城南 歴史さんぽ
企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/陳正國・陳伯瑋・視野創異行銷
城南 歴史さんぽ
「城南」は清代に築城された城郭「台北城」の南側の地域を指す。正式な行政区画ではないが、現在の中正区と大安区の南部一帯の、西は中華路二段、北は愛国西路と愛国東路、東は新生南路二段、南は和平西路二段から公館商圏あたりまでを含むことが多い。日本時代は日本人の居住地だったため、日本にゆかりのある場所や建物も数多く残っており、日本人にとってはどこか懐かしい雰囲気が感じられるエリアだ。
目次
南海路
国立歴史博物館
いま城南エリアで最も注目を集めているのが「国立歴史博物館」だ。建物の前身は1916年(大正5年)に台湾勧業共進会(博覧会)のために建設された日本式木造建築の迎賓館。1955年に歴史博物館となり、幾度かの増改築を経て現在の中国宮殿様式の姿となった。
2018年から改修工事のために休館していたが、2024年2月に満を持してリニューアルオープンを果たした。3階の常設展では中国歴代の文物や美術品を展示。4階のレストランは隣接する植物園の蓮池が眺められる窓際の席が人気。展示品をデザインに取り入れたオリジナルグッズが揃う1階のミュージアムショップも見逃せない。
台北市中正區南海路49號10:00-18:00、月曜・旧暦大晦日・旧暦元旦休館
NT$80
www.nmh.gov.tw
MRT小南門駅から徒歩9分、MRT中正紀念堂駅から徒歩10分
台北植物園
台北で最も歴史のある植物園。1896年(明治29年)に南洋植物を研究する「台北苗圃」として設立され、1921年(大正10年)に正式に「台北植物園」に改名された。蓮池が有名で、蓮が見ごろとなる4月末から8月には早朝からたくさんの人が観賞に訪れる。
蓮池のほとりに佇む「南門町三二三」は木造平屋建ての日本家屋。建物名は1930年代の建築当時の住所「台北市南門町323番地」に由来する。屋内はL字型の土間と書院造の和室の構成で、2014年の建物修復にあたり日本人作庭家の手により新たに整備された枯山水庭園も美しい。
台北植物園
台北市南海路53號
5:30-20:00
入園無料
tpbg.tfri.gov.tw
MRT小南門駅から徒歩3分、MRT中正紀念堂駅から徒歩10分
※蓮池定時観測カメラ(tpbg.tfri.gov.tw/lotus.php)で毎日の開花状況を確認できる
南門町三二三
台北市南海路53號(台北植物園内)
9:30-16:30、月曜・火曜休館
総督府山林課宿舎群
台湾師範大学博愛楼西側は日本時代は錦町だった地域で、1930年代に建てられた台湾総督府山林課の職員宿舎が立ち並んでいる。保存状態の良い宿舎群は2006年に文化資産に登録されたのち、農業部林業及自然保育署(林業保育署)によるリノベーションを経て、2024年3月に文化複合施設としてオープンした。台湾の森林の植物や林業文化が感じられるスポットで散策を楽しもう。
0km山物所
A-C棟の歴史建築「0KM 山物所」は台湾の山林をテーマにしたセレクトショップ。西側の「複森林」をはじめとした敷地内には、台湾破傘菊、刺花椒、林氏澤蘭といった森林の希少植物が多数植えられている。
2000項目を超える商品が並ぶショップには有名ブランドとのコラボ商品も多数揃っており、お土産探しにも最適。こだわりコーヒーが味わえるカフェもあり、森林の息吹を感じながら、ゆっくりとした時間が過ごせる。
0km山物所
台北市大安區金山南路二段203巷21號
11:00-20:00、月曜休館
入館無料
www.0km.com.tw
MRT古亭駅・東門から徒歩11分
从森
E館は国産木材の展示販売センター。玄関すぐの広間の国産木材展示エリアでは、台湾杉(タイワンスギ)、柳杉(ヤナギスギ)、紅檜(ベニヒ)、相思樹(ソウシジュ)、樟樹(クスノキ)、大葉桃花心木(オオバマホガニー)などの樹皮、断面、年輪、種子、葉が展示されており、実際に木材に触れて感触や色の違いを観察することもできる。客間や書斎、台所では国産木材を使用した遊具、食器、家具など(20ページ)を展示販売している。台北市歴史建築。
台北市大安區金山南路二段203巷28、30號11:00-17:00、土曜・日曜11:00-18:00、月曜・火曜休館
入場無料、定員制(毎回20名、11:00、12:40、15:00に整理券配布)
www.taiwanwood.org.tw/exhibition
保育小站
F館は林業保育署の展示スペースで台北市の古跡に指定されている。展覧会の内容は不定期に更新される。2024年9月1日まで開催中の展覧会「好熱好熱的森林」は森林火災防止と森林資源保護の重要性をパネル展示や体験型ゲームを通して紹介している。
台北市大安區金山南路二段203巷24號9:00-12:00、13:30-17:00、月曜・火曜休館
入場無料、午後は30分毎の入替制(毎回定員15名)
レストラン&茶館
東美院
台北植物園から和平西路を南東に下っていくと、ビルの間に背の高い樹々に囲まれた日本家屋群が見えてくる。この辺りは日本時代は古亭町だったところで、これらの邸宅は1920年代後半に建てられた台北帝国大学の教授宿舎だった建物。保存状態がよく歴史的価値も高いことから、いずれも2007年に台北市の古跡や歴史建築に指定されている。
宿舎群の中央の路地に入ると、白い暖簾がかけられた建物が目に入る。2022年にオープンした「東美院」だ。暖簾をくぐり敷地に入ると、2軒の日本家屋が並んでいる。右側の「東美院」は季節の懐石料理が味わえる料亭。左側の建物はアートギャラリー兼茶室の「至美蒔光」だ。
茶室では台湾茶3種類と季節の茶菓子が提供される。最初の2種類のお茶は茶道家が温かいお茶を淹れてくれる。最後は冷茶で、残りの時間はゲストだけで日本庭園を眺めながら、ゆっくりとお茶の余韻を堪能できる。台北の中心部にいるとは思えないほど静かな隠れ家で、落ち着いた時間を過ごしてみたい。
東美院
台北市中正區牯嶺街60巷6號
02-2351-1919
予約制、ランチ12:00-14:00、アフタヌーンティー14:30-16:30、ディナー18:00-22:00
ミニマムチャージ1人1コース
thomecourtyard.com
MRT古亭駅から徒歩8分
※1人から受付、公式サイト・公式FB・電話から予約
至美蒔光
台北市中正區牯嶺街60巷4號
02-2550-1275
予約制、10:00-18:00、月曜定休
台湾茶体験1人NT$1000
facebook.com/lifeseeding
※海外からの旅行者は2人から受付、2週間前までに公式サイト・公式FB・電話から予約
大院子
日本時代の古亭町にあたる、現在の和平東路一段の南側、台湾師範大学(台北高等学校)と台湾大学(台北帝国大学)の周辺には、日本時代に建設された大学の教職員や官公庁職員の宿舎が数多く残っている。
瀟洒な住宅地の一角に佇む「大院子」の前身は、1931年(昭和6年)建設の日本海軍の招待所。約1360坪の広大な敷地に建ち並ぶ建築群は、和洋折衷の中央棟と南北の宿舎で構成されている。戦後は台湾大学の宿舎となり、2012年に台北市の歴史建築に登録されたものの、2013年に火災により損壊。その後、建物は修復を経てかつての美しい姿を取り戻し、2019年に「大庭園」の意味を持つ「大院子」として生まれ変わった。
中央の本館はギャラリーとなっており、月替わりで各界の芸術家の展覧会を開催している。本館左の建物はイタリアンベースのレストラン。和洋折衷の建物にガラス張りの温室を組み合わせた開放感あふれる空間で、窓の外に樹々の緑を眺めながら優雅に食事やティータイムが楽しめる。
台北市大安區和平東路一段248巷10號02-2369-7357
ランチ11:00-17:00、アフタヌーンティー14:00-17:00、ディナー17:0020:00
レストラン:ミニマムチャージ平日1人ドリンク1杯、休日1人ドリンク1杯+ケーキ1個/席利用2時間/サービス料10%
ギャラリー:展覧会による(レストラン利用者はレシート提示で無料)
facebook.com/TheHistoricalGrandCourtyard
MRT台電大楼駅から徒歩10分
城南 歴史散歩マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。