラン:+886-2-8631-1168 カフェ:+886-2-2625-0888
11:00-22:00
淡水の歴史散策
紅毛城
平日9:30-17:00、週末9:30-18:00、第一月曜休館
NT$80、当日のチケットで紅毛城・滬尾礮台・小白宮参観可
海関ハーバー
淡水港はかつて台湾三大貿易港の一つだったが、流砂が堆積して、その地位は基隆港に取って代わられた。2014年末に開放された海関ハーバーパークは淡水商店街を抜けたあたりにある。観音石あるいは唭哩岸岩を切り出して形成した波止場のほか洋館や港務倉庫が残り、かつての繁栄ぶりを物語る。
平日9:30-17:00、週末9:30-18:00、第一月曜休園
滬尾礮台
清仏戦争(1883-1885年)後、清朝巡撫「劉銘傳」が台湾の海防にあたり、1886年ドイツ人技師を招聘して、西洋風の砲台を建造した。劉銘傳自ら「北門鎖鑰」と額を掲げた。主砲は消失しているものの、往時の原状をほぼ留めている。
平日9:30-17:00、週末9:30-18:00, 第一月曜休館
前清淡水関税務司官邸(小白宮)
1860年代、淡水開港後、多くの西洋人が当地に移り住み異国情緒ふあれる建築を残した。「小白宮(小さいホワイトハウス)」と呼ばれる建物はそのなかの一棟である。当時植民地に流行した回廊式の建築で、清政府に代わり税務を司った官吏の官邸として利用されていた。室内外ともに白一色であることからこの名がある。
平日9:30-17:00、週末9:30-18:00、第一月曜休館
一滴水紀念館
当館はもともと1915年に福井県大飯町に創建された古民家である。阪神大震災と、それから間もなく発生した台湾中部大地震を通じて結ばれた友情のシンボルとして2009年12月に移設された。作家の水上勉の父である大工の水上覚治が故郷で手掛けた和風建築といわれる。すべては一滴の水からという禅の心得に因む名称である。
火曜-日曜9:00-17:00、月曜休館
MRT淡水駅2号出口右手バス亭から836・857・紅26バスで滬尾礮台下車
多田栄吉旧家
山腹にたつ多田栄吉の屋敷跡。淡水河口に面し、観音山を一望できるロケーションだ。かつて淡水町長を担任していた多田が建てた個人の住宅で、1934年の完工。ベニヒノキ造りの和風建築で、淡水でもっとも早期に水道が引かれた民家とも伝えられ、現在も往時の風情を留めている。
平日9:30-17:00、週末9:30-18:00、第一月曜休館
真理大学
1872年にカナダの長老教会から派遣されたマッケイ博士が淡水に上陸した。現在の真理大学淡水キャンパスを拠点に、布教・教育・医療の普及に従事した。校庭には礼拝堂・洋館・教士会館・理学堂大書院・博士住居跡などゆかりの場所が残り、風景をいっそう優美にしている。
MRT淡水駅2号出口右手バス亭から869・紅36・紅38・紅51番で真理大学下車
八里
八里の注目スポット
十三行博物館
考古学研究の結果、淡水左岸の「八里(バーリー)」には有史以前に先住民が居住していた痕跡が認められている。2003年、発掘された遺跡を中心に設置された十三行博物館は台湾初の市立考古博物館である。敷地は約四ヘクタールに及び、出土した文物が常設展示されているほか、学習体験室などが設けられている。館内では、十三行文化・植物園文化・円山文化と名付けられた遺跡の概要や背景が紹介されている。台湾建築賞を受賞した主建築は、特異な外観をもち、多くの人たちが記念撮影に収める。周辺には遺跡が保存されているほか、自然保護区に指定され、豊かな生態と風光明媚な河岸の景観を形成している。
9:30-17:00、第一月曜休館
淡水渡し場よりフェリーで対岸の八里へ。左岸渡し場から市バス紅13・紅22・682・704・878番で十三行博物館前下車
www.sshm.ntpc.gov.tw
八里左岸自転車道
八里渡し場から十三行博物館まで自転車道が整備されているので、レンタサイクルで左岸一帯のスポットを巡りたい。沿線には挖仔尾マングローブ自然保留区があり、希少な湿地の生態が観察できる。渡し場付近には小吃店のほか、風情のあるカフェが点在している。「Ton Up Cafe」はクラシックバイクをテーマにしたイングリッシュカフェ。二階デッキからの淡水河の眺望は素晴らしく、黄昏や夜景を愛でながらの食事も格別だ。
日曜-木曜12:00-21:30, 金曜・土曜12:00-22:30
一足のばして行きたい観光スポット
淡水の北部の海岸線は、波浪や北東季節風の影響を受け、特殊な地形を呈している。そのため、人気の観光スポットが点在し、山と海の景色が楽しめるレストランやカフェも少なくない。
淡水 & 八里 マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。