プチ博物館 ―専門博物館 in 台北4選 ―
企画構成/鍾昀彤 文/劉宛昀 写真/宋育玫
専門博物館 小規模でも充実!!
台北市には小さいながら豊かなコレクションを誇る専門博物館が少なくない。特定の分野に絞った展示のため、より深く地元の文化や歴史を理解することができる。今号は、台湾の伝統文化・人形劇・ミニチュアアート・郵政をテーマとする小規模の博物館を厳選紹介。名所巡りと組み合わせ、台湾の別の顔を発見してみたい。
目次
袖珍博物館
袖珍博物館はアジアで最初に誕生したドールハウス博物館といわれ、約250 点のミニチュアアートを収蔵する。すべて実業家として名高い故林文仁氏とその家族が蒐集したものだ。林氏はかつて欧米との行き来の過程で、各地のミニチュアやアクセサリーを買い集めた。一家全員でドールハウスの制作に没頭するようになり、ついに1997年当博物館を創設するに至った。
多くのコレクションは1:12 のサイズに統一されている。なかには1:120 のマイクロサイズの作品もあるという。購入品のほかに、欧米のドールハウス職人に特注したものも含まれ、中世ヨーロッパの街並み、宮廷、ビクトリア女王時代の建築などが再現されている。コレクションは、どの角度からも鑑賞できる立体的な「ドールハウス」、部屋や店舗を小箱大に縮小して片面を見せる「ルームボックス」が中心となっている。
代表的な作品は、当館の大型コレクション第1 号で、かつてロサンゼルス市内にあった「ローズマンション」。正面は堂々とした豪邸の外観で、裏面から小部屋内の配置や細部が観察できる。「バッキンガム宮殿」は本物のクリスタルで作ったシャンデリア、金箔貼りの壁面が施され、館内でもっとも高価な展示品。アーティストのBillLankford氏に製作を依頼した童話シリーズと、創設者が孫に贈った「恐龍帝国」は、繊細な工芸をふんだんに施して想像の世界を立体化したもの。ぜひじっくり鑑賞したい。
台北市中山区建国北路一段96 号B1+886-2-2515-0583
火曜- 日曜10:00-18:00 ( 入場は17:00 まで)、月曜休館
大人NT$200、13-18 歳NT$160、12 歳以下NT$120
MRT 松江南京駅5 番出口より徒歩約7 分
www.mmot.com.tw
台原亜洲偶戯博物館
大稲埕に位置し、大稻埕埠頭に近接する台原亜洲偶戯博物館は、林柳新医師を記念して子孫が設立した博物館で、現在長男の林経甫氏が董事長を務める。
4 階建てのレトロな建物には、アジアからヨーロッパまでの広範囲にわたる人形劇にまつわる文物5 千点を収蔵。陳列室や劇場のほか、参観者が人形を操れるミニステージも設置している。まさに世界の人形劇文化に直接触れることができる希少な博物館だ。1 階は人形工房と各地の操り人形の展示、2階は中国や台湾・ヨーロッパの指人形劇の人形を紹介。3 階は中国の影絵芝居と台湾の人形劇団「金光布袋戯」の人形と舞台を展示している。4 階バルコニーには池があり、ベトナムの水上人形劇を体験できる。
博物館は人形劇文化の紹介と台湾伝統の指人形劇「布袋戯」の伝承に取り組んでおり、人形劇の公演も行っている。現在、毎週土曜日の14:00 と15:00 にイタリア指人形劇の無料参観を開催中。20 人以上の団体で、2 週間前に予約すれば、劇の鑑賞とともにガイドが館内を案内してくれるツアーがある。
台北市大同区西寧北路79-1 号+886-2-2556-8909 / +886-2-2555-9762
火曜- 日曜10:00-17:00、月曜・国定休日休館
NT$80
MRT 北門駅より徒歩約12 分
www.taipeipuppet.com
迪化207博物館
「広和堂薬舖」を前身とする洋館で、1962 年の創建。歴史的価値が高いことから台北市歴史建築に指定され、2017 年に博物館としてリニューアルオープンした。テーマは、「台湾の歴史と文化にまつわる物語」。建物の外観は独特の弧形とシンプルなラインを取り入れたモダニズム様式。ブルーの窓枠と赤いドア枠、そして褐色のレンガの組み合わせが鮮やかだ。
室内は人工大理石「テラゾー」を主な建材とする精巧な仕上げ。「蜜を吸うミツバチ」や「高麗ニンジン」など生薬店の歴史を反映した図柄のほか、2 階の床にはアルファベットを組み合わせた細やかな工芸が施されている。日本時代に導入されたテラゾー技術は、手間がかかることから現在は絶えつつあり、館内の作品は貴重なもの。椅子が置かれた3 階の窓辺ではドリンクを販売。屋上からは迪化街の街並みを俯瞰できる。
現在、1 階と2 階で開催中の特別展では、台湾の人々の誕生から婚礼、転居など、人生の節目に関する伝統的な贈答の風習を、多彩な文物やパネルの説明により紹介している。3 階のギャラリーでは、9 月9 日から開館1 周年特別展「聴・録音帯与你」を開催予定。中国語や欧米のポップスが録音された600 以上のカセットテープが試聴できるという。アナログの音色を蘇らせるユニークな企画だ。
+886-2-2557-3680
10:00-17:00 ( 週末・国定休日は17:30 まで)、火曜休館
MRT 大橋頭駅より徒歩約10 分
www.museum207.org
郵政博物館
戦後まもなく設立された郵政博物館は、台湾・中国など世界120 か国以上の切手を収蔵し、資料・文物・機器により、台湾郵政の足跡を紹介している。
設立より半世紀を経た郵政博物館では、2018年度末まで開館50 周年記念特別展を開催中。清代の雲龍柄の切手、上海版雁柄の切手、西太后生誕60 年記念切手など歴史的な逸品のほか、特殊な素材が使用された世界各地の切手を展示している。また、郵便局業務体験コーナーやマルチメディアルームなども用意。3 階には台湾郵政発展史、歴代業務用機器、世界各国のポストを展示。4 階には子供が遊びながら学べる郵便業務展示室がある。
8 万枚近くの珍しい切手、世界の切手を取り揃えた5 階展示室は、ファンにとってまさに夢の宝庫。国別のコーナーでは、台湾と中国のコレクションのほか、世界最初の切手「ペニーブラック(Penny Black)」、世界にただ一枚残る英領ギアナ1 セント・マゼンタなど、マニア垂涎の所蔵品も鑑賞できる。記念スタンプを押した入場券は、そのまま1 階の郵便局から絵葉書として郵送できる。
台北市重慶南路2 段45 号+886-2-2394-5185#852
9:00-17:00(入場は16:30 まで)、月曜・国定休日休館
NT$10
MRT 中正紀念堂駅より徒歩10 分
museum.post.gov.tw
プチ博物館 in 台北4選 マップ
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