屏東県 北部 ~文化探訪ツアー~
企画構成・文/楊善文 写真/宋育玫
台湾最南端 屏東県 北部
台湾本島最南端に位置する屏東県は、紺碧の海と勇壮な山塊を擁し、豊かな自然景観を誇るとともに、多様な民族と文化を育んできた。県北部に位置する屏東市と瑪家郷・三地門郷は、穏やかな気候と水量に恵まれ、農業が盛んな地域だ。またパイワン、ルカイといった複数の台湾原住民族が独自のコミュニティを形成し、山間の村々に異色の風情を醸し出している。今回は屏東県の北部を巡って、輝くような自然と伝統文化を体験してみたい。
屏東駅から台湾原住民文化パークまでは車で40 分、青葉聚落までは1 時間
勝利新村
前身は、日本陸軍第三飛行団所属の軍人やその家族の住まいとして整備された「祟蘭陸軍官舎」。戦後は中国大陸からやってきた軍人たちが使用することになり、名前を「勝利新村」と改めた。大戦後国民党軍の家族のために設置された集落「眷村」としては、台湾本島最大規模。1927 年建造の宿舎約70 棟が残され、一部が一般に公開されている。2007 年には屏東県の歴史建築群に登録された。2017 年は建村80 周年を記念するアートフェスティバルが屏東県の主催で開催され、貴重な作品を通して時代の移り変わりを回顧した。
屏東ランタンフェスティバル
2017 年から屏東県では独自にランタンフェスティバルを開いている。春節(旧正月)や元宵節(旧1 月15 日)前後に、屏東市中心部を流れる萬年渓の河畔にランタンを取り付け、華麗なイルミネーションで河畔を彩る。その幻想的な雰囲気は市民とともに多くのツーリストを魅了した。2019 年は屏東で台湾ランタンフェスティバルが開催される予定だ。
目次
山の里でフルーツ三昧フルーツ天国!
トロピカルフルーツのパラダイス、屏東県北部は台湾随一の農業生産高を誇る。九如(ジョールー)郷の大花農場は毎年11 月から4月にかけて有機栽培のバラ園を無料で開放している。除草剤と化学肥料を一切使わない栽培方法にこだわり、楊添徳オーナーが3年かけて開発した「大花一号」「大花二号」などの食用種は台湾政府農業委員会の神農獎を受賞している。一般のバラに比べると、型が大きく、香りと味が濃厚だ。毎日手摘みしたバラを使って、芳香蒸留水の「玫瑰精露」やジャム、フラワーティーに加工する。期間中は、バラの手摘み体験ができるほか、有機栽培のバラを使った麺や寿司・サンドイッチ・パンケーキ・フラワーティーも楽しめる。バラの香りに包まれた至福の時間になりそうだ。
屏東県の名物と言えば、パイナップル。大武山のふもとにある銘泉生態観光農場では、温暖な気候と豊饒な土地を利用して干ばつにも強いパイナップルが栽培されている。かつて農場の責任者を務めていた呉木泉氏は自然農法によってパイナップル本来の甘さと酸味を引き出し、初めて日本への輸出を成し遂げた。呉堅銘氏の手に引き継がれた二十数ヘクタールのパイナップル園は現在有機農園として認証を受けているほか、自然の生態系を生かした動植物の宝庫ともなっている。予約制の農場エコツアーがあり、パイナップルケーキやパイナップルピザなどのDIY も体験できる。
大花農場
屏東県九如郷九如路一段15 号
+886-8-739-6588
9:00-17:00 (11 月- 翌4 月)
f88.myorganic.org.tw
銘泉農場
屏東県瑪家郷佳義村114-6 号
+886-8-799-0220
9:00-18:00
ecloud.ewang.com.tw/index.php?Act=125
山村で体験するルカイの暮らし
屏東県北部の三地門(サンディメン)郷は、台湾原住民のパイワンやルカイが独特の文化を伝えている。2009 年夏の台風で甚大な被害を受けたことから、政府は民間企業と力を合わせ、台湾糖業の瑪家農場に団地を整備し、瑪家村・好茶村・大社村の住民が暮らせるようにした。この新しいコミュニティは礼納里(リナリ)集落と名付けられた。「ともに歩み、進む」という意味が込められているという。
礼納里集落では複数の民族が共存し、新しい活気とエネルギーに満ちている。整然と並ぶ住宅は傾斜した欧風の屋根が特徴。外観は統一されていても、住民たちはそれぞれ伝統の精神を主張する工夫を凝らしている。純潔を示す百合の花や、再生を意味する百歩蛇(ヒャッポダ)、貴族の身分を表す木彫などがあり、一軒一軒に個性と温もりを灯しているといえる。
礼納里集落には都会からU ターンした青年たちが地域おこしに取り組んでいる。例えば17 巷の路地はグルメ街として人気を集めており、コミュニティのリーダーの息子がシェフを務める魯魯湾餐庁では、集落内で育てられた作物を楽しむことができる。法法様工作坊では、粟(アワ) を使ったドーナツが観光客の人気を集めている。
先住民ルカイの暮らしを体験する予約制のツアーもある。一泊二日の日程で、民家に宿泊するプログラムが組み込まれており(礼納里に正式の民宿はない)、原住民料理を味わえるほか、民族の舞踊が鑑賞できる。台湾原住民族の一つに認定されているルカイ。その悠久の歴史と文化はこうして村の移転を乗り越えて受け継がれている。
礼納里集落
屏東県瑪家郷和平路一段65 号
+886-8-799-7418
一人NT$899 より(朝食および台湾原住民文化パークとの往復を含む)
ビレッジツアー1 人NT$1600(英語と日本語のガイドあり、要予約)
高速鉄道左営駅からの送迎は1 人往復NT$1500、台湾鉄道屏東駅からは往復1 人NT$800
rinari.pgo.tw/index.php
魯魯湾
屏東県礼納里好茶部落17 巷13 号
+886-972-060-887
お任せメニュー1人NT$450 から
山間の原住民族に伝わる故事
三地門郷にはさらに、台湾で唯一、ルカイの神話とアートをテーマとしたスポット「青葉集落」がある。山間の185線街道を進むと、チョウをモチーフにしたゲートと百歩蛇をかたどった長椅子が目に入るだろう。伝説のお姫様が暮らす場所を示す目印だ。
ルカイに伝わる故事に、巴冷(バラン)姫と百歩蛇をめぐる愛の物語があり、集落はこの伝説をテーマに設計されている。数年前、地元のアーティストと住民が力を合わせて、アートによる村起こしに取り組んだという。各住宅の門や窓・壁には、それぞれの家系を象徴する細工が施されている。例えばある住宅はチョウが装飾のモチーフとなり、ある住宅ではクロクマやシカ、キョンをデザインして狩人だった祖先への敬慕を表現している。また、目で見たものを燃やすことができた超能力者の子孫の家の壁には、小さな石をくみ上げた大きな二つの眼が光っていたりする。青葉集落は、さながら原住民が伝えてきた神話の博物館である。
三地門には1985年に、台湾原住民族の伝統や文化を継承する目的で、台湾原住民文化パークが開設されている。約82ヘクタールの敷地には優美な自然景観が広がり、認定されている16の台湾原住民族を網羅する展示や、ライブステージが設置されている。園のそばにかかる「山川琉璃吊橋」は、当地に縁があるトンボ玉が橋の随所に埋め込まれている。その色やデザインには自然界に対する畏敬の念が込められ、大地との絆を象徴している。
青葉集落
屏東県三地門郷青葉村光復巷1号
+886-87-965667
台湾原住民文化パーク
屏東県三地門郷青葉村光復巷1号
+886-87-965667
8:30-17:00、月曜休園
NT$150
山川琉璃吊橋
屏東県瑪家郷北葉村風景104号
+886-87-323180
NT$50
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※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。