高雄 港町の百年物語
企画構成／高田雅子 文／高田雅子 写真／溫宏嘉・視野創異行銷
高雄
港町の百年物語
高雄港沿岸の鹽埕（イエンツェン）と哈瑪星（ハマセン）は、日本時代に鉄道が開通し、高雄港が近代化されたことから、高雄で最も早い時代に繁栄した旧市街地。戦後の時代の移り変わりとともに市の中心は現在の高雄駅周辺に移動したが、いまでも街のあちこちに当時の美しい建物をリノベーションした文化施設や商店が残っている。都市の歴史が感じられるレトロな空間を訪ねながら、古くて新しい「港町の百年物語」を発見しよう！
おすすめコース
1日目：高速鉄道左営駅→鹽埕観光
2日目：哈瑪星観光→高速鉄道左営駅
高雄市公共レンタサイクルYoubike
www.youbike.com.tw/region/kcg
目次
鹽埕
「鹽埕」の地名は18世紀に盛んだった製塩業に由来する。1908年（明治41年）に打狗港（現高雄港）築港第一期工事が始まり、塩田が浚渫土砂で埋め立てられて市街地となり開発が進んだ。1939年（昭和14年）に高雄市役所庁舎（現高雄市政府）が鹽埕に移転すると、街はさらに発展した。戦後も1992年に市庁舎が苓雅区に再移転するまで鹽埕は高雄市の政治の中心部であり続けた。
鹽埕第一公有市場
リノベーションされた建物の外観
「鹽埕第一公有市場（鹽一市場）」は1949年に開業した伝統市場。本館建物を中心に北の新楽街と南の五福四路に挟まれた2本の路地に沿って商店街が続いている。1980年代に最盛期を迎え、1992年の高雄市政府移転後はかつての勢いを失っていたが、2022年に全面リニューアルが施され、クリエイティブデザインと市場文化が融合した旧市街の新ランドマークとして生まれ変わった。
伝統市場前の通路沿いに店舗が続く商店街のアーケード
場内には、創業70年以上の歴史を持つ練り物専門店の「山壹旗魚食製所」や「阿雪炸牛蒡」などの老舗のほか、屋台風居酒屋「空腹虫大酒家」やクラフトビール専門店「麦酒専科」をはじめとしたカフェやスイーツ店など、若いオーナーが立ち上げた店が同居しており、ユニークな空間を作り上げている。
市場内の共用スペースは休憩所としても利用可
鹽一市場入口
鹽埕第一公有市場
高雄市鹽埕區瀨南街141-7號
portaly.cc/yymkt_1949
山壹旗魚食製所
午前中は小売りのみ、夕方からはイートインが可能
ごぼう天とカジキのさつま揚げ、蒸し物のセット「蒸炸綜合」
月曜-水曜7:00-12:00、木曜-日曜7:00-12:00・16:00-20:00
facebook.com/YAMA.ICHI.Tempura
※営業時間が変わることがあるので注意
空腹虫大酒家
気取らない飲み屋でちょっと一杯も乙なもの
左からトマト揚げ、日替わり炒飯、チキンドーナツ、ノンアルコールカクテル
17:00-20:30、月曜-水曜定休
ミニマムチャージ：1人NT$100
facebook.com/hungrybugplan
※メニューは定期的に変更あり
阿雪炸牛蒡
ごぼう天とイカのさつま揚げの盛り合わせ「綜合炸牛蒡」
9:00-17:00、月曜・火曜定休
instagram.com/asnow1950
麦酒専科
台湾と世界のクラフトビールを市場グルメと楽しもう
17:00-21:00、月曜・火曜定休
※他店のテイクアウト持ち込み可
レトロなお土産
新順発製麺行
台湾南部名物「鍋焼麵」は、揚げ麺を和風だしで煮込んだ台湾風鍋焼きうどん。70年の歴史を持つ老舗製麺所「新順発」では揚げ麺の小売にも対応しており、極細の「雞絲麵」と丸麺の「意麵」が購入できる。鍋焼きうどんの要領で台湾南部の味を自宅で再現してみよう。
意麵（太・細）、雞絲麵
鍋焼麵
7:00-19:00、日曜定休
正味珍烏魚子行
店頭でカラスミの天日干しの現場に出逢うことも！
70年の歴史を誇る老舗カラスミ店。天然のボラの卵を使い、伝統製法を守って自社で製造販売を行っている。店頭で焼いてもらうこともできるので、うまみたっぷりのカラスミをぜひ味わってみよう。一口サイズの真空パックはお土産に最適。
焼き立ての香ばしさは格別！
一口サイズはお土産に
10:00-21:00
合泰行
冬瓜片＆冬瓜糖
「合泰行」では60年にわたり、昔ながらの製法で大ぶりの冬瓜と蔗糖を煮詰めて作った「冬瓜糖」と「冬瓜片」を製造している。
冬瓜糖
冬瓜糖は600gを水5ℓで煮て冬瓜茶にするか、水1ℓで煮て冬瓜シロップに。冬瓜片はそのまま食べるか、600gに対して水4ℓで煮て冬瓜シロップに。シロップは水や炭酸水、レモン汁、ミルクなどで割って飲むと美味しい。
店頭に積まれた冬瓜
熱さましに効果のある冬瓜茶は台湾の夏に欠かせないドリンク
9:00-18:00、日曜定休
facebook.com/hetai.listang
※営業時間の変更はFBで告知
沙普羅糕餅小舖
老舗ベーカリー「三郎餐包」の三代目が立ち上げた西洋菓子店。お土産に人気の「福氣餅」は、サクサクのクラッカーで甘いミルク風味のヌガーをはさんだヌガークラッカー。容器のラベルもカラフルで可愛い。
福氣餅
12:30-19:00、不定休（FBで告知）
facebook.com/sapulodesserts
鹽埕民泊カフェ
銀座聚場 House of Takao Ginza
2020年にオープンした「銀座聚場」は、チャイナドレス店「新萬全」をリノベーションした民泊カフェ。店舗は1936年（昭和11年）に当時の鹽埕町銀座通りに建てられた商店街「高雄銀座」内に位置しており、1階と2階がカフェ、3階と4階が宿泊階になっている。カフェは昭和モダンなレトロ空間で、スイーツやコーヒーなどのドリンクを提供。宿泊階は1日1組8名以下の1棟貸切で宿泊を受け付けている。
館内はドレス店営業当時の内装を活かしながら、キッチンや浴室は新しい施設に改装して居住性を高めており、使い勝手もいい。廊下から小上がりになっている畳敷きの和室は、隠れ家のようで落ち着く空間だ。和室はビルの中央を貫く通路に面しているが、通路上部が吹きぬけになっているため、客室内にも外光が差し込み明るい雰囲気だ。宿泊階からは吹きぬけを囲む回廊に出て商店街と住宅が入り混じったユニークな空間を体感することもできる。
宿泊階の和室
宿泊階の空中回廊
07-521-5360
3080s.com/ja/takaoginza-ja
※カフェ・宿泊は日本語版公式サイトより予約可
カフェ
金曜-日曜13:00-19:00、月曜-木曜定休
ミニマムチャージ：1人ドリンク1杯、席利用：100分
※公式サイトからの予約をおすすめ
高雄の近代史にふれる
高雄市立歴史博物館
建物の前身は1939年（昭和14年）に完成した二代目高雄市役所庁舎。西洋古典建築と和風の屋根を組み合わせた和洋折衷の「帝冠様式」の建物で、「高」の字の形をした中央の母屋と緑色の外壁が印象的だ。初代庁舎は湊町（現在のMRT西子湾駅そば）に位置していたが、市街地の拡大とともに市の中心部が東に移動したことから現在の場所に市役所が移された。
壁三面の大型スクリーンを備えた歴史シアター
戦後も1992年に庁舎が再移転するまで高雄市の政治の中心部であり続け、1998年からは歴史博物館として、市民や高雄を訪れる人々に100年を超えるこの地の歴史を伝えている。
高雄の様々なデータに触れる体験型展示コーナー
9:00-17:00、月曜休館
入館無料、特別展は別料金
khm.org.tw/jp
哈瑪星
「哈瑪星」の地名は、日本時代に日本人が駅から埠頭へ続く2本の貨物支線を「濱線（はません）」と呼んでいたことに由来する。高雄港の土砂で造成された埋立地で、日本時代の新濱町、湊町、寿町にまたがる。高雄初の近代的な市街地として、最も早く経済発展が進んだ地区で、日本時代初期から中期にかけて高雄の政治・経済の中心地だった。
高雄港歴史散策
舊打狗驛故事館 ＆ 哈瑪星鉄道文化園区
舊打狗驛故事館
LRT哈瑪星駅前の「舊打狗驛故事館」の前身は、1900年（明治33年）に開設された打狗停車場。1908年（明治41年）に台湾鉄道縦貫線の基隆―打狗（たかう）間開通に伴い「打狗駅」と改称された。同年、打狗港の築港工事が始まり、1912年（大正元年）に第二期工事が完了すると、鉄道と海運の輸送能力が大幅に向上し、打狗駅は台湾南部の物流の要衝として急速に発展。
LRT哈瑪星駅のライトレールと旧高雄港駅ホームの蒸気機関車
1920年（大正9年）には打狗の地名が「高雄」に改称され、駅名も「高雄駅」と改称された。駅前の哈瑪星と隣接する鹽埕の市街地も開発が進み、日本時代の高雄で最も繁栄するエリアとなった。その後、市街地の拡大をうけ、1941年（昭和16年）に現在の場所に完成した新駅に高雄駅が移転。旧高雄駅は高雄港駅と改称され、2008年に廃止されるまで貨物専用駅として活躍した。
哈瑪星鉄道文化園区
旧駅施設は鉄道資料館「舊打狗驛故事館」として利用されており、駅事務所内を見学できる。ホーム北側300mには信号や分岐器を操作した信号扱所「北号誌楼」も残る。北号誌楼わきの赤い陸橋「天空雲台」は園区全体を俯瞰するベストスポット。ホーム前の線路が交差する緑地「哈瑪星鉄道文化園区」にはユニークな形をしたパブリックアートが置かれており、写真撮影や散策を楽しむのにぴったり。高雄の陸海運輸の現代化の歴史が感じられる貴重なスポットだ。
北号誌楼
天空雲台
哈瑪星鉄道文化園区
高雄市鼓山區鼓山一路32號
舊打狗驛故事館
高雄市鼓山區鼓山一路32號
10:00-18:00、月曜休館
入館無料
北号誌楼
高雄市鼓山區 鼓山一路53巷向かい
土曜・日曜10:00-18:00、月曜-金曜休館
入館無料
駁二芸術特区
高雄最大のアートエリア「駁二芸術特区The Pier-2 Art Center」は、1970年代に建設された高雄港第二フィーダー埠頭の倉庫をリノベーションした複合施設。各倉庫にはアートや雑貨を扱うショップ、カフェ、ライブハウスなどが入居しており、1日楽しく散策できる。
園内のあちこちに置かれたパブリックアートを探してみよう
パイナップルケーキの人気店「微熱山丘」も！
10:00-18:00、金曜-日曜・祝日10:00-20:00
pier2.org
新濱町一丁目連棟紅磚街屋
日本時代の住所で新濱町一丁目49番地に位置する赤レンガの洋館。建設は1933年（昭和8年）で、1階にアーケードを持つ「街屋」と呼ばれる建築スタイルが特徴だ。
日本時代の新濱町の発展を見守ってきた歴史的価値から、2016年に高雄市の歴史建築に登録された。2020年から修復工事が行われ、2022年からは文化施設として一般公開されている。現在は高雄の特産品やクリエイティブグッズの展示販売を行っている。
12:00-18:00、火曜休館
鼓山魚市場
2022年10月に鼓山フェリー乗り場わきにオープンした新スポット。現在の建物は1929年（昭和4年）に新濱町二丁目に完成した魚市場の競り場部分にあたる。透明なガラスの箱をイメージした建築デザインが美しく、新たな港の名所となっている。館内には高雄の農水産品や土産物の販売コーナーやレストランがあり、港の風景を眺めながら休憩するのに最適。
11:30-20:30
文化遊覧船で楽しむ高雄港
高雄の人気スポットである棧貳庫KW2、打狗英国領事館文化園区、紅毛港文化園区の3か所を繋ぐ文化遊覧船。高雄の歴史文化が感じられる6つの航路で高雄港の水上の旅を満喫しよう！
写真／高雄港文化遊艇船隊
棧貳庫
紅毛港文化園区
打狗英国領事館文化園区
高雄港文化遊艇船隊
culturalcruise.khcc.gov.tw
洋館カフェ＆レストラン
好市集-Le Bon Marche
MRT西子湾駅から新濱埠頭をつなぐ鼓山一路は、日本時代は新濱町一丁目といい、運送業や貨物貿易業の商館が立ち並ぶ商業エリアだった。この通りで陸海貨物を専門に扱っていた「合美運輸組」の社屋がレストラン店舗の前身だ。建物は屋根の上部は切妻造り、下部は寄棟造りの特徴を備える和洋折衷の入母屋造で、赤レンガの柱と白い壁、瓦屋根の組み合わせが美しい。
レストランを切り盛りするのはオーナーシェフの黃氏と夫人の2人。シェフはフランス料理出身で、南欧地中海料理を得意とする。前菜におすすめの「威尼斯醃沙丁魚」は、揚げイワシをオレンジ風味のマリネ液に漬けたヴェネツィア風南蛮漬け。季節限定メニューの「季節馬祖淡菜料理」は、夏に身が厚くなる台湾の離島馬祖特産の淡菜（ムール貝）を台湾バジルとニンニクで炒めた一品。うまみたっぷりのスープもパンに浸して味わい尽くしたい。
左から時計回りで威尼斯醃沙丁魚、季節馬祖淡菜料理、西班牙排骨雞肉烤飯豚
特別メニューのスペインの家庭料理で豚スペアリブと鶏肉を使ったパエリア「西班牙排骨雞肉烤飯豚」は肉がたっぷりで食べ応え満点（写真は4人分）。季節の素材を使った料理はどれもビールやワインに合う。人数に合わせて色々頼んでシェアして楽しもう！
07-532-6899
11:00-14:30・18:00-22:00、不定休（FBで告知）
サービス料：10％、予約可
facebook.com/marche2014
※特別メニューは1日前までに要予約
哈瑪星貿易商大楼
薄茶色の外壁が優美な曲線を描く哈瑪星貿易商大楼
ビルが建つ場所には、以前は1907年（明治40年）に完成したホテル「春田館」が建っていた。1908年に台湾鉄道縦貫線が開通し初代高雄駅が開業すると、駅前に建つ春田館は日本時代の哈瑪星を代表するホテルの一軒となったが、惜しくも第二次世界大戦中に米軍による攻撃で破壊された。戦後に春田館跡に建てられたのが「貿易商大楼」だ。現在は修復を経て、カフェや展示会場で構成される複合施設として一般公開されている。レトロな館内をゆっくり回りながら、古き良き時代の息吹を感じてみたい。
哈瑪星貿易商大楼
高雄市鼓山區臨海三路5號
11:00-20:00、木曜定休
春田LOBBY（1F）
1階はクラシックホテルのロビーラウンジをイメージしたモダンなカフェ。お茶とケーキで優雅なティータイムを。
貿商選物（2F）
2階は高雄と台湾各地のクリエイティブグッズの展示販売コーナー。
春田茶室（3F）
3階は食事やスイーツとともに台湾茶が楽しめる茶館。
奥から阿里山高山茶（冷茶）、東方美人茶
牛肉紅玉咖哩飯
春田氷亭（4F）
4階は日本料理の料亭をイメージした琴の音色が流れるかき氷店。
パイナップルとタマリンドジャムのかき氷「黃蘖」、グレープフルーツとパンナコッタのかき氷「纁」
高雄のホテル
高雄福華大飯店 Howard Plaza Hotel Kaohsiung
高雄市中心部に位置する30階建ての高層ホテル。台湾鉄道高雄駅から車で5分、MRT美麗島駅と信義国小駅や六合観光夜市も徒歩範囲という絶好のロケーションで、ビジネスにも観光にも便利だ。全271室の客室はすべてシャワールームが独立したセパレートタイプで、バスタブも完備。シンプル＆モダンなインテリアとシックな色調が安らぎの空間を演出。ビジネスルームや屋外プール、フィットネスセンターなどの設備も充実している。
レストランも、1階のカフェ「Hovii Café」をはじめ、本格広東料理・飲茶を提供するM3階「珍珠坊」、バラエティに富んだ和洋中ビュッフェが楽しめるオールデイダイニングの5階「麗香苑」、江浙料理と北京ダックの美味しさに定評がある6階「江南春」、30階から高雄市街の絶景が楽しめるしゃぶしゃぶレストラン「Smile One」などバリエーション豊か。ホテルスタッフの細やかなサービスも素晴らしく、心身ともに快適に過ごせる5つ星ホテルだ。
5階 麗香苑
30階 Smile One
07-236-2323
www.howard-hotels.com.tw/ja_JP/HotelBusiness/136
文賓大飯店-駁二館 Wenpin Hotel
高雄港のすぐそば、浪漫あふれる旧市街に佇むホテル。ホテル外観はクラシックな白い洋館風で、館内は中華風のインテリアでまとめられている。天井が高く広々とした客室は、2023年に改装したばかりで清潔で快適なうえ、宿泊費もお手頃でコストパフォーマンス抜群。無料で使える洗濯機があり、長期滞在にも心強い。
台湾鉄道高雄駅から車で約10分、MRT鹽埕埔駅から徒歩3分、LRT駁二蓬萊駅から徒歩5分と交通の便に優れており、MRTとLRTを利用すれば、高雄市内の主要観光スポットへ簡単にアクセスできる。
高雄港の人気観光スポット・駁二芸術特区へは徒歩2分で、ホテルのすぐそばに公共レンタサイクルもあり、高雄港周辺の観光に最高のロケーションを誇る。ホテルが位置する鹽埕区には高雄ならではの味が楽しめる老舗レストランや食堂、歴史ある市場などが集まっており、ご当地グルメめぐりの拠点としても魅力的だ。
07-561-2346
www.wenpin.com.tw
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高雄 港町レトロ散歩 マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。
