苗栗 ―客家の里― 南庄・三義・銅鑼
企画構成・文/鍾昀彤 写真/宋育玫
苗栗
山間に広がる客家の里 その美を味わう
苗栗県は台湾本島中北部にあり、「山城(山里)」とも称され、同時に「台三線=客家ロマンチック街道」の中核に位置する。のんびり美食と美景を楽しむ、苗栗県「南庄・三義・銅鑼の旅」へとご案内しよう。客家の里で、本格的な客家料理と伝統の擂茶のほか陶芸や藍染を体験し、茶農家の生活に触れる。客家風情堪能ツアーである。
おすすめコース
一日目: 台湾農林銅鑼製茶工場 → 三義周辺観光スポット → 卓也小屋
二日目: 南庄周辺観光スポット → 燕子陶
各地アクセス
南庄:台湾鉄道竹南駅から台湾好行南庄線に乗り換え、「南庄」下車。徒歩で各スポットへ。
三義:台湾鉄道三義駅から、タクシーで各スポットへ。
銅鑼:台湾鉄道銅鑼駅からタクシーで各スポットへ。
台三線 = ロマンチック街道とは?
日本に奥の細道があるように、台湾には台三線がある。台三線は俗に内山公路と呼ばれ、台北から屏東まで本島を南北に貫く総延長436.8キロに及ぶ街道。そのなかで「台三線客庄浪漫大道(客家の里ロマンチック街道)」は桃園平鎮から台中新社までの約150キロを指し、その間沿線には客家の集落が続く。
目次
南庄
客家の生活に触れる
「燕子陶」緑あふれる一千坪
陶芸の道に入り二十余年になる張燕鳳氏は、自分が積み重ねてきたものを分かち合おうと、南庄の山林に「燕子陶」を開いた。ここは家族が力を合わせて築いた至福の空間。敷地には至る所に陶芸作品が飾られ、小さな博物館のようだ。緑あふれる千坪のスペースは「芸術を生活に」をコンセプトに設計され、客室からは南庄の風景と変化に富んだ山並みが見渡せる。
張燕鳳氏は、陶芸を自由な創造と考える。自身の両手で日々踏みしめている土に触れる。陶土のぬくもり、粘り、湿り気、ざらつきなどの質感を感じる。土と心を通わすため、電動ろくろには頼らず、手でひねり、叩き、揉み、形を整え、陰干しし、釉薬を塗り、窯で焼きあげる。南庄を訪れたなら、「燕子陶」で自由奔放な陶芸の魅力に触れてみよう。世界に一つだけの記念品を持ち帰ることもできる。
苗栗県南庄郷南江村19 鄰南江6-3 号+886-919-703-015
月曜・金曜10:00-18:00、土曜・日曜9:00-19:00、火曜- 木曜定休
体験教室料金: NT$400 より/ 人
台湾鉄道竹南駅から「台湾好行バス仙山線5822」で「南江観光農園」下車。あるいは「苗栗客運バス仙山線5822A」で「福南」下車後、徒歩約10 分。
www.yanzitao1995.com
観光スポット
康済吊橋
康済橋は1953 年の建造当時、東河・蓬莱・南江地区の林業・鉱業にとって欠かせない要道だった。後に水害で流されたため、康済吊橋として再生された。いまも南庄と南江を結ぶ大切な架け橋である。吊橋からは山里と渓流が織り成す美景が眺められ、南庄を代表する観光名所の一つとなっている。
苗栗県南庄郷南庄老街そば
南庄文化会館
1900 年創建の「南庄郵便局」はヒノキ造り。1935 年の地震で損壊後に再建された。素朴な佇まいが愛でられ、南庄郷を代表する史跡となっている。現在「南庄文化会館」として、地元の文化と生態を紹介するスペースに生まれ変わっている。
苗栗県南庄郷文化路5 号+886-3-782-4553
9:00-17:00、火曜定休
桂花心語
南庄老街にある「桂花心語」は、ヘルシーな白玉が名物。紅麹・黒ゴマ・カボチャ・緑茶などの食材を使用した手作りが自慢。おすすめは淡い花の香りが特徴の「キンモクセイ紫米アズキ白玉」。食感が独特で、一椀で色々な味が楽しめる。
苗栗県南庄郷文化路10号+886- 933-974-083
9:30-17:30、水曜・木曜定休
南庄老街
南庄老街(昔から続く商店街)は「桂花巷」とも呼ばれる。ひっそりした路地裏には、古い赤レンガの建物が残り、レトロな雰囲気がたちこめる。桂花= キンモクセイは南庄を代表する植物。そのため、南庄老街では、キンモクセイ・ハチミツ・氷砂糖で作られるキンモクセイ風味のシロップが名物。また、老街では、イノシシの石板焼や竹筒飯が人気だ。
苗栗県南庄郷中正路
三義
客家の生活に触れる
「卓也小屋」地場の野菜料理
苗栗県「三義」にある「卓也小屋」は、台湾の農村生活をテーマにしたレトロな民宿。当初、オーナーの卓也夫妻は、フクロウの生育に適した環境を守ろうと、この土地を取得。その思いは、観光農園へと発展したが、全体のレイアウトから客室の鍵一本に至るまで、二人のこだわりは徹底している。食材はすべて自家菜園か近隣農家から仕入れたもの。野菜と雑穀を使った健康志向の料理を、季節に応じて提供する。シンプルだが手を抜かない。そんな苗栗の客家料理が堪能できる。
三義は高湿度の丘陵地帯。藍の生育に適していることから、卓也夫妻は農地を借り受け、古来伝わる藍染技術を復活。原液を抽出するところからすべての工程が園内で完結する。体験教室では、輪ゴムで布をくくり、次に布を藍液が入った容器に浸す。くくり方の違いで違った模様が現れる。その意外な仕上がり具合が醍醐味。三義での一番のおすすめは「卓也小屋」の藍染体験だ。
+886-3-787-9198
9:00-22:00 体験教室: 9:00、10:00、11:00、13:00、14:00、15:00、16:00
体験教室料金: NT$300より/人
台湾鉄道三義駅から「卓也小屋」送迎バスで
www.joye.com.tw
観光スポット
三義木彫博物館
1995年4月創立。台湾で唯一の木彫をテーマとした公立博物館。三義の木彫芸の保存と普及を目的とする。館内では、木工の起源や木彫の歴史が紹介され、地産の家具・神像・彫刻作品の展示がおこなわれている。丹精込められた作品と対峙していると、森の大樹と対面している心地よさが感じられる。
苗栗県三義郷広声新城88号+886-3-787-6009
9:00-17:00、月曜休館
大人NT$80
九鼎軒
三義で最初の木彫店だったという。今は飲食のほか客家ならではの米食品店へとリニューアルし、多くの観光客で賑わう。当地の旅にふさわしい客家の食品や中華菓子が購入でき、景色が自慢の庭園レストラン「居鳩堂」では本場の客家料理が楽しめる。
苗栗県三義郷水美街118号+886-3-787-5366
8:00-19:00
www.jdsh.com.tw
勝興駅
台湾西部鉄道旧山線の最高点で、プラットホームには標高402.326メートルを示す記念碑が立っている。1916年創建の駅舎はすでに齢百年。木造の外観からは日本時代ならではの風情が漂う。旧山線は地形が険しく、車窓の景観も異彩だったが、1998年に別ルートで複線化がなり、交通機関としての機能は失われた。いまはノスタルジックな佇まいを愛でに多くの鉄道ファンが訪れる。
苗栗県三義郷勝興村14鄰勝興89号
龍騰断橋
1905年創建の鉄橋。レンガ造りの橋脚が特徴で、巧みな石積みでバランスと吸震の効果を実現している。しかし1935年の「関刀大地震」で損壊し、橋脚部分のみが残った。奥深い山中に屹立する孤独な姿がファンや住民に愛され、当地のランドマークとなっている。
苗栗県三義郷龍騰村郷道苗49線
客家美食
勝興客桟「参代堂」
三義木彫街にある「参代堂」では、三代目の劉科良氏が、客家料理に新しい概念を取り込み、「山城本舖」ブランドを開発した。その米食品・漬物・ドライフルーツといったギフトは三義を訪れる行楽客に大人気だ。
とくに特色ある料理をご紹介しよう。まずは「客家小封」。桂竹のタケノコをベースに、紅麹で煮込んだ豚肉を載せる。濃厚な肉とさわやかなタケノコがご飯にぴったりだ。「盛興豆腐」は揚げた三角豆腐と炒めたモヤシが香り豊か。「涼拌水蕨」は山菜の和え物で、酢に漬け込んだ千切りショウガとかつお節が食欲をそそる。
+886-3-787-5070
月曜-金曜9:00-20:00、土曜-日曜9:00-20:30
サービス料:無/カード:可/ミニマムチャージ:無/予約:可
十六份人文茶館
勝興老街(昔から続く商店街)にあり、2017年にオープンしたばかりの客家茶館。勝興の旧名「十六份」にちなむ店名で、伝統と現代が融合した見事な建築。
おすすめは客家擂茶の体験。使用するスリコギは樹齢80年の苦茶樹の枝。堅固な材質で知られる。先ずは茶葉を鉢に入れて摺り、次に黒ゴマ・白ゴマ・カボチャの種・ピーナッツを加え、材料から油がにじむまで摺る。最後に茶の粉と熱水を注ぎ、お好みで黒糖を加える。客家餅をいっしょに食べれば、手作りの優しさと客家の風情が合わせて味わえるだろう。
苗栗県三義郷勝興村勝興53号+886-3-787-1381
10:00-18:00、火曜定休
www.facebook.com/16hakka.teahouse
銅鑼
観光スポット
台湾農林銅鑼製茶工場
2017年7月に設立された台湾農林公司の銅鑼製茶工場。自然農法・有機栽培にこだわり、環境保護と生態教育に力を入れているほか、体験教室を開設している。場内はシンプルながら広々としており、入り口に足を踏み入れた瞬間から、そのダイナミックなスケールに驚かされる。
屋内には伝統的な製茶器具が展示され、壁に絵画がかかる優雅な空間では食事もできる。気候・土壌・湿度の異なる環境条件の下に育った様々な味わいのお茶を中華菓子とあわせていただきたい。
茶摘み体験は3月から11月初め。参加者は、台湾ならではの花柄の布をつけた笠を被り、竹かごを腰につけて畑に入る。10種類以上の茶の木が植えられている茶園を指導員と歩き、新芽の先端から二枚までの茶葉「一心二葉」を摘み、手揉み、焙煎を行う。完成したセルフメイドのお茶は持ち帰ることもできる。茶人とふれあい、日常生活を体験する特別な旅になるだろう。
苗栗県銅鑼郷九湖村132-16号+886-3-798-7358
月曜-金曜10:00-17:00、土曜・日曜10:00-17:30
台湾鉄道銅鑼駅からタクシーで約10分
秋冬の「白雪」
銅鑼杭菊
銅鑼郷には年に二度「白雪」が舞う。一つは春のアブラギリの花、もう一つは晩秋から初冬の杭菊花だ。丸くて小ぶりの花は、客家の里に清らかな彩りを添えている。
一足のばして行きたい観光スポット
グランピング ― 勤美学 山那村 CMP Village ―
苗栗 南庄・三義・銅鑼 マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。