国立台湾大学 台湾最高峰の大学キャンパスで遊ぶ!
文/高田雅子 写真/視野創異行銷・高田雅子
国立台湾大学
台湾最高峰の大学キャンパスで遊ぶ!
「国立台湾大学」は、台湾最高峰の大学。日々、学生たちが学問にいそしむ大学構内は、一般の人も自由に見学できる。MRT公館駅前に位置する本キャンパスには、日本時代に建設された歴史ある校舎や博物館をはじめ、美しい緑地や農場、食堂、カフェ、ギフトショップなどがあり、平日も近隣に住む人たちが散策に訪れる。台湾大学の学生気分で構内を散策してみよう!
目次
国立台湾大学ってどんな大学?

市定古跡の行政大楼(大学本部棟)
台湾大学の前身は、日本時代の1928年(昭和3年)に設立された台北帝国大学。戦後の1945年に現在の名称に改名された。本キャンパスの敷地は、もとは台北高等農林学校だった場所で、現在の行政大楼(大学本部棟)は1926年(大正15年)に完成した台北高等農林学校の校舎にあたる。

1930年代の本キャンパス
台湾大学は台湾各地にキャンパスをもつ。現在は、台北校区(本キャンパス、水源キャンパス、城中キャンパス)、新竹県の竹北校区、雲林県の雲林校区のキャンパスと、新北市の安康農場、南投県の山地実験農場と実習林で構成されている。幾多の著名な学者、政治家、経済人を輩出してきた台湾最高峰の大学は、2028年に創立100周年を迎える。

2号館(旧台北帝国大学理農学部理化学教室校舎)
本キャンパスのみどころ
台湾大学の本キャンパスの総面積は115haにおよぶ。台北帝国大学時代に建設された校舎の数々をはじめ、敷地内に点在する博物館、緑豊かな庭園や池など、見どころは尽きない。本記事では、初訪問時におすすめの、本キャンパスの定番スポットをご紹介!
おすすめ散策ルート
正門→椰林大道→校史館→傅鐘→文学院→醉月湖→工学博物館→図書館→瑠公圳水源池→農産品展示中心→共同三松→第二次大戦の弾痕→旧発酵実験工場ボイラー室煙突→植物標本館→新月台
正門
優美な佇まいを見せる台湾大学の正門は、1931年(昭和6年)に建設された台北帝国大学の正門が現役で使用されている。1998年に台北市の古跡に指定された。向かって中央が守衛室、右手が入口、左手が出口の配置で、建材には唭哩岸石や台北市北投産のタイルが使用されている。正門前の広場は、数十年の間に幾度も学生運動の舞台となったことでも有名。
椰林大道
本キャンパスの中心を東西に走るメインストリート。正門から図書館まで約600m続く道の両側には、約100本のダイオウヤシが植えられている。台湾のダイオウヤシは日本時代に日本人が台湾に持ち込んだものだが、現在は街路樹として台湾の風景に溶け込んでいる。南国らしい雰囲気を醸す美しいヤシの木の並木道は、の並木道は、本キャンパスのランドマークになっている。
校史館
「校史館」は正門から約150mの椰林大道左側にある史料館。台北帝国大学の図書館だった建物は、三連アーチのエントランスが印象的な折衷主義建築の特徴を持つ。前棟の図書館事務室は1929年(昭和4年)、後棟の書庫と閲覧室は1931年(昭和6年)に完成した。

図書館の閲覧室の面影が残る展示空間
1998年に図書館が新館に移転すると、台北市の市定古跡となった旧図書館の建物は文学院に転用され、2階の旧図書館中央閲覧室で台湾大学の歴史的文物の展示が始まった。「校史館」として正式に開館したのは2005年。常設展では、各年代の卒業証書やアカデミックガウンなど、豊富な文物や写真を通して、台北帝国大学創立から現在までの台湾大学の歩みを知ることができる。時間があれば、併設の台湾原住民族に関する文物を紹介する「人類学博物館」を見学するのもおすすめ。
校史館
9:00-17:00、月曜・日曜・祝日休館
入館無料
historygallery.ntu.edu.tw
※飲食、喫煙、無許可の動画撮影と商業撮影禁止
人類学博物館
10:00-16:00、土曜9:00-17:00、火曜・日曜休館
入館無料
anthro.ntu.edu.tw
※飲食物の持ち込み、喫煙、フラッシュ使用、商業撮影禁止
傅鐘
椰林大道の中心の行政大楼正面にたつ鐘は、台湾大学の自由主義の校風を象徴するアイコンのひとつ。1949年1月20日から1940年12月20日に脳溢血で急逝するまで学長を務め、現在の台湾大学の基礎を築いた傅斯年氏を記念し、「傅鐘」の名がつけられている。授業の開始・終了時に21回鐘が鳴らされる。鐘の回数は「1日は21時間しかない。残り3時間は沈思するためのものだ」という傅氏の名言が元になっている。
文学院
台北市の古跡に指定されている文学院校舎の前身は、1929年(昭和4年)に完成した台北帝国大学文政学部。台北帝国大学の折衷主義建築群を代表する建物のひとつだ。切妻屋根は日本瓦で覆われ、三連アーチを備えた正面玄関の車寄せの上部はテラスとなっている。表面に細かい溝がある褐色の筋面タイル(十三溝タイル)で覆われた外壁が優美で、内装は台北帝国大学の校舎で最も優美との呼び声も高い。現役の校舎なので内部には立ち入らず、エントランスから1階ホールを見学するにとどめよう。
醉月湖と瑠公圳

醉月湖
本キャンパスが位置する公館周辺は、もとは清代に開墾された農地だった。本キャンパスの敷地には、新店渓から水を引いた農業用水路「瑠公圳」の第一霧裡薛支線と大安支線が流れていた。戦後の都市の発展とともに瑠公圳は暗渠化や埋め立てにより、徐々に姿を消した。

湖畔で遊ぶバリケンの親子
椰林大道の北側にある「醉月湖」の前身は、「牛湳池」と呼ばれていた瑠公圳の調節池で、1970年代にアーチ橋や東屋が整備され、現在の名がつけられた。台湾大学は2011年に生態に配慮した湖岸改修工事を実施。2017年には台北盆地の重要な用水路だった瑠公圳の歴史を伝えるため、池の南側に一部分ではあるが、瑠公圳の景観を復元した。醉月湖と瑠公圳復元エリアは、水辺の景観が美しい癒しの空間に生まれ変わっている。

瑠公圳の解説版

瑠公圳復元エリア
工学博物館
「旧機械館」の愛称で親しまれている建物の前身は、1943年に建設された工学部の校舎。台北帝国大学時代に最後に完成した建物でもあった。戦後は機械工学学科の校舎として利用された。2014年には台北市の歴史建築に指定された。現存する建物右側は、「国立台湾大学工学博物館(NTU Museum of Engineering)」として整備され、一般公開されている。
現在開催中の特別展「HERE WITH M.E.」では、工学部に関する歴史的文物を始め、暦年の機械工学学科による自動車や航空機などの試作機などが見学できる。
台大工学博物館
10:00-17:00、月曜・日曜・祝日休館
入館無料
※2025年9月14日まで特別展「HERE WITH M.E.」開催中
図書館
椰林大道の突きあたりに佇む新図書館は1998年に完成した。旧図書館をはじめとする台北帝国大学時代の折衷主義建築の特徴を取り入れられている建物は、周囲の古い校舎と違和感なく溶け込み、椰林大道と図書館の組合せは台湾大学を代表する景観のひとつになっている。
台大農場と瑠公圳水源池

瑠公圳の水路と水車
図書館の南側に歩いて行くと、緑に包まれた水路に出会う。ここもまた、かつて敷地内に流れていた用水路「瑠公圳」の一部だ。現在の美しい景観は、2001年から始まった環境復元プロジェクトにより、水路と隣接する水源池(生態池)で自然環境と生態系に配慮した改修工事にの成果だ。

瑠公圳水源池
舟山路と基隆路四段の交差点から南を眺めると、水車が佇む水路と水鳥の集まる池の向こうに、農業試験場「台大農場」の田畑が続く、台北市の中心部とは思えないような、のどかな田園風景が広がっている。農場内は通路であれば自由に散策できる。ビジターセンターのカフェでひと休みするのもいいだろう。
台大農場訪客中心(緑房子)
台北市大安區基隆路四段42巷5號
10:00-18:00、土曜・日曜9:00-18:00
農産品展示中心
水源池から舟山路を西に進むと、すぐ右手に見えてくる和風の建物は、台大農場が運営する「農産品展示中心」。店内では、農場で生産された牛乳やアイスクリーム、パンなどを中心とした農産品を販売している。なかでも牛乳と毎日焼き上げるパンは、搬入時間に行列ができるほど人気。屋外にテーブルがあるので、天気がいい日は木陰でアイスや牛乳をいただこう。

牛乳(大瓶)と三明治冰淇淋(アイスサンド)
農産品展示中心 舟山店
8:00-18:30、土曜・日曜9:00-18:00
www.farm.ntu.edu.tw
共同三松
「共同三松」は、農産品展示中心の西側に隣接する共同教学館前に佇む3本の琉球松。ここはかつて、台北高等農林学校の林学教室があった場所でで、共同三松は当時植えられた5本の松のうち、現存する3本を指す。大学の歴史とともに生きてきた松の木は、今日も学生たちを見守っている。
第二次大戦の弾痕
三本松から西に進むと前方に見える瓦屋根の建物は、1924年(大正13年)に建てられた科学教室。建物本体は赤レンガ造りの和洋折衷の建物だ。
現在は西側は農業科学学科の実験室、東側は洗濯店や理髪店として利用されている。建物の北側の外壁には、第二次大戦中に受けた爆撃の弾痕が残っている。
旧発酵実験工場ボイラー室煙突
さらに西に進むと、煙突のある建物の前に出る。ここは1931年(昭和6年)建設の台北帝国大学理農学部醸造学講座の工場だった建物。煙突の高さは約20mあり、建築当時は大学構内で最も高い建築物だった。台北帝国大学時代、工場ではボイラー室で発生させたエネルギーを用いて発酵実験を行っていた。第二次大戦中は代替航空燃料の生産も行っていたため、米国の爆撃の目標になったという。
植物標本館
正門そばの1号館後方にたつ「植物標本館」の前身は、1929年(昭和4年)に完成した台北帝国大学理能楽部腊葉館。椰林大道沿道の校舎群と同じく、アーチ窓や褐色の筋面タイル(十三溝タイル)の外壁などを持つ優美な折衷主義建築で、本館西側には温室も併設されている。

押し葉標本
初代館長は、北海道帝国大学から招聘された植物分類学の泰斗と名高い工藤祐舜。工藤が持参した多数の資料と、研究者たちが1929年から1945年の間に採集した1万点以上の標本は、台湾における植物研究の礎となった。

実用植物の紹介
館内には、台湾や東南アジアをはじめとした世界各地で収集された植物標本が30万点以上収蔵されている。1階南側の部屋が展示室として公開されており、貴重な収蔵品の一部を見学できる。額装された押し葉標本をはじめ、アルコールやホルマリンの液に浸けた液浸標本、大きな種子など、展示されている標本はどれも興味深く、独特な美しさに目を奪われるだろう。
植物標本館
10:00-12:00、13:00-16:00、火曜・祝日休館
入館無料
facebook.com/TAIHerbarium
お土産に!台湾大学グッズ
新月台
本キャンパス見学の最後は、台湾大学オリジナルグッズのお土産を探しに行こう! 新生南路に面した「NTU新月台 HUB & STORE」は、2024年12月に正式オープンを迎えた記念品ショップ。店内には、可愛らしいキーホルダーや文具、マグカップ、水筒、Tシャツ、トレーナーなど、実用的でデザイン性も高いグッズが豊富に揃っている。
2階にはカフェもあるので、新生南路の並木や台湾大学の運動場を眺めながら、ゆっくりティータイムを楽しむのもおすすめ。
台湾大学に遊びに行こう!
見どころ満載で、1日ではとても全部を見て回ることが難しい台湾大学本キャンパスは、何度行っても興味が尽きないスポット。台北旅行の際に、ぜひ遊びに行ってみよう!
国立台湾大学
台北市大安區羅斯福路四段1號
www.ntu.edu.tw
MRT公館駅3番出口から正門まで徒歩3分
国立台湾大学構内マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。