彰化 静かな街の散歩旅
企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/溫宏嘉・視野創異行銷
彰化
静かな街の散歩旅
台中市と隣り合う彰化市は、素朴な風情漂う地方都市。清代から台湾中部の政治経済の中心として栄えてきた街には各時代の歴史的建造物が数多く残っており、歴史の深さが感じられる。彰化ならではのご当地グルメや、古民家カフェも魅力的だ。台湾鉄道彰化駅から半径約2㎞以内に人気観光スポットが集中しているので、のんびり歩いてまわることができる。彰化で歴史とご当地グルメをめぐる散歩旅に出かけよう!
台湾鉄道彰化駅から徒歩またはタクシーで各スポットへ
おすすめコース
1日目:台湾鉄道・高速鉄道彰化駅→八卦山→駅前
2日目:駅北側エリア→台湾鉄道・高速鉄道彰化駅
目次
歴史スポット
扇形車庫
1922年(大正11年)建設の台湾で唯一現存している扇形車庫。台湾の鉄道史上重要な遺産であることから、1995年に彰化県の有形文化財である県定古跡に指定され、2022年には国定古跡に昇格した。蒸気機関車やディーゼル機関車が並ぶ車庫は、鉄道ファンの聖地となっている。
3階建ての展望台からは車庫を一望でき、運がよければ鉄道本線から引込み線を通ってきた車両が転車台に進入し、方向転換する様子も見ることができる。
現役の施設のため、参観ルート以外の場所と線路内への立入、機関車・車両への接触は禁止となっている。安全に注意しながら楽しく見学しよう。
彰化縣彰化市彰美路一段1號04-762-4438
13:00-16:00、土曜・日曜・祝日10:00-16:00、月曜休園(祝日の場合は営業)
参観無料
※入場時に門の脇の守衛室で記帳が必要
※10人以下は自由参観、10人以上は14日前までにガイド申請
戸羽機関車園区
2022年11月に正式オープンした新スポット。前身は扇形車庫に隣接する台湾鉄道の宿舎跡で、面積1000㎡、テニスコート5面分ほどの園内に、スイーツや軽食のショップが入居する和風の建物が並んでいる。
なかでも「戸羽浪聚Lounge」は、彰化名産品や鉄道関連のクリエイティブグッズがそろっており、お土産探しにぴったり。夜間は併設のカフェバーでアルコールも楽しめる。小さな子供には園内を一周するバッテリー式のミニSLが人気だ。
園内や隣接する公園、戸羽機関車園区と彰化駅後方をつなぐ遊歩道「散歩扇庫」にいる、彰化市のマスコットキャラクター「半半」と「火車頭管家(機関車整備士)」にも会いに行こう!
彰化縣彰化市彰美路一段3巷83號13:00-17:00、土曜・日曜10:00-17:00、月曜・火曜休園
参観無料
facebook.com/Changhuaroundhouse
※扇形車庫から戸羽機関車園区への連絡通路あり(逆走不可)
彰化不老泉
1914年(大正3年)に完成した彰化市旧水源地の緩速濾過場と浄水池。浄水池の2つの門は左右対称のデザインを持つ優美なルネサンス様式建築で、上部にそれぞれ「不老泉」「地霊釀出甘漿」の文字が刻まれている。当時は「不」門からくみ上げた水を「地」門に送り、濾過した浄水を生活用水として供給していた。
近代水道の歩みを伝える貴重な産業遺産であることから2002年に彰化市の歴史建築に指定された。現在は加圧給水用としてのみ使用されている。
彰化縣彰化市公園路二段1號8:00-17:00、土曜・日曜休場
参観無料
※入場時に卦山路正面入口の守衛室で記帳が必要
彰化鉄路医院(旧高賓閣)
「彰化鉄路医院」は、1938年(昭和13年)に高級料亭「高賓閣」として建てられた建物。船の甲板を模した屋根や船のキャビンを思わせる丸い舷窓などの前衛的な外観を持つ、台湾のモダニズム建築を代表する作品のひとつだ。
日本時代は台湾中部最大の料亭として、文化人や知識人が多く集まる文化サロンの役割も担っていた。戦後は1984年まで台湾鉄道の病院として利用され、2011年の彰化県古跡指定を経て、現在は彰化の特産品やクリエイティブグッズを紹介する文化施設として公開されている。
彰化縣彰化市陳稜路228號9:00-18:00、火曜・水曜休館
参観無料
彰化芸術館(旧彰化公会堂)
建物の前身は1933年(昭和8年)に完成した旧彰化公会堂。当時は、映画上映、講演、祭祀など多元的に利用される彰化市民の文化活動の中心だった。2002年に彰化県歴史建築に指定され、現在は彰化芸術館となっている。
彰化縣彰化市中山路二段542號9:00-17:00、月曜休館
参観無料
彰化孔子廟
1726年創建の彰化孔子廟は清代の彰化における学問の中心だった場所。現在の建物は1830年の大改修を経たもので、大成殿、後殿の崇聖祠、東西の棟、戟門、櫺星門、礼門、義路が残っている。
大門にあたる櫺星門の屋根には崇拝・孔子の徳の高さを象徴する竹筒状の「通天筒」が設置されている。一般的な孔子廟の通天筒は2つなのに対し、6つあるのが彰化の特色だ。
続く戟門(大成門)の奥は孔子の位牌が祀られている大成殿。内部には清の歴代皇帝から下賜された扁額が並んでおり、彰化孔子廟の格の高さが感じられる。正面の龍が巻き付いた花崗岩の龍柱など、精緻な装飾もみどころだ。
彰化縣彰化市孔門路30號8:30-17:00、月曜休館
参観無料
開化寺
1724年に清朝が初めて派遣した彰化県長官が建立した仏教寺院で、観音亭とも呼ばれる。正殿の本尊は観音菩薩で、両脇に十八羅漢が安置されており、後殿には道教の安産の女神・註生娘娘と、天然痘を治療する神として知られる痘公痘婆(珠公珠婆)が祀られている。小さいながらも歴史が長く、静かで落ち着いた雰囲気の寺院だ。
彰化縣彰化市中華路134號6:00-21:00
参観無料
八卦山
八卦山大仏風景区
八卦山の大仏は1961年に完成した彰化のランドマーク。門をくぐり、両脇にそれぞれ16体の石像が並ぶ参道を上がっていくと、9頭の龍が空を仰ぐ「九龍池」を配した半円形の広場に出る。
広場前方の市内を一望できる眺望台は夜景観賞スポットとしても有名だ。振り返ると、山頂に座す釈迦牟尼大仏が目に入る。
鉄筋コンクリート造りの大仏は高さ約22m。内部は各階に仏像が安置されており、拝観もできる。迫力満点の彰化の大仏様に会いに行こう!
彰化縣彰化市溫泉路31號8:30-17:30
入園無料
八卦山天空歩道
八卦山大仏寺から彰化生活美学館まで全長約1㎞をつなぐ台湾最長の天空歩道。歩道の高さは地上6mから最高16mほどあり、樹々が作る緑のトンネルを抜けたり、彰化の市街地を一望したりと、変化に富んだ空中散歩が楽しめる。
彰化縣彰化市溫泉路31號から卦山路18號の間24時間開放
卦山村
八卦山大仏の門前に位置する「卦山村」は、工芸家、画家、音楽家、デザイナーなどのアトリエや個性的なカフェが集まるアートビレッジ。ここは職人やアーティストの作品創作の場であると同時に、DIY教室や講座を通してゲストと交流する場でもある。卦山村を散策していると、様々なジャンルのアトリエが彰化の新しい世代の生活美学を見せてくれるだろう。
2階の「野花小姐」は美味しいハーブティーがいただけるカフェ。台湾産の食材を使って毎日手作りするスイーツは、甘さひかえめで素材の味を大切にしている。ハーブティーを片手に、窓の外に揺れる樹々を眺めながら、静かなティータイムを過ごしたい。
卦山村
彰化縣彰化市卦山路8-1號
10:00-18:00、金曜・土曜10:00-20:00、月曜休園
入園無料
facebook
※DIY教室・講座・イベントは不定期開催
野花小姐
卦山村2F-15
13:00-18:00、月曜・火曜定休
ミニマムチャージ1人ドリンク1杯
facebook.com/MissWildflowers
南天宮十八地獄
八卦山の麓に佇む「南天宮」は地獄めぐりができることで知られる道教寺院。1階は地獄の最高神・東嶽大帝の廟で、「十八地獄」は2階だ。鬼の門をくぐり、あの世とこの世を隔てる「奈何橋」を渡ると、東嶽大帝配下の十王による亡者の審判の場面が続く。
電動人形が凄惨な裁きの様子を再現しており、おどろおどろしい照明や音響も相まって、子供は怖がって泣いてしまうかもしれないが、大人は昭和レトロな演出に懐かしさを覚えるだろう。
3階は西遊記の斉天大聖(孫悟空)を祀る廟で、続く4階の「魔界怪譚」では仏教説話や民間説話の場面が再現されている。外に出ると、最後は南天宮の祭礼や西遊記の場面で締めくくりだ。ぜひ八卦山と併せて参拝し、地獄と極楽を同時に体験してみよう。
彰化縣彰化市公園路一段187巷12號8:00-18:30
NT$50
※正殿右手の階段は八卦山大仏前に通じており、2階出口からも階段に出られる(2階からは入場不可)
古民家カフェ
紅葉大旅社 光彫童玩咖啡庁
彰化駅前商店街の路地に佇む昭和レトロなカフェ。もとは1960年代に建てられた旅館で、駅前商店街の衰退後は2000年代から児童文化館、カフェと業態を変えながら営業を続け、2023年にプロジェクションマッピングと児童遊戯をミックスしたカフェとしてリニューアルオープンを果たした。
建物には「紅葉大旅社」の看板が掲げられ、ロビーのフロントにも旅館時代の黒板が残されているなど、往時の面影が色濃く残っている。黒電話やブラウン管テレビなどが置かれた客席もノスタルジックな雰囲気だ。
スイーツのおすすめは、かための昭和なプリン「焦滴滴的苦布丁」。こだわりコーヒーや、抹茶ラテ、エルダーフラワーソーダ「接骨木氣泡水」などのドリンクとあわせて、ゆったりカフェタイムを楽しもう。
彰化市長安街100巷5號11:00-18:00、水曜定休
ミニマムチャージ1人ドリンク1杯、席利用100分
instagram.com/redleaf.hotel
小西巷
カフェ周辺の「小西巷」には彰化の歴史や文化を題材にしたアートが並んでおり、路地散歩が楽しめる。
ご当地グルメ
彰化三宝の肉圓・爌肉飯・貓鼠麵を食す!
阿三肉圓
でんぷんの皮で豚肉餡を包んで低温の油で揚げる「肉圓」は彰化必食グルメ。「阿三」の肉圓は、一度蒸しあげてから高温の油で揚げるので、外はカリカリ、中はモチモチの独特な食感が楽しめる。
「干貝肉圓」は干し貝柱、蒸したアヒルの卵の唐揚、干し椎茸、豚肉入りで、「小肉圓」は干し貝柱抜きの一回り小さいタイプ。美味しさを引き立てる特製だれはニンニク入りのやや甘い醤油だれだ。スープは豚の脊髄と豚ひき肉の茶碗蒸し入りの「龍骨髓湯」や、金針花、肉団子、白菜入りの「金針湯」が人気。
彰化縣彰化市三民路242號10:30-19:00、月曜・火曜定休
facebook.com/a3meatball
蚵ㄚ仁・肉臊爌肉飯
トロトロの豚の角煮が口の中でほろりとほぐれ、白米と至福のハーモニーを奏でる「爌肉飯」も彰化名物のひとつ。肉そぼろをご飯にかけた「肉臊飯」は、半熟目玉焼きをのせて食べるのがおすすめ。
「蚵仔仁湯」は牡蠣がたっぷりのスープ。とろみをつけた牡蠣はプリプリで、薬味のショウガと台湾バジルが爽やかな風味を添えている。
彰化縣彰化市民權路245號11:00-20:00、月曜定休
貓鼠麵
ユニークな名前は、1921年に店を開いた陳兄弟が2人とも干支が鼠で動作が俊敏だったことからついたあだ名「老鼠仔」の台湾語の発音が由来。
平麺、香菇貢丸(椎茸入り肉団子)、手工雞捲(野菜入りの細長い肉団子)、燕丸(豚肉で作った皮で豚肉餡を包んだワンタン)を、豚もも肉、ヒラメの干物、ハマグリを煮込んだ山海のうまみたっぷりのスープが包み込む、彰化人の故郷の味だ。
彰化縣彰化市陳稜路223號9:00-20:00、木曜定休
おかわり!
發仔麵
「發仔麵」は肉そぼろ、ニラ、モヤシが具材のシンプルな麺。肉そぼろは、その日に食肉処理したばかりの豚バラ肉と揚げネギを炒め、秘伝の調味料を加えて1時間半煮込んで作る。
麺は米粉(ビーフン)や粿仔條(ライスヌードル)も選べ、汁なし、汁ありどちらも味わい深く美味。煮卵は必ず注文しよう。午前中は緑の看板で創業者の息子家族、午後は赤い看板で娘家族が店を切り盛りしており、それぞれにファンがいる。
彰化縣彰化市南郭路一段143號6:00-12:45、14:30-22:00
facebook.com/HanLinHuang182
彰化のおみやげ
不二坊
近年中秋節の贈り物として台湾で大流行中の「蛋黃酥」は、パイ風の皮で卵黄の塩漬け入りの小豆餡を包んだ中華菓子。「不二坊」の蛋黃酥は、さっくりしたパイ、卵黄のコク、ほどよい甘さのこし餡のバランスが絶妙だ。平日も開店前から行列ができる超人気店なので、時間に余裕を持って出かけよう。
彰化縣彰化市中正路一段293號9:00–12:00、14:30–18:00、月曜定休(売り切れ次第終了)
※消費期限常温7日
※蛋黃酥は台中市豊原の菓子店「宝泉」から広まったとされる中華菓子
卦山燒
彰化名物の「卦山燒」は、大仏が鎮座する彰化の景勝地・八卦山にあやかって名付けられた焼饅頭。カステラ生地で餡をはさんで焼き上げた姿も味も日本のもみじ饅頭によく似ていて親しみがわく。餡は紅豆(あずき)、牛奶豆沙(ミルク餡)、 乳酪豆沙(チーズ餡)の3種類。
彰化縣彰化市民生路152號9:00-20:30
※消費期限常温15日
玉華珍餅行
人気の「麻糬」は餅で餡を包み、きな粉をまぶしたひと口サイズの餅菓子。餅は中身の餡の色が透けて見えるほど薄く、求肥のようにやわらかい。餡は紅豆(あずき餡)、芝麻(すりごま)、花生(落花生粉)の3種類。どれも甘さ控えめで繊細な味わいだ。
彰化縣彰化市辭修路244號8:10–12:00、13:10–17:00、火曜定休(売り切れ次第終了)
※消費期限常温2日
宝珍香
「桂圓蛋糕」は、香りがよく甘いドライ龍眼をたっぷり使い、表面にクルミを散らしたカップケーキ。1911年創業の「宝珍香」は桂圓蛋糕の生みの親として知られている。店舗は彰化駅から車で15分ほど離れているが、わざわざ足を運ぶ人も多い。
彰化縣彰化市彰南路二段169號8:00-22:00
※消費期限常温4日(個包装14日)
彰化 市内散歩マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。