基隆 雨の都 ―港町の美食と情緒を満喫―
企画構成・文/鍾昀彤 写真/宋育玫
「雨の都」 港町の美食と情緒を満喫
台湾本島東北部に位置する基隆港は、今も昔も北部台湾の重要な玄関口だ。雨が多いことから、「雨の港」「雨の都」と呼ばれたりした。今号はこの町の最新情報とともに、穴場のスポットをご紹介する。暮らしに密着した仁愛市場、歴史ある海産市場「崁仔頂魚市」、信仰の拠り所「福徳宮」「慶安宮」を巡り、小路に隠れた個性的なカフェへとご案内しよう。港町に息づく濃厚なコーヒー文化とレトロな街の息吹を感じてみたい。
おすすめコース
一日目:仁愛市場周辺 ➡ 基隆港
二日目:崁仔頂漁市 ➡ 福德宮周辺 ➡ 慶安宮周辺 ➡ 各カフェ
目次
仁愛市場
1909 年創業の仁愛市場は、愛二路・愛三路・仁四路の交差点に位置する。日本時代は台北州基隆市公設福徳食料品小売市場と呼ばれ、二階と三階には住居スペースが並んでいたという。改築を経て1986 年10月に新たな市場が完成し、付近の様相は一変した。二階には廟口(ミャオコウ)の屋台が集結し、清潔な環境で庶民の味が楽しめるようになった。
阿嬌炒麺
各種炒め物と焼きそばが人気。新鮮な食材とともに、強火で豪快に炒める女将の手際が評判で、食事時にはすぐに満席になる。一番人気は「カレー五目焼きそば」。エビ、豚肉、レバーを麺に加え、カレー粉を振りかけ、強火で一気に炒めあげる。麺はコシがあり噛み応え十分。素材の風味とカレーの香りが食欲をそそる。
基隆市仁愛区仁四路29 号+886-2-2426-5089
9:00-19:00
徳基純手工水餃
生地から作り立てが自慢の餃子専門店。看板商品は三色の皮にカボチャ、ホウレンソウ、紅麹を使用した三宝水餃。具は皮の色別に、緑(ニラ)、赤(キャベツ)、黄(エビ)、白(キュウリ)の四種。自然食材を厳選し毎日手作りする徳基の水餃は、カラフルなうえに、食べても安心・安全だ。
基隆市仁愛区愛一路8 号+886-2-2425-5488
9:00-20:00、火曜定休
桜握寿司
手頃な価格で握り寿司、いなり寿司、刺身、味噌汁を提供している。独自の握りのスタイルは、まず寿司飯を握ってから、スライスした魚にワサビを塗って載せるところ。甘い醤油タレが厚切りのネタの旨味を引き立ててくれる。味噌汁は具沢山が自慢だ。
基隆市仁愛区愛三路21 号10:00-14:00、日曜・月曜定休
仁愛刨冰果汁店
夏はフレッシュジュース、カットフルーツ、かき氷、フルーツアイスと多彩な冷たいスイーツを提供するが、冬は温かく甘いお汁粉がメインとなる。あずき汁粉とピーナッツ汁粉がベースで、これにゴマ白玉、タロイモ白玉、サツマイモ白玉、タロイモ、抹茶白玉、紫米白玉といった具を組み合わせる。冬場の基隆は冷たい雨が降る。ぜひあったかいお汁粉で心から温まりたい。
基隆市仁愛区仁四路31 号2 階+886-2-2424-2079
11:00-19:00、月曜・火曜定休
連珍餅店
地元の老舖だが、近年は積極的に新商品を開発するとともに、ネット販売にも力を入れている。一番人気はタロイモシリーズ。「連珍タロイモボール」は台中大甲産タロイモを厳選し、フレッシュミルクと少しの砂糖を加え作り上げる。ふわふわのペーストの中に粒状のタロイモの食感が抜群!「連珍雪露」はなめらかな口当たりのパンナコッタ、タロイモペースト、タピオカを層のように重ねた逸品だ。
+886-2-2422-3676
8:00-21:00
www.lenjen.tw
崁仔頂魚市
清代創業という崁仔頂魚市は北部台湾で最も歴史が古い露天の魚市場。海産物を満載したトラック、仲卸業者のほか、鮮魚店やスーパー・レストランの食材担当者が各地から集まり、早朝4時頃から7時頃までは市場が最も賑わう時間である。新鮮な海産物が並ぶ通りを歩くと、競りの熱気と活力が感じられる。市場内・場外の美食も見逃せない。基隆ならではの熱気を体験しよう。
魚市さつま揚げ屋台
市場脇の路地裏には、さつま揚げなどの加工品を売る屋台が並ぶ。特におすすめなのが、ホタテ貝とゴボウのさつま揚げ。柔らかな食感の中に淡い魚肉の旨味が口の中に広がる、グルメが愛する人気のおかずだ。
朱添鮮魚号
魚市場のなかで早朝3 時に開店するこの小さな名店を訪ねてみよう。厚み十分のイカのお造りは弾力があり最高の食感。美しいピンク色のトロは適度に脂がのって、甘みが口の中でとろけそう。温かい海鮮味噌汁とあわせてオーダーしたい。
基隆市仁愛区仁四路45 号+886-2-2424-9832
3:00-18:00、月曜定休
炭火焼サンドイッチ
基隆廟口52 号ブースではさまざまな種類の炭火焼サンドイッチを販売している。おすすめは「かつサンド」。厚みのある豚カツは柔らかく、ピーナッツペーストと相性バッチリ。早朝のエネルギー補給にぴったりの一品だ。
基隆廟口夜市52 号ブース(同じ場所で、朝は刺身店が営業)+886-2-2424-9832
12:30-6:00
廟前グルメ
慶安宮
海の神様「媽祖」を祀り、基隆媽祖廟とも呼ばれる基隆三大廟の一つ。その悠久の歴史は見事な建築や装飾美の中に見て取れる。廟前にはやはりB 級グルメ街が展開する。
基隆市仁愛区忠二路1号
曾記鍋貼
焼き立ての焼き餃子と焼き中華まんを販売。看板商品の「鍋貼」とは、すなわち「焼き餃子」のこと。パリパリで香ばしい黄金色の皮で、キャベツ、ネギ、ひき肉がたっぷりのジューシーな餡を包む。焼き餃子のお供には酸辣湯を。千切りタケノコやニンジンが入ったとろみのあるスープに、黒酢の酸味と胡椒の香りが深みを添えている。
基隆市仁愛区忠二路3-2 号+886-2-2423-5314
11:15-20:15
大白鯊魚丸
創業60 年の老舗。基隆名物の「豆包湯」は、厚揚げの中に特製の肉そぼろを詰め、魚の練り製品で包んだもの。そのままでも、スープに入れても美味しい。看板料理の「魚丸湯(魚団子スープ)」は、豚骨とかつお節ベース。スープの旨味を吸い込んだサメ(鯊魚)のつみれが絶品。
基隆市仁愛区忠二路10 号+886-2-2432-0823
24 時間、日曜定休
福徳宮
路地裏に入ると目立つ赤い灯篭。ここは百年の歴史を誇る小さな廟だ。祀られるのは土地神様。かつて福徳街と呼ばれたことから「福徳宮」といわれる。廟の周辺は多くの老舗が並び、レトロな雰囲気に満ちている。
基隆市仁愛区愛三路49巷9号
大観圓
塩味の白玉とレバーのスープが名物の店。地元で長く愛されてきた白玉のスープは油ネギが香ばしい豚骨スープ。もち米で作られた白玉はコシがあり、包まれている具材は豚のもも肉。食べ応えたっぷりでお腹もいっぱい。
基隆市仁愛区仁四路31 号+886-2-2428-8158
7:00-17:00、月曜定休
詠盛餅店
50 年の歴史を有する。さまざまな種類の伝統菓子を販売するほか、ケーキも手がけている。手土産として人気なのは「油ネギポン菓子」。こだわりのひまわりオイルを使用し、人工香料や色素は一切加えていな
い。カリッとした食感とポン菓子の自然な甘さが素朴で懐かしい。
+886-2-2429-4076
9:00-21:00
港町のカフェ
日本時代から表玄関となった基隆は、外来文化をいち早く取り入れるしなやかさをもった町だ。コーヒーがあまり庶民に馴染みのなかった三十年前から、すでに当地には喫茶店文化があった。基隆は、台湾でコーヒーがもっとも早く根付いた地域ともいえる。
Loka Café
基隆港東岸に位置し、三角窓を持つ建物の二階。店内の窓からは虎仔山上にある「KEELUNG」の文字と西二、西三埠頭を遠望できる。コーヒーカップ片手に大型客船の出入りを見られる絶好のスポットだ。店では随時写真展や絵画展を開催している。おすすめは、滑らかな口当たりの「イタリアンフレッシュミルクティー」。毎日手作りされる数量限定のスイーツとともに楽しみたい。絶景カフェでの一杯は格別。
+886-920-393-370
12:00-21:00、月曜定休
ミニマムチャージ: ドリンク一杯
www.facebook.com/KEELUNGLOKACAFE
スターバックス 義14迴味門市
基隆のスターバックスは、街中のチェーン店とは一線を画す。洋館の老建築をリニューアルし、ルネッサンス風の独特の空間を立ち上げた。まっすぐにのびた柱に古式ゆかしい八角窓が古い港町にしっくり溶け込んでいる。壁面の棚は船の廃材をリサイクル。骨董風の家具や古い町の写真とともに、ノスタルジックな物語を新たに紡いでいる。
基隆市中正区義一路14 号+886-2-2427-8583
7:00-22:30
茹絲咖啡 Ruth C. Coffee
慶安宮の向かい、忠一路の路地裏を進むと、レトロな趣の店が目に入る。店名の由来はオーナーの奥さんのイングリッシュネーム。基隆では数少ない自家焙煎のカフェ。オーナー小錦さんが厳選したコーヒー豆を自らの手で焙煎している。
シンプルな店内はウッディな色調が落ち着きと温かみを醸し、ドライフラワーがアクセントとなっている。人気のエスプレッソはパナマとエチオピアの豆をブレンドし、独特のこくと酸味を引き出している。あわせて「生乳チーズケーキ」をオーダーしよう。なめらかな口当たりで、甘すぎずさっぱり。のどかな港町の午後をゆったりと過ごしたい。
+886-2-2422-6581
土曜- 火曜11:30-21:00、木曜・金曜14:00-21:00、水曜定休
ミニマムチャージ: ドリンク一杯
www.facebook.com/ruthc.coffee
丸角自転生活コーヒー
国際貿易港となった基隆には、船員たちがさまざまな舶来品を持ち込んだ。やがて町には「委託行」という商売が立ち上がる。国外から持ち込んだ品物を委託販売する店である。「丸角珈琲」はそうした時代のハイカラな雰囲気を漂わせている。テーブルはレトロなミシン台。入り口には昭和な香りの自転車がおかれ、タイムトンネルを抜けた世界がある。
イタリアンのほか流行中のニトロコーヒーなど多彩なコーヒーがスタンバイするほか、スナックも特色がある。「さつま揚げ腸詰サンドイッチ」は、さつま揚げや黒豚のソーセージをはさんだ基隆オリジナル。レタスやスパイシーなソースが爽やかな食感に仕上げてくれる。二人分のボリュームあり。
+886-2-2427-3028
火曜- 金曜12:00-22:00、土曜・日曜11:00-22:00、月曜定休
基隆のおすすめホテル
長栄桂冠酒店(基隆)
エバーグリーン ローレル ホテル
正面は港に面し、背後に緑いっぱいの中正公園が控え、山海の景観を堪能できるロケーションに加え、その優美な建築は基隆港のランドマークともなっている。市の中心部や「廟口夜市」から徒歩10 分とアクセス至便。141 の客室を擁し、市内で唯一の大型チェーンホテルとして定評がある。
館内のレストランでは中華/ 欧風の料理を提供している。1 階ロビーバーではピアノの生演奏に耳を傾けながら、ワインやコーヒーが楽しめる。2階の湘雅庁、3 階の湘園庁は会議・宴会スペース。5 階には湘菜を主とする中華レストランがある。18・19 階のカフェもおすすめ。壁一面のガラス窓から港が一望でき、とくに夜の港はロマンチック。
+886-2-2427-9988
www.evergreen-hotels.com
香草芸術旅店 Herb Art Hotel
古いホテルをリノベーションした、基隆では初めてのアートがテーマのホテル。田寮河畔にあり、廟口夜市、そして基隆駅も徒歩圏内だ。コンパクトなビジネスホテルながら、ブティックホテルらしい工夫が随所に施され、随時アートイベントが開催されている。街の新しい生命力を感じさせる。
+886-2-2425-4688
www.herbart.com.tw
一足のばして行きたい観光スポット
基隆は女王頭が有名な野柳などがある北部海岸の玄関口。北部海岸線は、波浪や北東季節風の影響を受け、特殊な地形を呈している。そのため、人気の観光スポットが点在し、山と海の景色が楽しめるレストランやカフェも少なくない。日程に余裕があれば、ぜひ北部海岸にも足をのばしてみたい。
基隆 雨の都散策マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。