花東縦谷 3泊4日 自然と文化に出逢う旅
文/高田雅子 写真/宋育玫
花東縦谷
花蓮から台東にかけて南北に細長くのびる平野を、「花東縦谷」と呼ぶ。東の海岸山脈と西の中央山脈にはさまれており、山脈と平野部の高低差は2000メートルにもおよぶ。自然環境に恵まれているため農業が盛んで、池上米や蜜香紅茶、コーヒーなど、全国に名を知られる農作物も多い。
花蓮から台東にかけては、阿美(アミ)族や太魯閣(タロコ)族をはじめとする多くの台湾原住民族が暮らしており、豊かな台湾原住民族文化に出会うこともできる。北から南まで花東縦谷を巡る旅で、ゆったりと大自然の魅力にふれて、心を解放しよう!
台湾鉄道台北駅から花蓮駅は特急プユマ号やタロコ号の利用がおすすめ花蓮駅からはチャーター(貸切タクシー)利用が便利
台湾鉄道 www.railway.gov.tw/jp
目次
DAY1
花蓮の玄関口・世界的景勝地太魯閣へ!
達基力風味餐庁
朝、台湾鉄道台北駅を出発した特急プユマ号が花蓮駅に到着すると、そろそろお昼。まずは郷土料理のランチから花蓮の旅をスタートしよう。「達基力風味餐庁」は、台湾原住民の太魯閣(タロコ)族が営むレストラン。地鶏の燻製、白身魚の塩釜焼き、山菜炒め、竹筒飯など、太魯閣族に伝わる郷土料理を味わうことができる。
おいしい食事の後には、太魯閣族の文化にふれてみよう。店内では太魯閣族伝統の機織りの実演販売も行われている。布に織り込まれた文様はどれもシンプルだが細やかな色使いが美しい。なかでも太魯閣族を代表する菱形の文様には祖霊の目を表し、祖先がいつも祝福し見守ってくれているという意味が込められている。
達基力風味餐庁
花蓮県秀林郷崇徳村96号
+886-3-862-1033
11:30-15:00、要予約(夜は3テーブル以上の予約があったときのみ営業)
www.dajili.tw/index.php
太魯閣国家公園
太魯閣(タロコ)国家公園半日観光で最初に訪れた「清水断崖」は、台湾十景の一つに数えられている景勝地。太平洋沿いに連なる2000メートル級の山々が90度近くの急角度で海に沈み込む断崖は、瞬きも忘れるほど荘厳な絶景だ。
続いて訪れた太魯閣渓谷は、立霧渓の河流が大理石の岩盤を侵食して作り上げた深い渓谷で、世界的にも有名な観光地。上流の燕子口遊歩道では、太魯閣渓谷を代表する大理石の渓谷を眺めながら散策を楽しむことができる。沿路には、渓流に人の顔のように削られた奇岩「インディアンの酋長石」や、立霧渓が稜線をV字にえぐって形成された「錐麓断崖」など、息をのむ絶景が広がる。
太魯閣国家公園
花蓮県秀林郷富世村富世291号(管理処)
+886-3-862-1100#6
8:30-17:00
太魯閣渓谷おすすめホテル
太魯閣晶英酒Silks Place Taroko
「太魯閣晶英酒店」は、太魯閣渓谷天祥エリアにたたずむ5つ星ホテル。ラグジュアリーな空間から、ホテルを取り囲む大自然の壮大な風景を堪能できる。太魯閣渓谷ガイドツアーや屋上プール、夜の台湾原住民族のショーなど極上アクティビティも豊富。スケジュールに余裕があれば、ぜひ泊まってみたい美しいホテルだ。
太魯閣晶英酒店 Silks Place Taroko
花蓮県秀林郷天祥路18号
+886-3-869-1155
www.silksplace-taroko.com.tw/
東大門夜市
花蓮市での夕食には、花蓮最大の夜市「東大門夜市」に行ってみよう。2015年に誕生した広大な敷地に、元自強夜市の味と原住民の味が楽しめる「原住民一條街」、元彩虹夜市の味が集まる「福町夜市」、中国大陸の味を揃えた「大陸各省一條街」のエリアがあり、たくさんのブースが集まっている。ぜひ、花蓮ならではの味を味わいたい。
「馬告炒麺刈包」は、台湾原住民がよく料理に使う胡椒に似た調味料「馬告(マカオ)」が独特なアクセントになっている台湾版焼きそばパン。「喜饒葱餅」は、葱がたっぷり詰まった揚げパイ風の「葱餅」に、伝統的な原住民料理の豚の塩焼き「喜饒」を組み合わせたオリジナル。最後はおしゃれな海鮮バーの海鮮バーベキューで乾杯して1日を締めくくろう!
東大門夜市
花蓮県花蓮市中山路50号
汰泥粑楽放 馬告炒麺刈包
東大門夜市原住民一條街
17:00-23:00
噶烏剌汗 喜饒葱餅
東大門夜市原住民一條街
17:00-22:00、木曜定休
高大俠海鮮焼烤 Bar
東大門夜市原住民一條街
17:30-24:00
DAY2
花東縦谷中部で水陸アクティビティを満喫!
鯉魚潭
鯉魚潭は、花東縦谷北部の花蓮県寿豊郷にある湖。面積は約100ヘクタールで、南北に細長い形をしている東台湾最大の内陸湖だ。ここでは、ハワイ発祥の水上アクティビティ「スタンドアップパドルボード SUP(サップ)」に挑戦してみよう。
サップはサーフボードより一回り大きなボードの上に立ち、パドルを使って水上散歩や波乗りが楽しめるスポーツ。インストラクターと一緒に、初心者でも気軽に体験できる。水上から見渡す周囲の風景も最高だ。
鯉魚潭
花蓮県寿豊郷池南村環潭北路100号(ビジターセンター)
+886-3-864-1691
8:30-17:30
Andy美崙湾sup倶楽部
+886-928-757-146
要予約/中国語・英語・日本語での対応可
www.facebook.com/andyiplay/
花蓮観光糖廠
花蓮県光復郷にある花蓮観光糖廠は、もとは日本時代の1921年に建設された旧上大和製糖工場跡。工場外壁の一部には第二次世界大戦中の空襲で受けた銃弾の跡が残る歴史建築だ。現在は観光工場として花蓮の人気観光スポットとなっている。敷地内に立ち並ぶ日本家屋の旧職員宿舎も、宿泊施設やカフェレストラン、ギャラリーにリノベーションされ注目を集めている。
事前に有料ガイドツアーを予約すると、通常は非公開の工場内部の見学や、サトウキビを搾って黒糖を作る製糖DIYも体験できる。見学後は、売店の名物アイスキャンディーもお忘れなく!
花蓮観光糖廠
花蓮県光復郷糖場街19号
+886-3-870-4125内線200
8:00-20:00
www.hualiensugar.com.tw/
大農富平地森林園区
花蓮観光糖廠そばに位置するロハスな森林公園。東京ドーム約266個分、1250ヘクタールの広大な園区は、「低炭素・低密度・低開発」の三原則に則り造林されている。森林には多彩な鳥類、昆虫、爬虫類などが生息しており、生態観察が楽しめる。そのほか、花畑、自転車道、自然歩道など、見どころも多数。園内の緑に溶け込むように設置されているインスタレーションもSNSの人気撮影スポットとなっている。
大農富平地森林園区
花蓮県光復郷農場路31号
8:00-17:00、月曜休館(夏休み・冬休みを除く)
www.facebook.com/MASADIFOREST/
撞牆水餃
茶どころとして知られる花蓮県瑞穂郷の林の中にひっそり佇む隠れ家レストラン。メニューは人数によってお任せで、台湾人のご主人とベトナム人の奥様が腕を振るう創作料理が評判だ。
店名にもなっているニラの水餃子「撞牆水餃」は、生唐辛子入りのたれをかけていただく。豚焼肉とレタスのベトナム風サラダ「萬壽無疆」は、ピーナッツやパクチーの香りと程よい酸味が食欲をそそる。
撞牆水餃
花蓮県瑞穗郷舞鶴村9鄰211-1号
+886-3-887-1378
要予約(食事時間は予約時に確認)
www.facebook.com/pg/SauBaDing/photos/?ref=page_internal
Ba han han non 好茶咖啡工作室
花蓮県瑞穂郷で良質な茶葉やコーヒーを生産していることで有名な「吉林茶園」の4代目社長が新たにオープンした製茶工場兼カフェ。店名の「Ba han han non」は、阿美族の言葉で「ゆっくりしよう」という意味だそう。
カフェでは、茶園で作った 蜜香紅茶、柚花茶、迦納納コーヒー、客家酸柑茶玉(柑橘類のお茶)などを味わえる。かわいい2匹の看板猫も出迎えてくれる居心地のいい空間で、ゆったりティータイムを楽しみたい。
Ba han han non好茶咖啡工作室
花蓮県瑞穗郷中正南路二段74-4号
+886-3-887-2989
金曜-日曜10:00-20:30
www.facebook.com/bahanhannon/
DAY3
花東縦谷南部で大地の鼓動を感じる!
東豐拾穗農場
花東縦谷は清らかな大地と水、温暖な気候に恵まれ、農業が盛ん。玉里の東豊拾穗農場は、主に有機栽培で文旦や米などの農作物を生産している農場。台湾でほとんど生産されなくなった小麦栽培技術の保存にも力を入れており、観光客に向けて収穫した有機小麦を使用した有機ビール醸造DIY体験も提供している。
体験教室は、あらかじめ用意されている材料を使い、講師の先生がサポートしてくれるので初めての作業でも安心だ。加熱中の待ち時間には、プロが作った有機ビールの試飲も楽しめる。
DIY体験教室のあとは、田園料理を堪能したい。農場自慢の有機米や文旦などの地産の農作物をふんだんに使った料理は、食材そのもののうま味が引き立つ。美しい稲田の真ん中で滋味豊かな料理をいただいていると、体の奥から力がわいてくる。
東豊拾穗農場
花蓮県玉里鎮東豊里棣芬71-3号
+886-3-888-0181
www.facebook.com/dongfon/
有機ビール醸造DIY体験は要予約(中国語のみ)。2人1組、最少催行人数8人4組。費用は1組NT$1600(NT$800/人)。田園料理については別途問合せ。
台湾に住所が無い外国人は、1か月後に完成する自作の完成品を受け取れないため、1か月以上前に希望日の体験教室開催の有無を問い合わせ、予約可の場合は農場作成の当日持ち帰り用の完成品の準備が可能か相談すること。
玉富自行車道
「玉富自行車道」は、台湾鉄道玉里駅そばから東里旧駅まで続く全長約10キロの自転車道。1989年まで玉里駅から安東駅(現在は廃止)を結んでいた旧鉄道跡を利用しており、沿路には美しい田園風景が広がる。
最大の見所は、「秀姑巒大橋」上に設けられたユーラシアプレートとフィリピン海プレートの境界線。二つのプレートをまたぐ自転車道は世界でもここだけという珍しいスポットだ。境界をまたいで立つと、台湾東部に急峻な山脈を形成しているプレートの力を身近に感じられるだろう。
自転車道終点の「東里鉄馬驛站」は、東里旧駅のホームや駅舎を再利用したサイクリングステーション。ホームには自転車のオブジェが置かれ、風景に詩情を添えている。ホームを囲む稲田は、春夏には緑の絨毯に変わり、初夏と晩秋には黄金色に染まる。
玉富自行車道
花蓮県玉里鎮
レンタサイクル平日NT$200/日前後、休日NT$300/日前後。詳細は駅前の各レンタサイクル店で確認のこと。
東里鉄馬驛站
花蓮県富里郷東里村大荘38号
+886-3-886-1090
24時間
最も人気があるシーズンは、稲田が黄金色に染まる5月下旬から6月と10月下旬から12月にかけて。
一足のばして台東へ!
鉄花村音楽聚落
夜はぜひ、さらに南へ足をのばして台東へでかけよう。台東市中心部の「鉄花村音楽聚落」は、台東のミュージシャンやアーティストが集まる文化施設。旧台東駅跡を利用した敷地内には旧宿舎を利用したライブハウスやカフェがならび、市場では地元の芸術家オリジナルの雑貨や作品が売られている。
夜は数え切れないくらいのランタンの明かりで照らされて、とてもロマンチック。ストリートミュージシャンの歌声を聞きながら、個性的な人々が集う市場を歩いていると、台東の人たちのゆったりしたライフスタイルや、音楽や芸術への深い愛情を感じることができるだろう。
鉄花村の隣でひときわ目をひくコンテナショップ「台東県原住民文化創意産業聚落」は、リサイクルコンテナを組み合わせた節電型のエコ建築。台東の山海の風景をモチーフとした曲線を描く外観と、洗練された空間デザインで、2017年に正式オープンするや、瞬く間にSNSで人気の撮影スポットとなった。
地上4階までのスペースに、台東ならではのお土産や、現地のアーティストの作品、カフェ、バーなどが集まっており、宝探し気分でショップめぐりが楽しめる。夜の台東を満喫するのにぴったりの場所だ。
鐵花村音樂聚落
台東県台東市新生路135巷26号
+886-8-934-3393
ライブ:水曜-土曜20:00-22:00、日曜19:30-21:00
ショップ:水曜-日曜16:00-22:00
週末市場:金曜18:00-22:00、土曜・日曜17:00-22:00
www.facebook.com/tiehua/
台東県原住民文化創意産業聚落商品展售区(コンテナショップ)
台東県台東市新生路105号
10:00-23:00ごろ(各店舗による)
猛爸爸合菜
夏の熱気球で有名な台東県鹿野高台そばにある山小屋風レストラン。経験豊かな料理人が作り出す、地元産食材の味を生かした料理を提供している。
おすすめは、地鶏や猪肉などの山の幸。地元の山で放し飼いされて育った地鶏「鹿野放山鶏」は、弾力のある肉を噛むごとに豊かなうまみが口の中に広がる。「沙茶山猪肉」は、魚介で作られたバーベキューソース沙茶醤で炒めた猪肉。ピリ辛味が猪肉の甘味とよく合う。
海鮮類も、車でわずか1時間足らずの太平洋に面した富岡漁港から仕入れているので、新鮮さは折り紙つき。「清蒸鮮魚」は、季節の鮮魚の蒸し物。柔らかな身の白身魚を醤油たれが引き立て、ご飯が進む一品だ。
猛爸爸合菜
台東県鹿野郷永樂路225号
+886-8-955-2256
http://0963118263.ego.tw/
DAY4
花蓮の里山の美と最新スポットを訪ねる
吉哈拉艾文化景観区
花蓮県富里郷の山間部に位置する「吉拉米代部落」には、稲作を主とした農業を営む台湾原住民阿美(アミ)族が暮らしている。部落では持続可能な発展を目指し、生態系を守りながらエコ栽培米「哈拉米」を生産。里山ガイドツアーや文化体験のプログラムも提供している。
これらの取り組みは世界観光機関(World Tourism Organization、UNWTO)が選出する「2016年世界グリーン旅行先トップ100(Green Destinations Top 100)」を獲得し、世界的な評価を受けている。
農業用運搬車の荷台に乗って移動するガイドツアーでは、地域の歴史や地理についての説明を聞きながら美しい棚田や渓谷をめぐる。文化体験では、集会所で阿美族が客人をもてなす踊りを習い、参加者全員で輪になって踊る。文化体験施設「一起哈拉基地」では、狩人の弓矢を体験できる。
文化体験のあとには、阿美族の伝統料理が待っている。棚田で育てた米や、山で採れた筍など、山の幸が並ぶ。優しい味わいの料理は日本人の好みにも合う。もちろん、阿美族特製の粟酒「小米酒」とも相性抜群。
吉哈拉艾文化景観
一起哈拉基地(四維分校)花蓮県富里郷豊南村四維72号
http://cilamitay.wixsite.com/cilamitay
各体験コースは半日、1日、2日など各種。詳細については公式サイトを参照のこと(中国語)
貨櫃屋星巴克(コンテナ・スターバックス)
花蓮県吉安郷の県道193号南濱路沿いにたつスターバックス洄瀾支店は、2018年9月にオープンしたばかりの新スポット。遠くからも目をひかれるユニークな外観は世界的建築家・隈研吾氏によるデザイン。29個のコンテナを組み合わせた、アジア初&世界最大のコンテナ建築のスターバックス店舗だ。
白と木目を基調としたシンプルな内装に、現地に住む台湾原住民阿美族を象徴するカラフルな壁画がアクセントとなっている。コンテナのあちこちに設けられた天窓からは柔らかな日差しがふりそそぎ、温かな雰囲気をかもし出している。
スターバックス洄瀾支店 Hualienbay
花蓮県吉安郷南濱路一段505号
+886-3-842-0014
日曜-木曜9:00-21:00、金曜・土曜9:00-22:00
美しい花東縦谷を旅しよう
美しい空気、景色、自然の中で育った滋味あふれる農作物など、出会うものひとつひとつがとても新鮮な花東縦谷。ゆったりスケジュールが組める機会があれば、ぜひ花東縦谷を旅して、現地の暮らしぶりを体験してみてほしい。きっと、新しい台湾の魅力に出逢えるだろう。
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花東縦谷 観光マップ
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