台中 霧峰・大里 ~台中盆地で歴史&アートめぐり~
企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/季子弘・宋育玫
台中 霧峰・大里
台中盆地で歴史&アートめぐり
お洒落なグルメやインスタ映えスポットが多い流行発信地の台中市だが、市街地中心部から少し離れると時間の流れが緩やかになり、また異なる姿が見えてくる。今回は、美しい歴史建築や豊かな農産物で知られる霧峰(ウ―フォン)、近年アートスポットが注目を集める大里(ダーリー)をめぐり、スローなテンポで台中盆地の山側の風景を旅してみよう。
おすすめコース
1日目:台湾鉄道台中駅→霧峰
2日目:霧峰→大里→台湾鉄道台中駅
目次
霧峰
林家300年の歴史舞台を歩く
台中市の最南端に位置する霧峰は、古くは台湾原住民族の集落で「阿罩霧(Ataabu)」と呼ばれていたが、清代になり大陸から渡来してきた人々によって開発が進められていった。年間の平均気温が20度前後と温暖な気候で、大里渓をはじめとした河川により水源も豊富なため農業が盛んな土地だ。霧峰に来たら、地元産の米や果物を使った酒や農産物をぜひ試してみたい。2021年1月からは休日観光シャトルバス「迴遊・阿罩霧」の運行も始まり、より便利になった霧峰観光に注目が高まっている。
霧峰:台湾鉄道台中駅から市バス50、201で「霧峰郵局(中正路)」下車、徒歩または公共レンタサイクルで各スポットへibike(YouBike台中)
i.youbike.com.tw/home
休日観光シャトルバス「迴遊・阿罩霧」
https://www.wftrip.com.tw/
国定古跡霧峰林家
霧峰林家宮保第園区
「霧峰林家」は台湾の著名な五つの富豪一族である「五大家族」のひとつ。開祖は、1746年に中国福建から台湾に渡来した林石。阿罩霧地区(現在の霧峰区)に定住した3代目林甲寅の子の代に、長男・林定邦の「下厝」と次男・林奠国の「頂厝」の二つの系統に分かれ、後に下厝は武門として、頂厝は政治・教育・文化などの方面で、台湾近代史に重要な影響をあたえた。国定古跡「霧峰林家」は霧峰林家の阿罩霧地区の邸宅と庭園の総称で、国定範囲は下厝系統(草厝・宮保第・大花庁・二房厝・二十八間)、頂厝系統(頤圃・蓉鏡斎・景薫楼・新厝)、萊園(霧峰林家花園)の三つに分かれる。
「霧峰林家宮保第園区」では下厝に属する「宮保第」と「大花庁」の建築群を公開。宮保第は台湾でもっとも広い敷地を持つ伝統建築。大花庁は台湾で唯一現存する木造福州式舞台。林家の宴席や観劇のための専用空間で、一族の全盛期を象徴する建築物だ。いずれの建物も中国大陸の漳州・福州、西洋、日本の様式が融合した建築美が素晴らしい。
細部に施された麒麟や牡丹など祝福の意味を持つ意匠の装飾も見逃せないポイントだ。清の時代に迷い込んだかのような美しい空間をめぐりながら、霧峰林家の3世紀に渡る歴史の舞台で華やかなりし時代の声に耳を傾けてみたい。
台中市霧峰区民生路26号04-2331-7985
9:00-12:00、13:00-17:00
NT$250
wufenglins.com.tw
台湾鉄道台中駅から市バス50、201で「霧峰郵局(中正路)」下車
※平日は定時ガイドツアーのみ、土曜・日曜・祝日は自由参観可、詳細は公式サイトを参照
※日本語・英語ガイドの費用は予約時に別途問い合わせ
萊園(霧峰林家花園)
一般に「霧峰林家花園」として知られる霧峰林家の庭園。現在は明台高中の敷地内となっており、庭園は観光客も自由に見学できる。庭園に続く橋を渡り園門をくぐると、湧水をひきいれた「小習池」と周囲の優美な建物、後方の山々が一体となった絵画のような美しい風景が広がっている。
庭園散策の後には校舎内に併設の「林獻堂博物館」にもぜひ立ち寄りたい。歴史文書や豪華な家具、衣装などの豊富な文物を通して霧峰林家の歴史に思いを馳せてみよう。
台中市霧峰区萊園路91号(明台高中校門から入園)04-2339-1761
9:00-18:00
萊園(庭園):入園無料、林獻堂博物館:NTS100/ガイドツアー:NT$220(林獻堂博物館・萊園・景薰樓・蓉鏡齋のガイドツアーを含む)
thelinfamily.org.tw
台湾鉄道台中駅から市バス50、201で「霧峰郵局(中正路)」下車
景薫楼・蓉鏡斎
林家宮保第園区に近接する「蓉鏡斎」と「景薫楼」は国定古跡「霧峰林家」の頂厝系統に含まれる。「蓉鏡斎」は頂厝の始祖林奠國の住居を1887年に孫の林文欽が改築した建物。中庭に孔子廟様式の半月池をもつ優美なつくりで、長く林家一族専用の私塾として使われていた。
「景薫楼」は林奠國が1864年から建造を始めた邸宅。前後に三つの建物が並び、中央の建物の左右から前面にのびる棟からなる美しい建物だ。1916年と1999年の2度の大地震で損壊し改修を経験しているが、当時の華やかな雰囲気を良く残している。頂厝一族が実際に使用していた家具などは、「林獻堂博物館」で見ることができるので、ぜひ同時に訪問しよう。
台中市霧峰区民生路42号04-2339-1761
9:00-18:00
NTS120(景薫楼・蓉鏡斎共通、入場券は林獻堂博物館で購入)
thelinfamily.org.tw
林家宮保第園区から徒歩1分
霧峰名物グルメ
霧峰爌肉飯
デカ盛りとコスパの良さで地元民に大人気の食堂。平日も店の前にはテイクアウトの行列ができているが、イートインの場合は直接店内へ。注文は、店の人が声をかけてくるのを待ち口頭で伝える。中国語が難しければ壁のメニューを指さししよう。看板メニューはゴロンとした豚の角煮がのった「爌肉飯」。肉の下に野菜のおかずがこぼれ落ちそうなくらい詰められており、小サイズでも十分すぎるほどのボリュームだ。豚肉はすっきり醤油味のたれで煮込まれ、漢方の香りもなく食べやすい。同じたれのそぼろをのせた「肉燥飯」も人気。
台中市霧峰区中正路1158号6:30-14:00、日曜・月曜定休
肉圓婆
霧峰市場周辺には有名な伝統グルメ店が多い。「肉圓婆」も外せない老舗の一軒だ。でんぷんの粉で豚肉餡を包み、低温の油で揚げ煮した「肉圓」は皮がモチモチ。外側の少しカリッとしている部分が香ばしく、食感のアクセントになっている。
肉圓にかける醤油、おろしにんにく、甘いたれ、唐辛子だれなどの調味料は、混ざりあうと醤油ベースで甘すぎない絶妙なピリ辛だれになる。お供には、肉団子と豆腐、大根入りのスープ「綜合湯」を。スープは塩ベースで、大根にもしっかり味が染みている。豆腐も大きく食べ応え満点だ。
台中市霧峰区民権街42号8:30-18:30、火曜定休
霧峰市場炸粿米苔目冰
霧峰市場の名前のない揚げ物店。目立たないので、訪問時はうっかり通り過ぎてしまわないよう気を付けたい。一番人気は牡蠣のかき揚げ「蚵仔嗲」。非常に薄い衣の中にはニラがぎっしり。さらにニラの中にはぷりぷりの牡蠣が隠れている。
店が独自に調合した醤油だれと唐辛子だれをつけていただくと、ニラと牡蠣のうまみがさらに引き立つ。甘く味付けしたもち米を揚げた「米糕」は、特製醤油だれをつけると柔らかいみたらし団子風の味わい。デザートとしても楽しめる一品だ。4月から12月はかき氷も提供している。
台中市霧峰区民主街(民権街と民主街の角から南に数軒目)8:00-15:00
光復新村
「光復新村」の前身は戦後に政府職員のために建てられた集落。当時最新のガーデンシティの設計理念が取り入れられた街並みは、緑が豊富で清清しい雰囲気。現在は政府による青年創業基金の支援を受けた若いオーナーが各住居に入居し、カフェやバー、アートショップなど多種多彩なショップをオープンしている。
瓦屋根の住宅が並ぶレトロな街は、カラフルなオブジェや椅子が置かれ、可愛らしい絵本の中のよう。赤煉瓦塀の路地裏を歩いていると、昔ここで生活していた人たちの息吹も感じられるようだ。霧峰の新世代の文化と芸術の発展拠点は、映画や結婚写真撮影のロケ地としても人気を集めている。
台中市霧峰区新生路・民族路・和平路・信義路一帯台湾鉄道台中駅から市バス50、59で「坑口里(光復新村)」下車
眷春水果冰
赤い手すりの階段が目印の人気スイーツ店。古い家の佇まいは田舎の親戚の家にお邪魔したような懐かしい雰囲気。窓の外に広がる街路樹の緑も心地よい。
看板メニューはイタリア仕込みの本格的なイタリアンジェラートに伝統的なかき氷を組み合わせたかき氷。人気のパッションフルーツのジェラートをのせたかき氷は、果物の酸味とベースの黒糖かき氷のこっくりした甘さが口の中で絶妙に溶け合う。トッピングのパイナップルのコンポートも、爽やかな香りと甘さがかき氷のアクセントになっている。ホームメイドのパウンドケーキやレモンパイもファンが多い。
台中市霧峰区民族路8号2F0935-711-370
11:00-17:00、月曜定休
ミニマムチャージ1人1品
facebook.com/shavediceandfruits
霧峰光復新村市場牛肉麵
開店時間の15時を過ぎると次々に席が埋まっていき、17時半ごろにはほとんど満席になる市場の人気牛肉麺店。店に着いたら、まずは空いている席を探し注文票に注文を記入しよう。支払いを済ませて待っていると、席に料理が運ばれて来る。
看板メニューの「牛肉麺」はあっさりした醤油ベース。こってり濃厚なゴマだれの「麻醤麺」も人気だ。麺のお供には味がよくしみた醤油煮込み「滷味」がマスト。ガラスケースから好みのものを選んでお店の人に渡すと切り分けてくれる。麺も滷味も量が多いので、何人かでシェアしてもいいだろう。
台中市霧峰区新生路57号0919-845-728
15:00-22:30
光復新村周辺スポット
霧峰農会酒荘
霧峰農会(農協)が運営するワイナリー。館内は芋の香りがする地元の特産米「霧峰香米」の米蔵、清酒の酒蔵、特産品コーナーに分かれている。
主力商品は霧峰香米を使った清酒。日本から導入した技術で醸造しており、なかでも端麗辛口の純米大吟醸や甘口の純米吟醸は世界酒類品評会で金賞、銀賞を受賞するほど内外で高い評価を得ている。どちらも香りとうまみが絶妙なバランスで、日本酒好きの日本人も唸る仕上がりの逸品。
台湾人には、同じ霧峰香米を使ったアルコール度数の高い焼酎が人気。若い女性には、美容に良いといわれる濁り酒や、地元産蜂蜜を使った蜂蜜の醸造酒「ミード」がおすすめ。いずれも試飲ができるので、じっくり味わって好みのお酒を見つけてみたい。
台中市霧峰区中正路345号04-2339-9191
9:00-17:00、旧暦大晦日・元旦定休
twwfsake.com
台湾鉄道台中駅から市バス59で「山脚巷」下車
霧峰民生故事館
霧峰農会が運営する文化施設で、前身は地元の医師・林鵬飛氏の診療所兼自宅だった「民生診所」。建物は当時の様子を生かしてリフォームされており、1階には診察室や客間の様子も再現されている。
1階では地元の特産品や土産物を販売。併設のカフェ「農学食堂」では、「産地から食卓へ」を掲げ、地元産の自然農法野菜を中心とした安心・安全な食材を使った料理やドリンクを提供している。
不定期で農夫マーケットや農業体験イベントなども開催しており、消費者と霧峰の農業をつなぐ場ともなっている。故事館の敷地は霧峰農会酒荘の裏庭とつながっているので、霧峰農会酒荘で清酒の試飲を楽しんだ後に立ち寄り、ゆったりテータイムを過ごすのもおすすめだ。
台中市霧峰区中正路369号04-2339-1556
9:00-17:00、月曜休館
入館無料
twwfstory.com.tw
霧峰農会酒荘から徒歩1分
921地震教育園区
「光復新村」から徒歩10分の「921地震教育園区」は、1999年9月21日に台湾中部で発生した「921大地震」の震災跡に建てられた博物館。展示エリアは車籠埔断層保存館、地震工学教育館、映像館、防災教育館、再建記録館などに分かれており、地震科学や地震の歴史に関する資料を展示するほか、地震体験などの防災教育を実施している。
なかでも地震で倒壊した中学校跡を保存したエリアは圧巻。マグニチュード7.3の強烈な地震により発生した断層のずれ、倒壊した校舎などの目の前に立つと、地震発生当時の面影を色濃く残す光景に言葉を失う。展示館と屋外の震災跡をめぐり、自然の力と防災について改めて考える機会になるだろう。
台中市霧峰区坑口里新生路192号04-2339-0906
9:00-17:00、月曜休園(祝日・夏休み・冬休みは開園)
入園無料
https://www.nmns.edu.tw/
台湾鉄道台中駅から市バス50で「921地震教育園区」下車
大里
アートと工芸にであう
霧峰の北側に隣接する大里は交通の便が良いことから清代から開発が進み、かつては「一府、二鹿、三艋舺、四竹塹、五諸羅、六大里杙」と謳われ、台湾でもっとも繁栄した地域のひとつだった。近年は個性的なアートや工芸関連施設が観光スポットとして注目を集めている。
台湾印刷探索館
台湾初の印刷産業観光工場で、台湾の宝くじになっているレシート「統一発票」を印刷している財政部(日本の財務省に相当)の施設。主な見学エリアは3か所。正門左手のB棟2階は受付とミュージアムショップ、DIYコーナーで、ガイドツアーではここから正門右手A棟の統一発票印刷現場を見学し(写真撮影不可)、敷地正面奥の展示棟へ進む。
展示棟には実際に使用されていた各時代の印刷機器や活字、パネル展示、版画体験を通して印刷の歴史や技法を楽しく学べるようになっている。また、最新の印刷技術を駆使したアート作品や体験型ゲームの展示エリアは、遊びながら考える力や行動力を身に着けられる子供たちに人気のコーナー。
DIYコーナーでは版画や糸綴じ製本などが体験できる。グッズコーナーでは様ざまな印刷技術を使用したオリジナルグッズも手に入る。学生の社会見学にも人気の知的体験スポットで多彩な印刷文化に触れてみよう。
台中市大里区中興路一段288号04-2495-1001
9:00-17:00、ガイドツアー10:00、14:00(要予約)、月曜休館
NT$100、3歳未満・65歳以上無料
twin.ppmof.gov.tw
台湾鉄道台中駅から市バス50、108などで「大里図書館」下車
※ガイドツアーは2日前までに予約・10人以上で催行、10名未満の時は前日に申込者へ取消を通知(ただし外国人が海外から参観の場合は10人未満でも催行可)
※英語ガイドツアー手配希望の場合は1週間前までに問い合わせ
※時間を指定してのガイドツアーは別途問い合わせ
※チケットの半券はDIYやミュージアムショップでNT$50割引券として使用可
Dali Art Plaze芸術広場
台湾の経済部(日本の経済産業省に相当)によって開設されたソフトウェアパーク「台中軟体園区」内に位置するアート空間。「Dali Art Plaze」の名称は所在地である大里(Dali)の地名に由来する。
近未来的なデザインの建物がたつ敷地内にはアーティストが手掛けたモダンアート作品があちこちに設置され、屋外美術館のような雰囲気。アート展覧会やコンサートなどのイベント開催時はより華やかになる。
隣接する東湖公園にもキュートな屋外アートが多数佇んでいる。開放的な青空の下で、休日のアート散歩を楽しもう!
台中市大里区科技路1号04-3707-5580
11:00-21:00、土曜・日曜・祝日10:00-21:00
https://www.daliartplaza.com.tw/
台湾鉄道台中駅から市バス50、108などで「大里図書館」下車
台中市繊維工芸博物館
台湾初の「ファイバー・ファッション・グリーンクラフト」をテーマとした公立博物館。2階の常設展では台湾全国のファイバークラフトを紹介。台中市大甲のイ草や和平の台湾原住民族の織物をはじめ、宜蘭県のバナナ繊維、新北市三峡の藍染など、その多彩さに驚かされるだろう。
台湾の人間国宝による刺繍作品や現代作家の創作ファッションの展示も興味深い。環境保護技術、ファッションデザイン、農業などを統合した、衣・食・住・レジャー・アートなど全方位的文化産業サービスを提供する台中市の新しい文化交流の場として注目される博物館だ。
台中市大里区勝利二路1号04-2486-0069
9:00-17:00、月曜休館
入館無料
mofia.taichung.gov.tw
台湾鉄道台中駅から市バス50で「大里運動公園」下車
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