獅潭 客家の伝統文化を訪ねる
文/張立宇 写真/張立宇
客家の伝統文化を訪ねる
苗栗県「獅潭」
台湾本島西部の苗栗県に位置する「獅潭」は、客家の人たちが移住し、切り開いた町。往時は交通の要衝として栄え、第二次大戦では軍事拠点とされたことから、錫隘古道・鳴鳳古道・八仙古道・仙山古道・鐘楼古道などの古道が縦横に残されており、格好のハイキングスポットとなっている。また獅潭郷の旧市街には古い商店街が残っており、週末にはその素朴な風情を求めて大勢の行楽客が訪れる。
台三線=ロマンチック街道とは?
日本に奥の細道があるように、台湾には台三線がある。台三線は俗に内山公路と呼ばれ、台北から屏東まで本島を南北に貫く総延長436.8キロに及ぶ街道。そのなかで「台三線客庄浪漫大道(客家の里ロマンチック街道)」は桃園平鎮から台中新社までの約150キロを指し、その間沿線には客家の集落が続く。
目次
汶水老街
「汶水老街」は、全長わずか200mあまりの歴史ある商店街。今も残る赤レンガの建物に独特の風情が漂い、街歩きが心地よい。汶水には台湾で唯一、「茶寿」と呼ばれる工芸品が伝わっており、客家料理の珍味「猪胆肝」とあわせて街の名物となっている。
汶水ではぜひ、本場の客家料理を満喫しよう。客家の米粉麺「粄條」、草餅に似た生地で野菜や肉の餡を包んだ「菜包」、やわらかい餅「麻糬」のほか、特産のイチゴを使ったイチゴソーセージ「草苺香腸」、イチゴ餅「草苺麻糬」など、ユニークなグルメがそろっており、食べ歩きも楽しい。
台湾鉄道苗栗駅から5566、5657バスで「汶水」下車、徒歩で各スポットへ
汶水茶寿
「茶寿」は籐やワラを編んで作る籠。籠の内側に綿布を敷いた籠は保温効果が高く、かつては「保温ポット」として山仕事に出る男たちに重宝された。すべて手作りで非常に手間がかかるため、今では貴重な伝統工芸となっている。「汶水茶寿」では、台湾で唯一「茶寿」を販売している。店主の劉玉英さん自身が40年の経験をもつ茶寿職人で、運が良ければ作業の様子を実見できる。実用性も高い工芸品からは客家の人たちの生活美学がうかがい知れる。
苗栗県獅潭郷汶水44号+886-3-799-2828
国興獣肉店
「豬膽肝」は客家ならではの豚レバーの乾物。独特な風味があり、しかも1頭につき1枚しか取れない上、製造に2か月もかかるため、現在は製作している業者も減り、味わいを知る人も少なくなった。汶水老街で創業60年を誇る「国興獣肉店」では現代人の好みに合わせて、苦味が強い胆のう部分を除き、香料で風味を改良した豬膽肝を売り出し、多くの顧客を集めるようになった。店頭に吊るされた灰黒色のレバーの乾物は老街のシンボルとなっている。
苗栗県獅潭郷汶水42号+886-3-799-3534
6:00-16:00
永和亭飯店
創業半世紀を超える「永和亭飯店」は汶水老街でもとくに歴史の長い老舗で、豚ホルモンのショウガ炒め「薑絲大腸」、梅風味の豚の角煮「梅干扣肉」、豚ホルモンとからし菜の漬物入りスープ「豬肚酸菜湯」などの客家伝統料理を提供している。週末にはグループ用に大皿料理のみの提供となるほどの人気店。人数に合わせてメニューを調整してくれるので、ぜひ友人と賑やかに円卓を囲みたい。
苗栗県獅潭郷汶水41号+886-3-799-1131
9:30-14:30、17:00-19:00、火曜・水曜定休
阿蘭客家伝統美食(阿蘭芋糕)
週末のみ営業の屋台でありながら、知る人ぞ知る名店。看板料理のタロイモ餅「芋糕」は、カリッと焼かれた表面と中身のふわふわしたタロイモの食感が絶妙だ。ほかにも、大根餅「蘿蔔糕」、客家風白玉雑煮「客家鹹湯圓」、イノシシの鉄板焼き「鉄板猪肉」、客家の米粉麺「粄條」など、懐かしい風味が手軽に楽しめる。
苗栗県獅潭郷汶水13-1号+886-3-799-0393
土曜・日曜8:00-17:00
一足のばして
大湖でイチゴ狩り
汶水老街に近い「大湖」は台湾を代表するイチゴの産地。獅潭から大湖へ抜ける街道沿いにはずらりとイチゴ園が並び、晩秋の1月から翌4月頃までイチゴ狩りの人出で賑わう。イチゴアイスクリーム、イチゴソーセージ、イチゴジャムのほかイチゴを取り入れた料理や菓子類が勢ぞろい。イチゴ好きにはたまらないスポットだ。
清安豆腐街
汶水老街に隣接する清安村はT字型の古い通りで、泰安温泉への中継点にあたる。名水に恵まれるため、きめ細やかで滑らかな豆腐が作られることでも知られている。手作り豆腐店のほか豆腐料理の名店が並ぶ「豆腐街」だ。
新店老街
「新店老街」は「獅潭老街」とも呼ばれる昔ながらの商店街。日本時代から残るアーケードスタイルの街並みがレトロな雰囲気を醸しだしている。近年は地元住民がアートで街を盛り上げようと、大きな通りから路地に至るまで、至るところにアニメのキャラクターやマスコットを描いており、古い商店街がカラフルに変身を遂げている。
台湾鉄道苗栗駅から5657バスで「獅潭」下車、徒歩で各スポットへ
鳴鳳古道
「鳴鳳古道」はかつて台湾原住民「サイシャット族」が狩猟に使っていた山道で、やがて獅潭から頭屋・公館へ抜ける交通路となった。古道は全長3㎞。東端の義民廟と西端の雲洞宮にそれぞれ入口があり、沿路は石段や木橋を含む自然道だ。渓流沿いに鬱蒼と樹木が茂る格好のハイキングコースで、春にはアブラギリの花見も楽しめる。情人谷・忘憂台などの人気スポットへと通じているので、ほかの古道とも組み合わせて体力に応じたコースを設定しよう。
鐘楼古道
全長約400mのミニ歩道。最も高いところからは新店老街が見渡せる。沿線の竹林もすがすがしく、家族連れにぴったりのコースだ。「鐘楼」という呼称は、日本時代に空襲警報を伝える鐘楼が設置されていたことに由来するという。現在は山頂の東屋に「幸福の鐘」が設けられている。
神秘小径
「神秘小径」は、もとは住民が河畔へ向かう際の近道だった。後にコミュニティバスの運転手を務める楊賢忠さんが、画才を活かして人気アニメのワンシーンやキャラクターを描いたことから、アートストリートに生まれ変わった。以前は暗くひっそりしていた路地がカラフルに模様替えされ、今では人気のインスタ映えスポットとなっている。
仙山仙草
60年にわたり、美容に良い薬草「仙草」を使った各種商品を生産・販売している人気店。仙草ゼリー「仙草凍」などのスイーツのほか、仙草スープの鍋「仙草火鍋」、仙草と鶏肉のスープ「仙草鶏」、仙草ゼリーに衣をつけて揚げた「炸仙草」など、ユニークな食事系メニューもそろう。大根餅入りスープ「蘿蔔糕湯」、黒糖蒸しパン「黑糖發糕」などの客家風軽食も人気。
苗栗県獅潭郷新店村7鄰62号+886-3-793-2318
8:00-17:30
https://www.facebook.com/shianshan.shiantsau/
日新飲食店
地元で50年愛される客家料理レストラン。時代を経た建物にレトロなインテリアが雰囲気たっぷり。一番のおすすめは、客家風米粉麺の焼きそば「炒粄條」。モチモチとした食感がたまらないと絶対の人気を誇るメニューだ。客家料理は一般的に味付けが濃いが、ここでは減油・減塩がリクエストできるので、必要な場合は事前にお店の人に伝えよう。
苗栗県獅潭郷新店村9鄰101号+886-3-793-1338
8:00-20:00
藍色小屋
地域の文化運動に携わる李業興さんが開設した教育基地。李さんは獅潭で生態や環境などの教育に関わりながら、グループツアーも運営しており、現地の文化や自然にも詳しい。「藍色小屋」は不定期開館のため、ガイドツアーを希望する場合には電話で問い合わせよう。15人から20人で開催可能だ。
苗栗県獅潭郷新店村48号+886-925-882-508
一足のばして行きたい観光スポット
苗栗県 獅潭 マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。