多良 ・ 金崙 ~台湾鉄道 途中下車の旅~

企画構成/高田雅子 文/高田雅子 写真/陳正国・季子弘

多良 ・ 金崙 ~台湾鉄道 途中下車の旅~

 

南廻線

台湾鉄道南迴線は、屏東県枋寮駅から台東県台東駅までを結ぶ路線。沿線は海に面した区間が多く、南国らしい風景が旅の気分を盛り上げる。2020年末に全線電化開業を迎え、高雄―台東間の所要時間が30分ほど短縮された。

多良 ・ 金崙 ~台湾鉄道 途中下車の旅~

台湾鉄道
www.railway.gov.tw/tw

 

 

多良駅

「台湾で最も美しい駅」と青い海

台東県太麻郷の台湾鉄道南廻線・多良駅は「台湾で最も美しい駅」として知られる。太平洋の抜けるように青い海と空の風景、鉄道を同時にカメラに収められる人気観光スポットだ。

多良 ・ 金崙 ~台湾鉄道 途中下車の旅~ 多良駅

多良駅

1.台東バスターミナルまたは台湾鉄道金崙駅から鼎東客運バス山線(大武・安朔線)で「多良」下車、徒歩で各スポットへ
2.台湾鉄道台東駅または金崙駅からタクシー、レンタルバイク等で各スポットへ
※バスは本数が少ないためチャータータクシー利用をおすすめ

鼎東客運バス
www.ddb333443.com

 

多良観光駅

多良観光駅

多良駅は2006年に旅客駅としての役目を終え、現在は観光列車が停車する観光駅となっており、駅舎屋上の展望台から海と山に挟まれた鉄道の景色を一望できる。駅前の屋台街ではフルーツを使ったドリンクや地元の台湾原住民族が作る郷土料理も楽しめる。

多良観光駅

多良観光駅

多良観光駅

多良観光駅
台東県太麻里郷瀧渓路8-1号
7:00-18:00
清潔費NT$10

 

向陽薪傳木工坊

向陽薪傳木工坊

多良観光駅から坂道を130mほど上ったところに位置する、多良小学校の旧校舎を利用した木工工房。行政院農業委員会(日本の農林水産省に相当)林務局と公益団体、民間人の官民協力による地方創生プロジェクトとして設立され、地元集落の人々の木工技能習得と人材育成を支援している。

向陽薪傳木工坊

向陽薪傳木工坊

台湾国産の木材や漂流木を使用した家具やインテリア小物を製作・販売するほか、軽食やドリンクも提供しており、海の絶景が楽しめるカフェとしても人気。

向陽薪傳木工坊

台東県太麻里郷多良村2鄰15号
9:00-16:30、火曜-木曜定休(祝日は営業)
ミニマムチャージ:イートインは1人NT$100
facebook.com/sunrise.88.2010

 

 

金崙駅

南廻線の小さな町のスローライフ

金崙駅

台東県太麻里郷の金崙は台湾原住民排湾族(パイワン族)が多く暮らす集落。美しい太平洋の海に面した金崙は温泉の町としても知られている。主要な観光スポットは金崙駅前の徒歩圏内に集中しており、パイワン族の文化を感じながらゆったりと暮らすように滞在できる小さな町だ。

金崙駅に停車中の南廻線観光列車「藍皮解憂号」

金崙駅に停車中の南廻線観光列車「藍皮解憂号」

金崙駅MAP

金崙駅MAP

台湾鉄道金崙駅から徒歩またはレンタルバイクで各スポットへ
※タクシー利用の場合は現地の商店・宿泊施設等に問い合わせ

 

金崙海灘

金崙海灘

金崙海灘は日の出観賞スポットとしても有名

金崙駅に降り立つと、駅ホームの向こうは海。駅前の路地を左に入り、突き当りを左に曲がると徒歩3分ほどでホーム下に位置するトンネル「金崙隧道」に到着する。ここはトンネル奥に輝く青い海と、時おり通過していく列車の詩情あふれる風景がカメラに収められる人気スポット。

金崙隧道は人気の鉄道写真スポット 金崙

金崙隧道は人気の鉄道写真スポット

トンネルを抜けた先は、青い海と空の絶景が広がるビーチ「金崙海灘」だ。ビーチからは2017年に開通した「台湾で最も美しい高架橋」と呼ばれる台9線道路の「金崙大橋」の全景も観賞できる。黒くて丸い石と灰色の砂のビーチに立つと、濃い紺色とコバルトブルーの海と青空に包み込まれるよう。波と風の音を聞きながら、心の底からリラックスした時間を過ごそう。

インスタレーション作品「方圓之間」

インスタレーション作品「方圓之間」

海岸線の高架橋・金崙大橋 金崙

海岸線の高架橋・金崙大橋

台東県太麻里郷金崙村

 

金崙聖若瑟天主堂

金崙聖若瑟天主堂 金崙

黒い壁と深緑の屋根が印象的なカトリック教会の聖堂。建物正面に掲げられた熊鷹の羽と猪の牙を組み合わせた装飾は、パイワン族の頭目の頭飾りを表している。

金崙聖若瑟天主堂 金崙

建物全体も、門の彫刻、ステンドグラス、壁画、聖人像の衣装にいたるまでパイワン族の文化が色濃く反映されており、キリスト教が布教にあたり現地の文化、習慣、風俗を取り入れたことがよくわかり興味深い。

内部は見学可能だが、祈りの場なので訪問時は信者の活動の妨げにならないよう、静かにマナーに気を配りながら見学しよう。

金崙聖若瑟天主堂 パイワン族の伝統衣装をまとった聖母マリア

パイワン族の伝統衣装をまとった聖母マリア

祭壇や壁の彫刻にもパイワン族の伝統的な文様が描かれている 金崙

祭壇や壁の彫刻にもパイワン族の伝統的な文様が描かれている

台東県太麻里郷金崙村8鄰354号
7:00-20:30、土曜7:00-21:30、日曜8:00-24:30、月曜休館
入館無料
※参観時は正面右側門から入場し、靴を脱いで室内へ

 

太平洋鹹水温泉

太平洋鹹水温泉 浴槽の岩石は温泉水に晒され赤茶色に染まっている 金崙

浴槽の岩石は温泉水に晒され赤茶色に染まっている

金崙駅から徒歩6分の日帰り温泉。泉質は海水のように塩辛く鉄分の味がする炭酸水素塩泉で、源泉からくみ出したお湯は最初は透明だが、空気に触れると徐々に赤茶色に変色する。

滑らかな肌触りの身体がよく温まる良泉だ。敷地内にはカラオケやバーベキューの施設もあり、常連客が弁当や食材を持ち込んで1日中和気あいあいと過ごしている。スローな田舎の空気が満喫できる温泉だ。

太平洋鹹水温泉

赤茶色に変化した温泉水

太平洋鹹水温泉 金崙

台東県太麻里郷金崙村227号
089-771-865
9:00-18:00
NT$200
※要水着・水泳帽着用、タオル持参
※荷物はかごに入れて自己管理

 

大武山生態教育館

大武山生態教育館 金崙

「大武山自然保留区」は、中央山脈の南端・海抜3090mの大武山の麓に広がる、面積4万7000haの自然保護区。「大武山生態教育館」の1階では、エリア内に居住するパイワン族とルカイ族の文化について、衣装や生活用品を用いて紹介している。

大武山生態教育館

1階ではパイワン族とルカイ族の文化を紹介

2階は大武山の森林の様子を再現したコーナーで、豊富な標本や写真を通して大武山の自然環境や生態について学ぶことができる。週末は敷地内に設置された足湯で金崙温泉の湯を楽しむこともできる。家族連れに最適のスポットだ。

大武山生態教育館

2階では大武山の森林の生態を紹介

大武山生態教育館 金崙温泉の湯が楽しめる足湯

金崙温泉の湯が楽しめる足湯

台東県太麻里郷金崙村温泉35-2号
089-771-912
教育館9:00-17:00、月曜・火曜休館(足湯は土曜・日曜9:00-16:30)
入館無料
bit.ly/3rrGvEf
台湾鉄道金崙駅から鼎東客運バス山線(大武・安朔線)8138で「金崙温泉」下車

 

金崙温泉虹橋

金崙温泉虹橋 金崙

山の緑に映える赤いアーチ橋は、金崙渓下流に位置する金崙温泉のランドマーク。橋の上からは太平洋まで一望できる。河原には温泉が湧き出しており、かつてはパイワン族の人々が天然の露天風呂として愛用していた。

金崙温泉は金崙渓に湧出する渓谷型の温泉で、源泉の温度は70度から90度、無色透明の弱アルカリ炭酸泉。お湯は無色透明でとろみがあり、ほのかに硫黄の匂いが感じられる。浸かると肌がすべすべになることから、「美人湯」として知られている。

金崙渓の野湯 金崙

金崙渓の野湯

現在も河原を掘ったり石を積んで囲ったりしてお湯をためて野湯を楽しむ人の姿を見ることができる。近隣の温泉施設で日帰り入浴も可能なので、立ち寄ってみるのもいいだろう。

台東県太麻里郷金崙村金崙渓
台湾鉄道金崙駅から鼎東客運バス山線(大武・安朔線)8138で「金崙温泉」下車

 

嘎努食堂

嘎努食堂 金崙

店名の「嘎努(Ganu)」はパイワン族の言葉で「食事する」をという意味。おすすめは、金崙地区をはじめとした台東産の食材を生かした名物料理。「斯曼寧生鮮」は、現地で「斯曼寧」と呼ばれるボウズハゼの稚魚の刺身。海から金崙渓に遡上してくる稚魚を伝統的な三角形の網で捕獲した、金崙ならではの味だ。ワサビ醤油をたらし稚魚を盛りつけた玉ネギのお皿ごといただこう。

赤みを帯びた半透明のボウズハゼの稚魚

赤みを帯びた半透明のボウズハゼの稚魚

「放山鶏」は山で放し飼いにした鶏の丸焼き。「炸飛機」は春菊に似た香りとほろ苦さを持つ野草「昭和菊(ベニバナボロギク)」の天ぷら。「刺蔥蛋」は台湾原住民族がよく利用する「刺蔥(烏山椒)」の葉入りの卵焼き。夏なら4月ごろから咲き始める金針花のつぼみと豚肉の炒め物「鮮炒金針花」もぜひ味わいたい。

右上から時計回りで放山鶏、刺蔥蛋、炸飛機、鮮炒金針花、斯曼寧生鮮

右上から時計回りで放山鶏、刺蔥蛋、炸飛機、鮮炒金針花、斯曼寧生鮮

嘎努食堂

台東県太麻里郷金崙村403号
0981-853-912
11:00-14:00、17:30-21:00、水曜定休
bit.ly/3uLqFX8
※ボウズハゼの稚魚の漁の最盛期は5月から9月ごろで、漁獲状況により提供のない日もあり
※金針花の最盛期は8月から10月
※鶏の丸焼きは前日までに要電話予約

 

LI.KA CAFE 力卡珈琲

LI.KA CAFE 力卡珈琲 金崙

金崙隧道のすぐそばに位置する人気カフェ。パイワン族の郷土料理のエッセンスを取り入れた自家製スイーツやパンを提供している。一番人気は自家栽培の落花生を散らした黒糖風味のシナモンロール「虎比肉桂捲」。

小米(アワ)、刺蔥(烏山椒)、紅烏龍茶を練り込んだパウンドケーキ「部落磅蛋糕」、刺蔥入りの塩パン「海鹽可頌」やメロンパン「刺蔥菠蘿」、ベーグル「部落貝果」などもおすすめ。

山椒に似たスパイス「馬告」または「刺蔥」のパウダーを散らしたラテ「拿鉄」、ローゼル紅茶「洛神花紅茶」など、ドリンクメニューも豊富。

左上から時計回り:洛神貝果、海鹽可頌、刺蔥菠蘿、小米磅蛋糕、刺蔥磅蛋糕、紅烏龍磅蛋糕、虎比肉桂捲

左上から時計回りで洛神貝果、海鹽可頌、刺蔥菠蘿、小米磅蛋糕、刺蔥磅蛋糕、紅烏龍磅蛋糕、虎比肉桂捲

LI.KA CAFE 力卡珈琲 金崙

台東県太麻里郷金崙村210号
089-772-056
10:00-20:00、月曜10:00-16:00、火曜定休
ミニマムチャージ:1人ドリンク1杯
facebook.com/inLi.kaCafe
※環境保護のためテイクアウトは使い捨て容器の提供なし

 

打個蛋海旅 Dagedan House B&B

打個蛋海旅 Dagedan House B&B 金崙

金崙駅から徒歩2分の民宿。幼いころに金崙を離れて育ったオーナーのSamさんは、35歳の時に初めて集落のアワの収穫祭に参加した際に自らのルーツを強く自覚。台北で十数年従事したホテル業の仕事を辞職し故郷に戻り、民宿を立ち上げた。民宿名の「Dagedan」は、パイワン族の言葉で「眠る」という意味があり、台東旅行でゆっくりと休み、リラックスしてほしいというオーナーの思いが込められている。

打個蛋海旅 Dagedan House B&B 金崙

打個蛋海旅 Dagedan House B&B 金崙

客室はダブルルームで、北欧スタイルのインテリア。食事は民宿が経営しているカフェ「力卡珈琲」でいただく。チェックイン時のアフタヌーンティーは郷土風味たっぷりのスイーツとドリンクのセット。台湾原住民族に伝わる月桃の葉で編んだ籠入りで、台東の文化体験を兼ねている。

打個蛋海旅 Dagedan House B&B 金崙

アフタヌーンティー

夕食はアワを使った粽「排湾小米粽」や白米と青菜のお粥「山地揺揺飯」など、季節の食材を使ったパイワン族の郷土料理。朝食は自家製トーストと地元産野菜とフルーツの盛り合わせ。フルーツに振りかけられた馬告パウダーがスパイシーなアクセントになっている。民宿の庭に座って波の音に耳を傾けたり、早朝に歩いてビーチに出て日の出を観賞したりと、スローライフを体感できる魅力的な民宿だ。

夕食とアワ酒 打個蛋海旅 金崙

夕食とアワ酒

朝食 打個蛋海旅 金崙

朝食

台東県太麻里郷金崙村四鄰129号
089-771-551
dagedanhouse.wixsite.com/dagedan
※環境保護のため歯ブラシ・髭剃りなどの使い捨てアメニティの提供なし
※12歳以下の児童の受け入れなし
※1泊3食プランは2022年の特別プラン(7・8月と連休を除く)

 

 

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