台南 歩調をゆるめて、古都の新しい魅力を探しに

企画構成/鍾昀彤 文/鍾昀彤 写真/宋育玫・視野創異行銷

台南

台南市は台湾の古都。豊かな歴史と奥行きのある文化を誇り、市内にはオランダ、明朝、清朝、日本時代の街並みや往時の足跡が残る。近年、そうした老建築のリニューアルがブームで、古の空間に新しい生命が注がれている。

今回は、台南市中心部にあたる中西区および安平区を歩き、日本時代の台南地方裁判所、林百貨、知事官邸といった建物にまつわる故事やリニューアル後の現状をご紹介する。同時に老建築を改造した民宿やカフェを取り上げ、台南ニューウエーブの魅力に迫ってみたい。

MAP

安平区
高速鉄道台南駅から沙崙線で台湾鉄道台南駅へ。台湾好行バス88安平線あるいは99台江線に乗り換え、安平古堡下車

中西区
台湾鉄道台南駅前から路線バス・鉄道あるいはマイカーで各スポットへ

 

 

安平区

安平(アンピン)はオランダ時代「大員」と呼ばれていた。台湾最古の町と言ってもよい。「大員」の発音から、「台湾」との漢字があてられ、この島全体の呼称になったとの説もあり、安平はまさに台湾発祥の地ともいえる。1661年、明朝の復興を唱える鄭成功がオランダ人を駆逐し、安平と改めた。

 

安平古堡

1624年にオランダ人が建造した台湾最古の城「ゼーランディア城」をいう。1661年に鄭成功が、「安平鎮城」と改め、今日「安平古堡(アンピンクーパオ)」と呼ばれるようになった。園内には当時オランダ人が建てた七十メートル余の城壁のほか、日本時代の建築も残り、安平古堡史跡記念館やゼーランディア城博物館として利用されている。印象的な白色の展望台は日本時代の建築を基礎として1975年に改修されたもの。

安平古堡

台南市国勝路82号
+886-6-226-7348
8:30-17:30
大人NT$50/子供NT$25

 

旗跑 CHIPAO

古堡街に沿って歩くと朱文殿のゲートを抜けて廟前広場に達する。目の前にたつ老建築がチャイナドレス体験ショップ。予約制で、時間帯ごとに一組ずつのゲストを受け付ける。柄やすその長さの違う二種のドレスを試着できる。髮や化粧も整えてくれるほか、バッグ、アクセサリー、扇子、そして刺繍入りのシューズも用意してくれる。とくに男性用の衣装はないが、紳士帽とサスペンダーがレンタルできる。チャイナドレスを優雅に着こなして古城の町を歩いてみたい。

旗跑 CHIPAO

レトロな雰囲気の店内も絵になる

旗跑 CHIPAO

お気に入りの一着を探してみて

旗跑 CHIPAO

壁の緑にインテリアが映える

旗跑 CHIPAO

店頭のチャイナドレスが目印

台南市安平区効忠街61号
+886-91-302-2593
11:00-19:00、定休日不定
一日体験NT$600より(ドレスのスタイルにより料金が異なる)、FacebookおよびLineより予約受付
www.facebook.com/CHIPAO.RENT/

 

安平老街

安平古堡東側の延平街は、三百余年前にオランダ人が開いた一筋の道で、台湾最古の街道と称される。ここから延びる安平老街上には古民家や老舗の商店、飲食店が立ち並ぶ。安平は漁業や養殖業が盛んで、海老巻、牡蠣巻、海老餅などの食品が有名だ。

安平老街

お土産にぴったりの海老餅(えびせん)の店では試食も可

台南市安平区延平街

 

海山館

清朝が派遣した海防軍が建てた会館で、三級史跡に指定されている。安平でもっとも保存良好な閩南(福建伝統)建築で、館内には安平特有の「刀剣屏(魔除けの置物)」のほか地元作家の書画、陶芸、石彫、刺繍が陳列されているほか、土産店とカフェを併設。

海山館

海山館
海山館
台南市安平区效忠街52巷3号
+886-6-223-0518
月曜-金曜11:00-18:00、週末10:00-19:00

 

台塩和風宿舍

1917年創建の官舍。大正年間、昭和天皇が皇太子の時代に当地の製塩工場を視察される計画があり、御休息所に予定されたこともあるが、結局使用されなかったという。和風の建築と庭園の面影を残す史跡の一つで、ギフトショップと喫茶店が併設されている。

台塩和風宿舍
台南市安北路233巷1弄12号
+886-6-2226-181
10:00-18:00

 

陳家蚵巻

安平の名物の一つが養殖の牡蠣。看板メニューの「牡蠣巻」は新鮮な牡蠣のうま味をしっかり閉じ込めた揚げ物。「海老パイ」は常連客に好評のメニューで、虱目魚(サバヒー)団子のスープといただく。

陳家蚵巻

右から:牡蠣巻、虱目魚丸湯

陳家蚵巻

人気の海老パイ(蝦派)

台南市安平区安平路786号
+886-6-222-9661
10:00-21:00

 

炸鷄洋行 安平店

圧力鍋を使用することで、鶏肉の自然な風味を守り、ジューシーなから揚げを提供している。看板メニュー「八両鶏」は黄金色のさくさくに揚がった皮が香しく、肉質も柔らかいと好評。「両粒馬鈴薯」はじゃがいもの皮をむいて揚げたもの。塩を振って、熱々のほくほくをいただく。

炸鷄洋行 安平店

サクサク、ジューシーなチキンが絶品!

炸鷄洋行 安平店

ペットボトルのロゴ

炸鷄洋行 安平店

「I’m 半斤」、彼の名は半斤くん!(半斤=300g)

台南市安平区安北路207号
+886-6-223-3869
11:00-18:00、火曜・水曜定休

 

詠純冰品

安平運河そばの「詠純冰品」は伝統の製法を守るかき氷店。アイスキャンデー、アイスクリーム、シャーベット、フルーツサンデーのほかアイスクリームケーキの予約を受け付けている。新鮮な食材を厳選し、化学添加物や防腐剤を使用しないヘルシーなスタイルを堅持している。

詠純冰品

ヘルシーでカラフルなアイス

台南市安平区慶平路743号
+886-6-299-0678
9:30-21:00

 

 

中西区

日本時代の建築

林百貨

日本人の林方一が創業した「林百貨」は1932年の創業。台湾でもっとも早期にエレベーターを具えたデパートとして名高く、まさに台南モダンの象徴だった。改修を経て2014年にリニューアルオープンしたが、玄関そばの陳列ケース、古式ゆかしいエレベーター、伝統の工法を伝えるフロア、神社跡「末広社」など往時の痕跡を各所にとどめる。現在林百貨は「台南の暮らし」をテーマに、各フロアごとに六つのテーマが設定されている。オリジナルデザインブランドやレストランが進駐し、台湾最古ともいえるデパートはいまも流行の先端を走る。

林百貨

優雅なたたずまいの林百貨

神社跡「末広社」

神社跡「末広社」

売り場フロア

旬の台南が感じられる売り場フロア

台南市中西区忠義路二段63号
+886-6-221-3000
11:00-22:00
www.hayashi.com.tw

 

台南地方裁判所

日本時代を代表する建築家「森山松之助」が設計し、1914年の落成。2016年8月に修復され、一般に開放された。台湾で唯一現存する日本時代の地方裁判所の建物である。典雅なバロック風の建築様式で、四方の土台に円形のドームを頂く。台南にとって重要な文化資産と認められ、保存が決定し、現在司法博物館として利用されている。館内には裁判にかかわる文書、史料、文物、写真が大量に展示されている。台湾の司法史に触れる貴重なスポットだ。

台南地方裁判所

典雅なバロック風建築

台南地方裁判所

歴史の回廊を訪ねてみたい

台南地方裁判所

奥がかつての裁判官席

台南市中西区府前路一段307号
+886-6-214-7173
9:00-17:00、月曜休館

 

呉園芸文センター

呉園は清代に、台南出身の紳士「呉尚新」一家が立ち上げた江南風の園林で、かつて台湾四大名園にあげられた。日本時代に台南庁に所有権が移り、1911年に台南公館(のちの台南公会堂)が建設された。公会堂右側には日本時代にその名を成した「柳屋料理」があった。柳下勇三が1934年に創建した建物は、茶芸館「十八卯茶屋」として受け継がれており、ゆったりした台南の空気に浸りながら、お好みの台湾茶を楽しみたい。

呉園

呉園

台南公会堂跡は展覧会場に

台南公会堂跡は展覧会場に

日本時代の料亭が芸茶館「十八卯茶屋」に

日本時代の料亭が芸茶館「十八卯茶屋」に

呉園文化パーク
台南市中西区民権路二段30号
+886-6-221-7942
8:00-20:00

十八卯茶屋
台南市中西区民権路二段30号
+886-6-221-1218
10:00-20:00、月曜定休

 

台南知事官邸

百十五年の歴史をもつ台南知事官邸は赤レンガ建築のランドマークだ。改修を経て今は、音楽に耳を傾けたり、書物を開いたり、典雅なロビーで講座に参加したりできる。一階の「官邸時光」フロアには生活雑貨と台湾工芸品のブランドが進駐し、二階の「知識沙龍」フロアでは不定期に歴史展・展示会が開催される。知事官邸そばの衛民街地下道では張新丕の手になる3Dアートを通して一世紀前の風景が再現されている。

台南知事官邸

赤レンガが美しい台南知事官邸

台南知事官邸

台南知事官邸オリジナルグッズ

台南知事官邸

かつての知事の執務室

台南市東区衛民街1号
+886-6-703-5353
10:00-18:00、月曜休館

 

 

老建築民宿

湧福驛站  Chung Fu Inn

台南市中西区の静かな路地にひそむ民宿。海安路、神農街、水仙宮、赤嵌楼といったスポットにも近い。二人のオーナーはいずれも台南出身ではない。たまたま立ち寄ったこの町で三階建ての古民家に出会ったという。デザインと建築という専門性を生かして、老建築に新しい生命を吹き込んだ。木製のゲート、飾り窓、レンガの壁、石材の床、カウンターなどをそのまま残したほか、一階のフロアには漢方薬店の棚やブラウン管のテレビを配置し、シャンデリアやソファとともに典雅な趣きを醸している。客室は木の質感を生かし、骨とう品や淡い照明で落ち着いた雰囲気だ。

湧福驛駅Chung Fu Inn

湧福驛駅Chung Fu Inn

ゲストルーム

湧福驛駅Chung Fu Inn

1階フロア

台南市中西区大福街36巷5号
+886-956-167-168
chungfu.okgo.tw

 

捉鳳凰 Catch Phoenix B&B

賑やかな海安路から路地に入ると、中国風情たっぷりの民宿が顔をみせる。命名はかつて台南が「鳳凰城」と呼ばれていたことに由来する。付近は港町として栄えた栄華の跡をとどめ、旅客は台南の歴史の一端に触れることになる。民宿には二つの部屋のタイプがある。一つは2人から6人用の「神農屋」。かつて神農街にあった町屋を模して、ペントハウス風のたたずまい。もう一つは2人から4人用の「海安屋」。かつての海安路の素朴な路地をイメージした体裁で、レンガの屋根と緑の樹木の対照がアクセントになっている。

捉鳳凰 Catch Phoenix B&B

ゲストルーム

捉鳳凰 Catch Phoenix B&B

中国風情ただよう民宿入り口

台南市中西区海安路二段296巷11号
+886-980-716-478
www.17phoenix.com

 

 

老建築カフェ

鹿角枝珈琲

二階建ての老建築内にあるカフェ。オーナーは美術畑出身。水墨画の技法にちなむネーミングで、初心忘れずの戒めが込められている。玄関前では小さな庭が迎えてくれる。飾り窓やバーカウンター、そして古い写真が奥ゆかしい。石の階段を上ると二階は畳のスペースがあり、骨董家具が配置されている。ノスタルジックな雰囲気の中、おすすめメニューはブランチ。台南ならではの「朝」を過ごしたい。

鹿角枝珈琲

元は診療所だった建物

鹿角枝咖啡

奥には畳敷きの席も

鹿角枝咖啡

ゆったりブランチもおすすめ

カウンター

カウンター席

ブランチ

ボリューム満点のブランチ

台南市中西区樹林街二段122号
+886-6- 215-5299
火曜-金曜9:00-18:00、週末 8:00-18:00、月曜定休
ミニマムチャージ:飲料一杯/予約:不可

 

PEKO PEKO

路地裏に潜むPEKO PEKOは、クラシカルなバーから現代的なカフェへと変身。店名は、まさに日本語の「ぺこぺこ」に由来する。店の前に立つと、飾り窓や赤レンガが迎えてくれる。一階にはバーカウンター、二階にはクラシカルなソファが置かれ、店内は五十年代を彷彿とさせる趣きだ。ドライフラワーや多くの文物はオーナーの趣味。PEKO PEKOはおかずになるパイで名高い。なかでもベーコンと野菜の「培根蔬菜鹹派」はさくさくの皮と馥郁たる玉子の香りが印象的。デザートには柑橘系の「香桔金萱」がお勧め。美しい午後が過ごせそうだ。

PEKO PEKO

五十年代テイストのレトロな店内

PEKO PEKO

一階バーカウンター奥には二階へ続く階段が

PEKO PEKO

人気のパイをぜひ味わってみて

台南市中西区民生路一段132巷5号
+886-6-228-7219
9:30-17:00、水曜定休
ミニマムチャージ:飲料1杯あるいはメニュー1人前/予約: 不可

 

 

台南小吃

檨仔林阿全碗粿

日本時代から続く百年の老舗。在来米を砕いてペースト状にし、豚肉、エビ、シイタケ、玉子の黄身などとあわせて蒸しあげる。米の香りが香ばしい台南庶民の定番スナック。

檨仔林阿全碗粿

「碗粿」は台南名物の米食

台南市中西区府前路一段279号
+886-6-214-6778
6:00-18:00

 

悦津鹹粥

台南人の朝食といえば、牛肉湯と虱目魚(サバヒー)湯のほか「鹹粥」が定番。看板メニューの「綜合鹹粥」は、魚皮、土魠(サワラ)、虱目魚 (サバヒー)、牡蠣など豊かな海鮮が自慢のおかゆだ。食材は毎朝暗いうちから準備される。「油條(揚げパン)」といっしょにいただくのが地元風。

悦津鹹粥

豪華なお粥「綜合粥」

台南市中西区西門路二段332号
+886-6-222-8490
24時間

 

亞米小星星甜甜圈

名店が林立する国華街にあって、ドーナツとシュークリームで名高い。「葡萄奶酥」は看板メニューの一つで、さくさくの外皮と甘酸っぱい干しブドウの取り合わせが妙。「馬鈴薯沙拉」は新鮮なポテトとニンジン、生野菜、マヨネーズがぴったりマッチしたサラダ。

「馬鈴薯沙拉」

ポテトサラダサンド「馬鈴薯沙拉」

ストロベリー

ストロベリーも人気!

葡萄奶酥

葡萄奶酥

台南市国華街3段6号
+886-6-228-2666
13:00-20:00、定休日不定

 

懐旧小桟

五妃廟向かいにあたる豆腐冰店。ミルク、アーモンド、抹茶という三種のテイストの「豆腐冰(豆花)」をベースにお好みのトッピングあるいは煉乳をのせる。「綜合鮮奶豆腐」はなめらかな触感のプリンやパンナコッタ、また小豆や緑豆、薏仁などの取り合わせが絶妙のスイーツだ。

ミックスミルク豆花「綜合鮮奶豆腐」

ミックスミルク豆花「綜合鮮奶豆腐」

台南市中西区五妃街206号
+886-6-215-8157
10:30-22:00

 

慕紅豆

人々にぬくもりと感動を与えてきた慕紅豆、すべてのメニューはオーナーの発想と手作りによるもの。3-4時間、薪で炊き上げたぜんざいは、小豆と薏仁の粒がはちきれそう。あわせて爽やかな甘みの桂花紅豆涼をいただこう。

左から:紅豆湯思慕於露(ぜんざい)、桂花紅豆涼(水ようかん)

台南市中西区民族路三段148巷35号
+886-927-276-819
木曜-日曜12:30-18:00

 

 

台南 おすすめホテル

F HOTEL台南館

台南市中華西路と和緯路の交差点に位置するF HOTEL台南館。駅から車で約10分、空港からは約20分と、観光にも出張にも最高のロケーション。ホテル内にはスパやジム、ゴルフのパター練習場などが設けられており、旅行中に体を動かしてリフレッシュすることもできる。フロントで自転車を借りて、アクティブに名勝旧跡を訪ね、地元のB級グルメを味わうのもおすすめだ。

F HOTEL台南館

F HOTEL台南館

F HOTEL台南館

台南市中西区光賢街23号
+886-6-2501199
+886-6-2595689
http://tn.fhotels.com.tw

 

台南大員皇冠假日酒店

台南市安平区で初めて、五つ星クラスの国際的ホテルチェーンが今秋オープン。台江国家公園、湖浜水鳥公園、塩水渓河口に近く、安平の夕陽を楽しむには絶好の立地。231の客室はシックなデザインが凝らされ、十分な広さと過ごしやすさで、ビジネスにも家族旅行にも適する。

台南大員皇冠假日酒店

台南大員皇冠假日酒店

台南市安平区州平路289号
+886-6-391-1899
https://goo.gl/rnbrVY

 

 

一足のばして台南 西海岸の旅へ!

台南 西海岸の旅 ~塩作りの里を訪ねて~

台南 西海岸の旅

安平地区から車でさらに海岸線を進んでいくと、三百年を超える塩作りの歴史をもつ台南西海岸「西浜」に到達する。スケジュールに余裕があれば、ぜひ台南中心部とあわせて旅行の日程に組み込みたい。

台湾好行バス「台江線」で七股塩山・台湾塩博物館などのスポットへ。
台湾好行バス台江線: http://jp.taiwantrip.com.tw/line/13?x=3&y=2

 

 

台南 モダン・オールド TAINAN マップ

 

※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。