関西 ―記憶が紡がれる山里―
文/張立宇 写真/張立宇・宋育玫
新竹県「関西鎮」
記憶が紡がれる山里
新竹県は台湾本島北西部にあって、東シナ海に面し、中央山脈に接する。そのなかの関西(グワンシー)は、山間部の交通の要衝として、また炭坑や林業・製茶の中心地として栄えた街だ。商人たちが盛んに行き来した一帯は牛欄河と鳳山渓が合流する地点にあたる。かつて「カンサイホ(鹹菜硼)」と呼ばれていたことから、日本時代に「関西庄」と表記されるようになったという。最近は、古い商店街を再生させるべく、地域の人たちや若者の手で街おこしも進められている。
台北バスターミナルより台北- 竹東(関西経由)国光客運バスに乗車、「関西鎮公所」下車後徒歩約6 分。
台三線=ロマンチック街道とは?
日本に奥の細道があるように、台湾には台三線がある。台三線は俗に内山公路と呼ばれ、台北から屏東まで本島を南北に貫く総延長436.8キロに及ぶ街道。そのなかで「台三線客庄浪漫大道(客家の里ロマンチック街道)」は桃園平鎮から台中新社までの約150キロを指し、その間沿線には客家の集落が続く。
目次
関西の街歩き
関西は日本時代、紅茶を主とした製茶業が発展した。当時、茶葉は海外にも出荷されており、関西の黄金時代を支えたといえる。1960 年代以降、国際競争の激化によって徐々に衰退し、特産品は「仙草(シェンツァオ)」に取って代わられる。仙草は今では台湾全体の八割を生産するまでになり、関西は「仙草の里」として知られるようになった。
街には純朴で落ち着いた雰囲気が漂う。街道には、この地域の歴史を物語るさまざまなスタイルの建物が点在し、街歩きを楽しいものにしている。とりわけ伝統市場周辺の旧市街は、路地を抜けるたびに意外な発見に驚かされるだろう。
旧関西分駐所・所長宿舎
日本時代、新竹郡役所警察課の庁舎として使われていた建物で、すでに百年近い歴史がある。戦後は2017 年まで新竹県警察局関西分駐所として利用されてきたが、外観は往時の和洋折衷様式が見事に保たれている。旧分駐所の背後には所長宿舎が建ち、緑に囲まれた和風の佇まいを残している。2018 年度より一般に開放されており、自由に参観できる。将来的には、文化イベントに活用される予定だ。
所長宿舍
新竹県関西鎮大同路9 号
土・日曜9:00-12:00、13:30-17:00
旧関西分駐所
新竹県関西鎮中正路92 号
東安古橋
牛欄河に架かる、市街地と東安地区を結ぶ橋梁。1933 年の建造で、石造りの優雅な姿をみせる。橋脚に使われている石材は長い間水に洗われてきたことで、独特の質感と色合いを醸している。周辺の河岸は親水公園として整備され、緑豊かな水辺の散策がおすすめだ。
甦る懐かしい商店街「石店子」
水運が盛んだった時代、波止場と接する石店子の商店街(関西老街)は関西の中心地として栄えた。二百メートル余りの通りには、人々の暮らしに欠かせない雑貨店や食堂が建ち並び、あふれる人出でにぎわった。
水運の衰微とともに、商店街は賑わいを失い、近年はわずか十数軒の旧家が残るだけだったが、三年前に盧文鈞という人物がそのなかの一軒を使って「石店子69 有機書店」を開くとともに、地元の人たちと街おこしに取り組んだ。若いオーナーがおしゃれなショップを次々に開き、古い商店街を再生させているところだ。
石店子69 有機書店は販売店ではなく、状態の良い本の「物々交換所」。訪れた人たちは本を寄贈したり、交換したり、またNT$20 の負担で好きな本を借りることもできる(返却期限なし)。こうすることで、客と書店の関係が常に生み出されていくのだという。大手書店にもないインディーズの出版物や地方の刊行物が手に入るのもうれしい。ロフトをバッグパッカー向けの宿として開放しているほか、芸術や文化をテーマに講座も開催しており、地元の人たちの触れ合いの場にもなっている。盧文鈞氏は、若者たちの起業をバックアップしたいと、多くの青年たちとバザールやアートパフォーマンスを企画するなど、老街に新風を吹き込んでいる。一部のショップは週末のみ営業のため、訪問の際にはあらかじめ確認を。
石店子69 有機書店
新竹県関西鎮中正路69 号
+886-921-743-789
月曜- 金曜13:00-19:00、土・日曜10:00-19:00
冶茶四九
こだわりの陶器で極上の台湾茶を楽しんでもらおうと開店した店内には、オーナー手作り陶芸品を展示するスペースを併設。使用する茶葉は無農薬で自然栽培されたものに限定。ユニークな形をした茶器は自製で、個性あふれる趣きが茶の香りをいっそう引き立てている。
新竹県関西鎮中正路49 号+886-928-870-971
10:30-11:30、13:30-17:30、月曜定休
第一戯院
日本時代に創建された映画館。関西で最初の近代的なエンターテイメント施設といわれ、多くの住民によって様々な記憶が紡がれてきた。今も1960 年代の手描き映画ポスターが展示されるなど、懐かしい雰囲気に満ち溢れている。
Dream Theatre 52
その名の通り、ステージやギャラリーを具えた複合的なカフェ。古民家を改装した独特の雰囲気のなかで、手作りのスイーツやドリンクを楽しむことができる。劇場の仕事に従事していた女性オーナーが地域の人たちとともにつくる劇団が定期公演を行っているほか、2 か月ごとにコンテンツを替えて絵画や写真の展示会も開いている。文化の香り漂う空間で至福の一杯を堪能したい。
新竹県関西鎮中正路52 号+886-936-885-115
木曜- 日曜13:30-18:00
記憶長巷
百年の歴史を持つ「記憶長巷」は、曲がりくねった長さ六十メートルの路地。家々の軒をかすめ、壁に沿って進むと、映画館にたどり着く。かつては見終わった映画のストーリーを語り合いながら家路をたどるカップルも多かった。現在は、アーティストによりウォールアートや詩句が描かれ、新旧の記憶が重なる趣き深い場所となっている。
地産の銘品を訪ねる
錦泰観光茶廠
創業は1936 年。関西鎮に2 か所残る古い製茶工場のひとつ。かつては紅茶や緑茶を生産し、多くを日本などに輸出していた。近年は主に、炭火焙煎の烏龍茶や柑橘類を使った客家酸柑茶を生産している。製茶に用いる大型機器が現在も場内に残されており、製茶が盛んだった時代を偲ぶことができる。
新竹県関西鎮中豊路一段336 号+886-3-587-2051
8:00-20:00(見学ツアーは要予約)
http://www.kingtaitea.com/
関西臭豆腐
創業30 年の老舗。開店すると、独特の香りに誘われた長い行列ができる。表面はサクッと揚がり、中はふんわり。食欲をそそる台湾キムチと一緒にいただくのが「関西」風。
新竹県関西鎮光復路4 号+886-3-587-5696
14:00-20:00、土曜11:00-20:00、水・木曜定休
ㄤ咕麺
60 年余の歴史を誇る麺店。三人合わせると270 歳を超えるという仲良しシニアが切り盛りする。平打ち麺にモヤシと揚げネギ入りのたれをかけたシンプルなスタイル。丘のように盛り上がった麺全体をかき混ぜると、いい香りが漂う。小皿料理とあわせていただきたい。
新竹県関西鎮光復路35 号+886-3-587-5541
10:30-19:30、火曜定休
関西仙草巷
関西は台湾を代表する仙草の産地。仙草は漢方に使われる一年草で、煎じて飲むと暑気あたりに効くといわれる。この路地では、仙草ゼリーや仙草ジュースなどのスイーツのほか、仙草黒紫米おにぎりやチキン仙草ライス、仙草チキンスープなど珍しいメニューが楽しめる。
新竹県関西鎮中興路14 号+886-3-587-4090
10:00-20:30、土曜11:00-19:00、水曜定休
一足のばして行きたい観光スポット
関西 街歩き マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。