嘉義 木都の旅
企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/陳正国・季子弘・宋育玫
嘉義
木都の旅
嘉義は日本時代には林業で栄え、「木都」と呼ばれた。当時、阿里山で切り出されたヒノキなどの原木は阿里山森林鉄道により運搬された後、嘉義で材木に加工され、各地へ出荷された。このため嘉義市内には製材所や木造の日本式宿舎などをはじめとする当時の建物が数多く残っている。街を歩けば、いまなお息づく日本時代の記憶にふれることができるだろう。
台湾鉄道嘉義駅から徒歩または公共レンタサイクルで各スポットへ嘉義市Youbike
chiayi.youbike.com.tw/home
目次
「木都」歴史探訪
阿里山森林鉄路車庫園区
台湾鉄道嘉義駅の北東約1㎞に位置する北門駅は、1912年(大正元年)に阿里山森林鉄道が開通した際、起点駅の「北門驛」として開業した。駅舎は建材に阿里山のタイワンベニヒノキが使われた、和の佇まいを持つ美しい建物。
駅西側には鉄道車庫や整備工場が残っており、公園として公開されている。園内では引退した蒸気機関車やディーゼル機関車、旅客車両、貨物車両のほか、円形転車台を間近に見ることができる。
タイミングが合えば、線路を走る現役の森林鉄道に出合うことも。鉄道ファン必見のスポットだ。
嘉義市東区林森西路2号8:00-18:00
阿里山森林鉄道
阿里山森林鉄道(正式名称:阿里山林業鉄路)は1906年(明治39年)に建設工事が開始された産業鉄道。複雑なループ線、スイッチバック構造など、登山鉄道の特殊な工法が使用されており、歴史的価値の非常に高い世界遺産級の登山鉄道だ。
現在の起点駅は嘉義駅で、台湾鉄道と1番ホームを共用している。ぜひ嘉義に宿泊して、森林鉄道で海抜2000mを超える阿里山を登り、巨木が佇む神木の森を訪ねてみたい。
阿里山林業鉄道と文化遺産管理処(日本語)
afrch.forest.gov.tw/Ja
檜意森活村
阿里山森林鉄道北門駅の南側は、日本時代に嘉義林場の宿舎があった場所。2014年に、現存する28棟の日本家屋の宿舎をリノベーションし、文化施設の「檜意森活村」がオープンした。
宿舎の建物はすべてヒノキ造り。瓦葺きの宿舎の間を歩いていると、まるで昭和の日本にやってきたような気分が味わえる。園内では「森林文化創造」をテーマとして、地元の工芸品や農産物、ブランドなどを紹介している。散策を楽しみながら、嘉義ならではの土産物を探してみよう。
嘉義市東区林森東路1号10:00-18:00、屋外エリアは24時間開放
入園無料
afrch.forest.gov.tw/Ja/0000271(日本語)
阿里山林業村
阿里山森林鉄路車庫園区の線路を挟んだ北側に位置する「阿里山林業村」には、阿里山で伐採されたヒノキの製材を行っていた「嘉義製材所」が残っている。
日本政府により1910年(明治43年)に国有化された阿里山で1912年(大正元年)に官営事業として伐採事業が始まると、1914年(大正3年)には貯木場と嘉義製材所が完成した。工場は当時、「東洋一」と呼ばれる世界最先端の設備を誇り、ここで製材された材木は日本や台湾各地に運ばれていった。
現在、嘉義製材所の製材工場、事務所、動力室、鋸屑室、乾燥室などが嘉義市の歴史建築に指定され、その他の建築物とともに一般公開されている。
林業村の西端には台湾の芸術家・王文志氏の制作による大型インスタレーション作品「森林之歌」が設置されている。デザインコンセプトは阿里山森林鉄道と阿里山の神木。
籐で編まれたトンネルは卵型のドームに続いている。ブナとヒノキをふんだんに使用した内部の空間は清々しい木の香りが漂い、まるで阿里山の自然の中に立っているかのよう。「木都」にふさわしい芸術作品だ。
阿里山林業村 嘉義製材所
嘉義市東区林森西路4号
9:00-17:00、月曜・火曜休園
入園無料
afrch.forest.gov.tw/Ja/0000268(日本語)
森林之歌
阿里山林業村西側文化路林森西路地下道そば
24時間開放
※夜間ライトアップあり
嘉義舊監獄
「嘉義舊監獄」は1922年(大正11年)に「台南監獄嘉義支監」として完成した刑務所。戦後に「台湾嘉義監獄」と改称した後、1994年に嘉義監獄が移転した際に「嘉義監獄嘉義分監」となったが、やがて受刑者の減少により役目を終えた。
100年の歴史を持つ監獄は2005年に国定古跡に指定され、修復を経て2011年に台湾唯一の「獄政博物館」として生まれ変わった。敷地内には中央見張所、舎房、工場、浴場、病舎などがほぼ完全な形で残されている。
なかでも看守が監視を行う中央見張所から放射状に3棟の舎房が渡り廊下で接続している構造は、網走刑務所などの日本国内の刑務所と共通する様式で興味深い。刑務所南側に残る職員官舎群もリノベーションされ、工房や展覧会場として使用されている。
嘉義市東区維新路140号平日9:30・10:30・13:30・14:30・15:00、土曜・日曜9:30・10:30・11:00・13:30・14:00・14:30・15:00、月曜休館
入館無料
prisonmuseum.moj.gov.tw
※入館にはガイドツアー参加が必要(所要時間約50分)
台湾花磚博物館
「花磚」とは、金型で凹凸のあるレリーフを施して鮮やかな色釉で彩色した「和製マジョリカタイル」のこと。大正から昭和のはじめにかけて日本で盛んに生産され、台湾に輸出されたタイルが「台湾花磚」の源流だ。
博物館オーナーの徐嘉彬氏は、失われつつある花柄タイルの文化を惜しみ、故郷の嘉義で日本時代の木材商店だった建物を購入し、台湾唯一の花柄タイル「台湾花磚」の博物館を立ち上げた。
館内には台湾各地の古い建物から集められた数千枚にもおよぶタイルが収蔵されている。古民家の中で息を吹き返した花柄タイルの美しさは必見!
嘉義市西区林森西路282号0905-012-390
10:00-17:30、月曜・火曜休館(祝日の場合は開館)
NT$100(チケットは館内の150元以上の商品に50元の割引券として使用可)
1920t.com
嘉義市立美術館(旧菸酒公売局)
2020年にオープンした美術館。前身は1936年(昭和11年)建設の台湾総督府専売局嘉義支局(戦後に菸酒公売局嘉義分局と改名)。正面右側のL字型の建物は、嘉義の市定古跡に指定されている旧支局庁舎。設計は台湾総督府専売局技師の建築家・梅澤捨次郎で、丸みを帯びた外観が優美な建物だ。
正面左手の瓦屋根の建物は戦後に建設された酒類倉庫。中央の日本時代建設の倉庫は、壁一面を覆うガラスのカーテンウォールと木の梁の組み合わせが明るくモダンな空間を演出。木材の温もりが、かつて「木都」と呼ばれた嘉義の歴史に重なる美しい美術館だ。
嘉義市西区広寧街101号05-227-0016
9:00-17:00、月曜休館
大人NT$50、6歳以上12歳未満の児童NT$25、65歳以上は平日無料・休日NT$25
chiayiartmuseum.chiayi.gov.tw
嘉義のおいしいもの
林聰明沙鍋魚頭 創始総店
嘉義に来たら必ず訪れたい名店のひとつ。店頭の大鍋の中では、豚骨スープとあふれんばかりの白菜、揚げ湯葉、豚バラ肉、キクラゲなどの具材が煮込まれている。この具がたっぷりのスープに淡水魚・大頭鰱(コクレン)の頭や身のから揚げを加えると、スープに魚のから揚げのうまみが溶け出し、甘みとうまみが凝縮された最高の鍋になる。
少人数でもお椀によそった切り身のから揚げ入りのスープも用意されているので安心だ。約70年にわたり嘉義の味として愛される名物料理をぜひ味わってみたい。
嘉義市東区中正路361号12:00-22:00
www.smartfish.com.tw
※臨時休業は公式サイトで告知
桃城三禾火鶏肉飯
「鶏肉飯」は嘉義の名物グルメ。本場の嘉義では火鶏(七面鳥)の肉を使うため「火鶏肉飯」と呼ばれることが多い。嘉義市内の火鶏肉飯の店舗数の合計はコンビニ4社の店舗数より多いという、嘉義市民のソウルフードだ。
なかでも創業30年あまりの「桃城三禾」はファンの多い名店。おすすめは火鶏肉の細切れをのせた「火鶏肉飯」と、しっとりジューシーな火鶏肉の切り身「火鶏肉片切盤」。珍しい火鶏足の煮込み「滷火鶏爪」もぜひ試したい。
嘉義市東区民権路97号10:00-20:00、木曜定休
facebook.com/TCSHHJRF
※臨時休業はFacebookページで告知
正老牌草魚粥
一家三代、50年あまりにわたり淡水魚・草魚(ソウギョ)を売る老舗。ソウギョは活魚を仕入れて店でさばいているため、魚肉のほかに、頭や皮、内臓、魚卵、尾など、珍しい部位の料理も並ぶ。
人気の「草魚肉粥」は魚肉スープにご飯を入れた雑炊。魚肉はひきしまっており、大きな骨はあるが小骨はなく食べやすい。魚肉の甘みを引き立てるあっさりした味付けで、そのままでも、ワサビ醤油をつけても美味。豚肉のそぼろをのせた魯肉飯とスープを合わせていただくのもおすすめ。
嘉義市西区博愛路二段13号17:30-10:30、日曜定休
bit.ly/3yqMU4V
※臨時休業はFacebookページで告知
黄記涼麺涼圓
嘉義に来たら、この土地独特の和え麺「嘉義涼麺」もぜひ味わってみたい。「黄記」はカフェ風のお洒落なお店で涼麺がいただける人気食堂。
平打ちの中太麺の上にキュウリの細切りをのせ、マヨネーズベースの白いたれ、胡麻だれ、醤油だれ、おろしニンニクをかけると出来上がり。よくかき混ぜてから食べると、甘じょっぱいたれの組み合わせは意外とクセになる美味しさだ。ラー油や半熟卵を合わせても美味。
嘉義市東区興中街6号9:00-18:00、月曜定休
facebook.com/Huang.cold.noodles.inchiayi
袁家筒仔米糕現炸排骨酥
早朝から地元民でにぎわう伝統市場「東市場」の人気店。店頭では休むことなく骨付き豚肉のから揚げ「肉骨酥(排骨酥)」を揚げており、店周辺に香ばしい匂いが漂っている。
肉骨酥と大根を入れたスープ「肉骨酥湯」は店の看板メニューだ。高く積み上げられた蒸籠で蒸されているのは、金属の筒にもち米、豚肉、シイタケなどを詰めたおこわ。豚肉のうまみを吸ったもち米は格別の美味しさだ。豚の骨髄を使った「龍骨髄湯」など珍しいスープもある。
嘉義市東区忠孝路光彩街東市場飲食区16号6:00-14:00、火曜定休
北回水晶餃
創業30年の老舗。「水晶餃」は、でんぷんの皮で豚肉とシャクシャクとした食感のマメ科の野菜「豆薯(ヒカマ)」を包んで蒸しあげたもので、透明な餃子のような見た目をしている。餡は甘めの味付けで、そのまま食べても十分美味しい。テイクアウト専門だが、毎日行列が絶えず2000個を売り上げるという。確実に購入するには前日に電話予約がおすすめ。
嘉義市東区忠孝路166号05-225-1387
9:00-18:00、日曜定休
※前日に電話予約可、売り切れ次第終了
嘉義のあまいもの
正老牌北興榕樹下粉條冰
たっぷり具だくさんのかき氷が楽しめる昔ながらの素朴な店。看板メニューの「綜合冰」は、タロイモや愛玉ゼリー、仙草ゼリー、うどんのような麺状のタピオカ「粉條」、わらび餅のような「黒糖粉粿」など多彩なトッピングから6種類選んでかき氷に加えることができる。
嘉義市東区忠孝路391号8:30-18:00
阿娥豆花
創業60年ほどになるという豆腐プリン「豆花」の専門店。滑らかな食感の豆花は、シロップの代わりに豆乳を加えているのが特徴で、大豆の香りと甘みをあますところなく味わえる逸品だ。トッピングは煮込んだ花生(落花生)、紅豆(小豆)、緑豆、薏仁(ハト麦)、珍珠(タピオカ)から選べる。
嘉義市東区延平街(文化路夜市わき)14:30-23:30、火曜定休(祝日の場合は翌日休業)
碳焼杏仁茶
90年近くにわたり嘉義人に愛されている人気店。南門ロータリー東側の路上で炭の入った七輪で杏仁茶を温めるオーナーの周りには、朝早くから大勢のファンが詰めかける。熱々の杏仁茶に油條(揚げパン)を浸しながら食べるのが、嘉義ならではの朝食風景だ。常連客にならって、甘い杏仁茶に生の卵黄を加え、まろやかな卵の香りを楽しむのもおすすめ。
嘉義市東区民族路191号5:30-10:00、売り切れ次第終了
源興御香屋
いま嘉義で最も人気のあるドリンクスタンド。凍頂烏龍茶に屏東県産のレモンを合わせた「凍頂檸檬」や、緑茶にパッションフルーツとオレンジを合わせた「香橙百香緑茶」など、フルーティーなティードリンクが人気。
嘉義市西区中山路321号10:00-20:00、土曜・日曜10:00-21:00、月曜・火曜定休
嘉義の個性派カフェ
玖Café
駅前の繁華街から約3㎞の郊外にあるカフェ。古い民家を改造した店舗は正面の壁一面がガラス張りで温室のよう。白い壁の店内は天井の梁と木製のインテリアが山小屋のような雰囲気を生み出し、ふんだんに置かれた観葉植物が空間に潤いを添えている。
おすすめは豆と抽出方法が選べるスペシャリティコーヒー。なかでもビールのようにサーバーで注ぐ「玖咖啡」は、冷水で抽出したコーヒーに窒素ガスを加えたナイトロコールドブリューコーヒーで、クリーミーな泡とまろやかな口当たりが楽しめる。コーヒー好きな人におすすめのカフェだ。
嘉義市東区興業東路387号05-216-2626
13:00-22:00、木曜定休
ミニマムチャージ:1人ドリンク1杯、コンセント利用:1回NT$20
facebook.com/jioucafe
蕨醒咖啡
文化路夜市ちかくの路地にたつ小さなカフェ。店名の「蕨」の字は、店頭や店内を飾るシダ植物に由来する。ガラス張りの店舗正面から柔らかい日差しが室内に差し込むと、白を基調としたインテリアに大きさも形もさまざまなシダ植物の緑が映え、リラックスした居心地の良い雰囲気を作り出す。
デザートの提供は午前10時から。散策の途中に立ち寄り、コーヒーとワッフルを味わいながら、ゆっくりとしたひとときを過ごしたい。朝食やランチには特製サンドイッチがおすすめ。
嘉義市西区忠義街138号05-225-8191
8:30-18:00
ミニマムチャージ:1人ドリンク1杯
facebook.com/FernsCoffee.138
嘉義のおみやげ
神木羊羹
「新台湾餅舖」は嘉義市のランドマーク「中央噴水池」前に位置する菓子店。前身は1901年(明治34年)に日本人が開いた和菓子店で、戦後に台湾人の弟子が店名を改め店を引き継いだ。「神木羊羹」は1980年に日本の和菓子職人に指導を受けて誕生した看板商品。ギフトボックスは小豆、梅、栗、ジャスミン茶、黒糖の5種類の詰め合わせ。なめらかな食感とほどよい甘さの羊羹は、高級感のある化粧箱入りで大切な方への贈り物に最適。常温保存4か月。
桃仔尾酥皮餅
「新台湾餅舖」の人気パイ饅頭の詰め合わせ。8個入りのギフトボックスは、杏仁餡入りの「水晶杏仁」、緑豆餡の「緑豆沙」、緑豆餡で豚肉の煮込みを包んだ「滷肉豆沙」、冬瓜と豚肉の煮込み入りの「冬瓜肉餅」の4種が楽しめる。常温保存2週間。
新台湾餅舖
嘉義市西区中山路294号
8:30-21:30
newtaiwan-bakery.com.tw
阿里山烏龍茶・穀雨烏龍
「一茶工房」は、「あなたが飲むお茶は、私たちが自ら育てたお茶」という姿勢を貫く茶葉店。人気の「穀雨烏龍」は阿里山の自家茶園で手摘みした茶葉を使った半発酵の烏龍茶。水色は透き通った黄金色で、一口飲むと華やかな香りと春風のような爽やかな甘みが口の中に広がる。缶入りのほか、袋詰め、ティーバッグタイプもあり。
一茶工房 嘉義垂楊本店
嘉義市西区垂楊路563号
11:00-21:00
theonetea.com
嘉義のホテル
嘉楠風華酒店 Orient Luxury Hotel
ホテル併設の「奇幻魔法堡」は、台湾初となる独立棟のファミリー向けプレイスペース。館内でひときわ人気を集める二階建ての高さを誇る滑り台は、職人の手による打ち出し板金を用いて作られたステンレス製。
ホテル外観は重厚感あるデザイン。館内は大きなガラス窓や木材を配し、モダンなインテリアにナチュラルな雰囲気を添えている。
屋上階のインフィニティプールを備えたバー「IRON WIND BAR」では、空と一体となったような270度の眺望が楽しめる。台湾鉄道嘉義駅まで車で6分と、観光スポットへのアクセスも抜群だ。
嘉義市西区四維路232号05-233-0000
chiananwind.com.tw
楽億皇家渡假酒店 Lookroyal Resort
レモンイエローを基調とした外観が爽やかな、「都市・花園・幸福」をテーマとする都会のリゾートホテル。リゾート感あふれる屋外プール、キッズプレイルーム、ミニサーキットなどの施設のほか、会議室やビジネスセンターも完備。
シックなインテリアの客室は、計214室のスタンダードルームとデラックスルームのほか、スイートルーム6室、ファミリールーム18室、バリアフリールーム3室など、多彩なバリエーションが揃う。
スタッフのきめ細やかなサービスも心地よく、ゆったりした休日が楽しめる。観光にもビジネスにも最適のホテルだ。
嘉義市西区玉山路501号05-283-0099
www.lookroyal.com
一足のばして行きたい観光スポット
嘉義 木都の旅 マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。