烏来 ― 台北郊外の秘境に遊ぶ ―
文/楊善文 写真/宋育玫
目次
烏来
台北市内の中心部から南へ車で約1時間、桶後渓と南勢渓が交差する地点が烏来だ。鬱蒼たる山々とそそり立つ岩壁が独特の景観を産み出し、天然温泉や落差の大きい烏来瀑布のほか、原住民の集落、観光トロッコ、歴史あるロープウエーと多様な魅力と名物をそなえている。日帰りよし、泊りがけよし、台北観光のオプションに絶好のスポットである。
桜祭り
2月から3月にかけて烏来では温泉桜祭りが開かれる。ヒカンザクラやソメイヨシノ、ヤエザクラ、ムシャザクラ、フジザクラが次々にほころび、山や谷を鮮やかに染めていく。弱酸性炭酸泉の「美人湯」に浸りながらの花見も格別。
美人湯
「烏来(ウーライ)」という地名は、この地域に居住する台湾原住民族の一つタイヤルの言葉で「温泉」を意味する。数百年前タイヤルの狩人がこの地で、川辺に湯気が上がっているのを見つけたといわれる。雪山山脈を主な水源とする弱酸性炭酸泉で、泉温は約80度。透明で、飲むことができるほか、美肌効果がある。日本時代、すでに台北近郊の温泉郷として名声を博していた。烏来(ウーライ)には温泉街が整備され、多くの行楽客が湯上りの散策を楽しんでいる。ビジターセンターには無料の足湯がある。周辺には大小の宿泊施設のほか、いろいろなタイプの大浴場・家族風呂の立ち寄り湯も営業している。
おすすめコース
泰雅(タイヤル)民族博物館(1hr)➡烏来老街(1.5hr)➡烏来瀑布(0.5hr)➡雲仙楽園(2.5hr)
( )内は滞在時間
台北MRT 新店駅前から路線バス849 烏來下車(約30 分)
原住民の文化 山里の美食
烏来一番の魅力は野趣あふれる温泉、そして原住民の美食や文化だ。烏来街は伝統ある商店街という意味で「老街」とも称される。当地特産の食材や原住民タイヤルの料理やお土産を販売する小さな店舗が密集し、山里ならではの独特の風情を漂わせている。
とくにおすすめは、香ばしい川エビの空揚げ、イノシシの炭火焼(炭烤山猪肉)、そして温泉たまご、烏来風ちまき(月桃飯)、竹筒のおこわ(竹筒飯)、山ザンショウを使った馬告料理、オオタニワタリ(山蘇花)の炒め物などの、ご当地グルメ。土産店には、アワを醸造した「小米酒」、アワもち、原住民の織物など、烏来老街ならではの逸品がそろう。
烏来老街の入口にある泰雅民族博物館にも、ぜひ立ち寄りたい。博物館は、烏来の原住民「泰雅族(タイヤル)」の伝統と習俗を継承し、希少な文物を保存するため、新北市が2005 年に開設した。地上3階建ての瀟洒な建物で、烏来の歴史や自然環境について学び、タイヤルの信仰や建築、道具、音楽に触れることができる。なかでもタイヤル伝統の織物はその芸術性が高く評価されている。
烏來泰雅民族博物館
新北市烏来区烏来街 12 号
+886-2-2661-8162
www.atayal.ntpc.gov.tw
人気の撮影スポット 烏来瀑布へ
老街を抜けるとトロッコの駅に着く。水害により補修工事が進められていたが、2017年九月より営業を再開している。徒歩では時間のかかる、老街から名勝「烏来瀑布」までの道のりも、台車と呼ばれるトロッコ列車を利用すれば、さらに手軽で楽しいものとなる。
もともと木材の搬出用に敷設された軌道で、その歴史は1928年までさかのぼる。林業の衰微とともに観光列車にリニューアルされ、電化・複線化とともに「烏来観光トロッコ」として定着した。バスターミナルから名所の滝までを結ぶ貴重な足としてこれからも活躍に期待が集まる。
烏来瀑布は烏来のランドマーク。落差80メートル、幅10メートルという台湾随一の規模を誇り、水しぶきが霧のように見えることから、「雲来の滝」「雲仙の滝」とも呼ばれた。さらにその勇壮な姿を楽しむには、ぜひロープウエーで対岸へ渡りたい。台湾でもっとも歴史のあるこのロープウエーは全長382 メートルで、落差は165メートルに達する。瀑布を俯瞰できるほか、山上が遊園地となっているため、利用者は年中絶えない。緑に囲まれた雲仙楽園は湖水を擁する野趣に満ちたパークで、烏来の自然を体感する最高のポイントだ。
雲仙楽園
新北市烏来区瀑布路1-1 号
+886-2-2661-6510
www.yun-hsien.com.tw
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烏来 観光マップ
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