新富町文化市場 in 台北・萬華

企画構成/鍾昀彤 文/劉宛昀 写真/宋育玫・視野創異行銷

新富町文化市場

 

新富町文化市場 台北の原風景を伝えるエリアを歩く

台北市萬華区の三水街には、大戦前に建てられた「新富町食料品小売市場」がいまも残る。馬蹄形の建築スタイルをはじめ、公設市場のモデルとなるものだったが、八十年の盛衰を経て、アート・食・文化といったコンセプトを併せ持つ「新富町文化市場」として2017年に再スタートを切った。台北でもっとも古い町「萬華」と新富市場の歴史に触れる絶好のスペースである。新富市場と接する東三水街市場にはいまも地元の人たちが生鮮品を買い出しに訪れる。まさに台北の原風景がここに伝えられている。

新富町文化市場

MRT龍山寺駅3番出口から徒歩で各スポットへ

 

 

1935年 新富町食料品小売市場

新富町食料品小売市場(新富市場)は1935年6月28日の創業。台湾人も日本人も日々この地に訪れた。レンガ造り、石壁、馬蹄形という独特の体裁で、中央に設けた吹き抜けが通風と採光に最適の効果を発揮していた。往時の公設市場の中で、唯一原形を留めている貴重なスポットである。市場の事務所・宿舎として和風の建物がしつらえられ、レンガ造りの公衆トイレも整備された。

1935年6月28日、新富町文化市場の落成式(漢珍數位圖書股份有限公司提供)

1935年6月28日、新富町文化市場の落成式(漢珍數位圖書股份有限公司提供)

新富市場は大戦後、衰微したが、1960年代以降経済成長とともに生気を取り戻した。しかし近年はスーパーなどの進出で客足が流れ、さらに市場外に展開していた屋台が新たに「東三水街市場」を発足させたことにより、新富市場の凋落に拍車がかかった。

経営は停滞した新富市場だが、2006年に市の史跡に指定され、全面的リノベーションが行われた結果、2017年に「新富町文化市場 U-mkt」として再生した。市場の歴史を継承するとともに、食の教育や地元の文化といった切り口を兼ね備えた複合的な空間に生まれ変わった。

新富町文化市場

現在の新富町文化市場入り口の様子

新富町文化市場の俯瞰図(忠泰建築文化藝術基金會提供)

新富町文化市場の俯瞰図(忠泰建築文化藝術基金會提供)

 

 

2017年 新富町文化市場 U-mkt

新富町文化市場 U-mkt

忠泰建築文化芸術基金会が新富市場のリノベーションと運営を引き継いだ。ドイツで経験を積んだ建築家の林友寒が清水建築工房とともに、市場だった空間に、ギャラリー・オフィス・スクール・クッキング・カフェといった機能を具えさせた。

MRT龍山寺駅の3番出口近くにゲートがある。その左手にベンチを兼ねた木製の階段があり、その上には小ぢんまりとした展示スペースがある。右手は80年前から続く製氷室で、現在も業務用の氷を販売している。環状の通路には木製のアンティークなカウンターを配し、壁側には伝統的な文物や建築物の模型がある。

新富町文化市場 U-mkt

入り口の右側は80年前から続く業務用の製氷所

新富町文化市場 U-mkt
新富町文化市場 U-mkt

中央の天井は楕円形。シンプルな石壁に光が届き、人気の撮影スポットになっている。東三水街市場と接する旧正門付近には台湾伝統料理のクッキングスクールが設置されている。天井の壁には、露天商の教訓が張り出され、屋台文化の知識と経験を伝える仕組みになっている。

市場北東側の和風建築には伝統菓子ブランド合興壹玖肆柒が手がけるカフェ「合興八十八亭」。公衆トイレがあった南側のスペースには半月型をした打ちっぱなしの建物が立ち、新たな公衆トイレと事務スペースになっている。現代風の建築と伝統市場のコントラストが新たな調和を生み出している。

新富町文化市場 U-mkt

クッキングスクール

新富町文化市場 U-mkt

馬蹄形の構造が良く分かる

 

明日咖啡 MOT Café

市場の旧正門入り口にある。カウンターの前には焼け残った門がそのままの状態で置かれており、市場がたどってきた歳月を象徴している。天井からは竹製のランプシェードが下がり、コーヒーや茶、スイーツを楽しめるようになっている。萬華名物ともいえる青草巷(薬草通り)の青草茶や、甘酸っぱいアップルチーズケーキもおすすめ。

明日咖啡 MOT Café

新旧が融合した趣のある空間

明日咖啡 MOT Café

新富町文化市場 U-mkt
台北市萬華区三水街70号
+886-2-2308-1092
10:00-18:00(月曜休館) MOT Café の営業時間も同じ
umkt.jutfoundation.org.tw

 

 

東三水街市場

新富市場の旧正門と東三水街市場は隣り合っており、新富市場の外に出ると三水街の屋台がそのまま続いている。長い歴史を誇る点は新富市場と共通しており、萬華の人たちが食品や日用雑貨、衣類などを品定めにやってくる光景は今も変わらない。素朴なご当地スイーツもあり、観光客にとっても見逃せないところだ。

東三水街市場

地元の人の生活が垣間見える市場

東三水街市場

二つの市場の名が記された看板

 

阿婆油飯

東三水街市場のなかほど、新富町文化市場の入り口付近。「阿婆」とは、創業者の林銀おばさんのこと。現在は三代目が引き継ぐ人気店だ。油飯は粒の長いもち米にラードを加えて蒸しあげるためさっぱりしている。シイタケ・玉ねぎ・豚肉といった具は客の好みに応じてアレンジ。もち米入りの手作りソーセージ(糯米腸)や豚足(滷豬腳)、タケノコの煮物(滷桂竹筍)も試してみたい。

阿婆油飯

阿婆油飯

台北市萬華区三水街70号
8:30-15:00 月曜定休

 

金和壽司

「金禾壽司」の名前で小さな露店からスタートした。握りや手巻き、刺身、うどんなどを手ごろな価格で提供する。陳列されている寿司をお好みの組み合わせでテイクアウトできる。コスパの高い人気店。

金和壽司

金和壽司

店内でも食べることができる

台北市萬華区 三水街99号
6:00-15:00 月曜定休

 

大豊魚丸

開業以来半世紀余。鍋の材料や魚肉団子を製造・販売している。揚げ団子や揚げごぼう、スペアリブ、台湾風のてんぷらなどの焼き物も人気。とりわけ、さくさくとした歯ごたえの揚げごぼうは人気の一品だ。

大豊魚丸

大人気の揚げごぼう

大豊魚丸

てんぷら(さつまあげ)や鍋の具に使う練り物もたくさん

台北市萬華区 三水街62号
6:00-14:30 月曜定休

 

36圓仔店

MRT龍山寺駅そばにある「三六圓仔湯」は創業70年。ピーナッツ入りの白玉スープ「花生湯圓」や小豆スープ「紅豆湯」、タロイモの煮込み「蜜汁芋頭」、ピーナッツスープに揚げパンを浸して食べる「花生油條」、黒紫米と竜眼のおかゆ「紫米桂圓粥」など甘味がズラリ。「焼蜜麻糬」はピーナッツシュガーのかかったアツアツのもち。もちもちとした食感がたまらない。黄金麻糬は中にチーズが入っており、甘みと塩味が絶妙に絡み合う。伝統の米菓子は龍山寺の参拝者が供物として買っていく。

36圓仔店

36圓仔店

台北市萬華区三水街92号
8:30-21:30

 

 

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※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。