郭元益 小行星2067ギフトボックス
文/高田雅子 写真/宋育玫・郭元益
目次
郭元益 冰沙餡餅
緑豆餡のお菓子をめぐる百年物語
時は1950年代。ある日、当時の台湾総統・蒋介石は、士林官邸から北投温泉に向かう途中、士林の小さな菓子店に長い行列ができているのに気がついた。総統は興味を引かれ、側近にその店のお菓子を買いに行かせ賞味したところ、美味しさをいたく気に入り、後にそのお菓子を賓客の手土産に用いるまでになった。そのお菓子こそが、清代に郭元益が大陸から伝え作り続けてきた「冰沙餡餅」だった。
「冰沙餡餅」は、緑豆餡をパイ風の生地で包んで焼いたお菓子。餡の製作には体力と忍耐が必要で、皮を取り除いた緑豆を大鍋で炊き上げる際には、細心の注意を払って餡を焦がさないように一時も手を休めずにかき混ぜ続けなければならなかった。そうして出来上がった特製緑豆餡は非常になめらかな食感で、お菓子の白くて丸い姿も月を思わせる愛らしさ。「冰沙餡餅」は、いつしか士林で暮らす人々にとって、中秋の名月を祝う中元節に欠かせないお菓子となっていった。
当時の小さな店では、窯に薪をくべてお菓子を焼き上げるのにも時間がかかった。繁忙期には商品を手にするまで3、4時間並んで待つことも珍しくなかったが、それでも毎年大勢の人が店頭に並んだという。総統が目にしたのはこの風景だったのだ。創業150周年を迎えた現在も、一年に101ビル12個分の高さの売り上げ量を誇る「冰沙餡餅」は、台湾の行列グルメの先駆けといえるだろう。
小行星2067 ギフトボックス
未来に贈るデザイナーズコラボレーション
創業150年を迎えた郭元益は、ロンドンを拠点に活躍している台湾のデザイナー詹朴(Apu Jan)のブランド「APUJAN」とコラボレーションし、これからの未来に贈る特別なギフトボックス「小行星2067」を発表した。ギフトボックスのテーマは、創業から現在までの郭元益150年の物語と、未来。宇宙空間を思わせる藍色のギフトボックスには、ピンクの惑星と星の軌道が描かれている。蓋を開けると、中には郭元益を代表するお菓子「冰沙餡餅」。17種の異なる図案が描かれた「冰沙餡餅」のひとつひとつが郭元益の歴史を物語る小惑星(小行星)、という趣向だ。
テイストは全4種。伝統的な緑豆餡のほか、西洋と台湾の要素を取り込んだ現代的な新しい3種を加えている。オリジナル(ホワイト)は、郭元益に代々伝わる優しい甘さの緑豆餡。ローズ・ライチ(ピンク)は、バラの花びらのイタリア産白ワイン漬けとドライ黒葉ライチをあわせた緑豆餡の甘さを、ピレネー山脈の温泉塩が引き締める。柚子(イエロー)は、スライスした日本の柚子を混ぜ込んだ緑豆餡に、オレンジリキュールに漬けたイタリア産オレンジピールを加え、台湾の柚子(文旦)の香りを引き立たてている。ウィスキー・レーズン(ブラウン)は、シングルモルト・スコッチウィスキー「グレンフィディック」で漬け込んだレーズン入りの餡をほのかにウィスキーが香る皮で包み込んだ大人の味。
郭元益 中山店×APUJAN
ショップデザイン・コラボレーション
郭元益とAPUJANのコラボレーションは、ギフトボックス・デザインだけに留まらず、ショップデザインにまで広がっている。2016年8月にリニューアルオープンした中山店では、ギフトボックス「小行星2067」の世界観を表現した店頭ディスプレイを展開。スタッフの制服も「小行星2067」をイメージしリニューアル。チャイナカラーのシャツにはギフトボックスに描かれていた惑星や星の軌道、バラの花や梅の花、年号など、ギフトボックスのお菓子に描かれている図案が取り入れられている。郭元益とAPUJANが作り上げた、商品と制服、ショップデザインがシンクロし一体となった空間は、高級ブランドショップが立ち並ぶ中山北路に相応しいモダンスタイルで人目を引いている。
台湾で培われた150年の伝統と、西洋の精神がコラボレーションしたギフトボックス「小行星2067」。老舗がつづる新しい物語の始まりを、ぜひ目と舌で確かめて欲しい。
郭元益
www.kuos.com
中山店
台北市中山区中山北路二段34号
+886-2-2568-2136、+886-2-2568-4956
10:30-21:30
MRT中山駅より徒歩約5分
郭元益 中山店 マップ
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