南投 魚池・水里 ―日月潭と紅茶の里―
企画構成・文/鍾昀彤 写真/宋育玫
魚池・水里 日月潭の美景と紅茶の里を訪ねる
南投県は台湾本島の中央に位置し、台湾最高峰玉山のほか、最長河川濁水溪の水源地を擁する。台湾の地理的中心点もここにある。同時に、台湾で唯一海に接しない県でもある。多様な地形と民族性をそなえることから、南投県は台湾でも有数の観光県となっている。
今回は、魚池と水里の二村をご案内。湖畔の遊歩道をのんびり散策し、世界で最も美しい自転車道のひとつに選ばれた「日月潭自転車道」でペダルを踏んで。紅茶の里や木工、陶芸の里を訪ねて、郷土の産業や文化に触れてみたい。
おすすめコース
一日目:和菓森林紅茶荘園➡真満意庄脚菜➡日月老茶廠
二日目:金龍山森林遊歩道➡水里周辺スポット➡環湖自転車道の周辺スポット
1. 魚池:高速鉄道台中駅から「台湾好行バス日月潭線」で各スポットへ。
2. 水里:台湾鉄道二水駅から「集集線」に乗り換え。あるいは台湾鉄道水里駅か台湾鉄道車埕駅下車後タクシーか徒歩で各スポットへ。
台湾好行バス www.taiwantrip.com.tw
目次
日月潭環湖自転車道 & 周辺スポット
水社ビジターセンター周辺にはレンタサイクル店が立ち並ぶ。一台約NT$200 とお手軽。日月潭の湖畔を巡る自転車道は約34 キロ。一周およそ3-4 時間を想定しよう。水社から向山ビジターセンターまでは全長2.5 キロで、およそ50 分で往復できる。
永結同心橋
日月潭周遊道路上にかかる二つの橋は、「永遠に心を結ぶ」ことを象徴する「永結」「同心」と名付けられ、ウェディングフォトの人気スポットとなっている。永結橋は、自転車で走る爽快感を想定して、弧を描く曲線に設計されている。同心橋の設計は、台湾先住民サオの人たちが漁で使用する網をイメージしている。
向山ビジターセンター
日月潭涵碧半島の対岸にあり、日本人建築家團紀彦氏の設計で、2011 年に落成した。日月潭を懐に抱くイメージで建造され、35 メートルの中空部を隔てて二つの建物が繋がる。緑を生かしたRC 構造のシンプルな風貌が、湖水と対話するかのような空間を作り出している。
南投県魚池郷水社村中山路599 号+886-49-285-5668
9:00-17:00
https://goo.gl/bmrPBJ
涵碧遊歩道
「涵碧遊歩道」は曲がりくねった涵碧半島の森林トレイル。梅荷公園を起点に、全長1.5 キロあり、徒歩で約1 時間かかる。湖水と林が交互に現れ、家族連れに適したハイキングルートだ。遊歩道脇の「涵碧楼」下方には、蒋介石元総統専用の埠頭が残り、歴史を感じさせる。
梅荷園
「涵碧遊歩道」の起点にあたり、かつて蒋介石総統を警護するSP の詰所となっていた。今は眺望台として整備され、毎年恒例の花火大会では、最高の鑑賞地点となる。
南投県魚池郷中山路上15:00-23:00
湖畔の絶景を満喫
向山眺望台・天空遊歩道
「向山展望台」は「向山ビジターセンター」の右前方約450 メートルのところにある。地元の先住民・サオのシンボル「杵」をイメージしてデザインされた中空の見晴台だ。鋼材で作られた特殊構造で定員は30 人。弾性を持つ構造から、上部を歩くと吊橋上を歩いているような揺れが感じられ、床板の隙間が臨場感を引き立ててくれる。270 度の視界を誇り、水社壩・涵碧半島・拉魯島のほか青龍山上の玄光寺が眺望できる。岸辺から徐々に日月潭側に迫り出す構造は、日月潭へ飛び込んでしまいそうな錯覚を催させる。スリル満点だ。
南投県魚池郷中山路(向山ビジターセンター横)高速鉄道台中駅から「台湾好行バス日月潭線」で「向山行政センター」下車後、徒歩約10 分。
天候の状況により遊歩道は閉鎖される場合あり。
金龍山森林遊歩道
南投県魚池郷にある金龍山は、低標高で日の出を撮影できる景勝地として知られている。密生する林に包まれた「金龍山森林遊歩道」は全長約200 メートル。眺めの良い東屋が三か所あり、森林浴を楽しむには絶好のルートだ。
ご来迎は、もっとも視界が広い「日出観景台」がおすすめ。「金龍山二亭」・「金龍山一亭」を含め、展望台からは魚池盆地、日月潭、埔里市内が俯瞰でき、遠方の大尖山、卓社大山を背景に広がる山麓の景観は一幅の絵のよう。
南投県魚池郷山楂脚巷高速鉄道台中駅から「台湾好行バス日月潭線」で「日月老茶廠」下車後、タクシーで約15 分。
紅茶の五感体験
HUGOSUM 和菓森林紅茶荘園
台湾紅茶の聖地でもある日月潭。「和菓森林紅茶荘園」の創業は半世紀以上前の1949 年。製茶職人・石朝幸氏は日本人が残した製茶技術を受け継ぎ、60 年余りにわたり研鑽を深めてきた。現在は二代目が継ぎ、摘み取ったばかりの茶葉に触れ製茶を体験できる観光工場となっている。「和菓森林」の「和菓」は、福建語の「良い結果」を意味し、先人が残した茶葉栽培と製茶技術伝承への思いが込められているという。
場所は日月潭から10 分ほどで、埔里との中間にあたる。鮮やかなオレンジ色が目をひく建物は、製茶体験と試飲のエリアに分かれ、さまざまなアクティビティが用意されている。紅茶は冬季休耕となるため、製茶体験は4 月から12 月まで。また、茶葉は摘んだあと24 時間置かなければならないため、製茶体験は遅くとも前日までに電話予約しよう。
製茶は、生の茶葉を両手で揉むことから始まる。時計回りに20 分ほど揉み続けると、茶葉から汁が滲み出て、濃厚な茶の香りが漂ってくる。続いて乾燥機で焙煎し、最後はオリジナル茶筒に詰めて持ち帰ることができる。
+886-49-289-7238
平日9:00-17:30、週末9:00-18:00
DIY 体験費用:一人NT$280 より
www.assam.com.tw
日月老茶廠
「日月老茶廠」の前身は1959 年創業の「台湾農林公司魚池茶廠」。後に観光と教育の機能を兼ね備えた観光製茶場となり、半世紀にわたる台湾紅茶の歴史を若い世代に伝えている。半世紀の歳月が偲ばれる建物に入ると、一階は商店、二階は展示エリアとレストランになっている。茶の香に包まれながら、見学ルートを進むと、往時の製茶機具とともに製茶の工程を実見できる。茶葉はすべて、地下水を使用し無農薬で栽培されている。中でも「台18 号紅玉紅茶」は最上のギフトとして珍重されている。
+886-49-289-5508
8:00-17:00
www.assamfarm.com.tw
真満意庄脚菜
「瑞居渡假飯店」正面にある「真満意庄脚菜」は郷土料理と客家料理のレストラン。五百人収容の規模を誇り、紅茶風味料理が名物である。「紅茶スモークチキン」は数日間紅茶に漬け込んだ鶏肉を高温でスモーク。皮は香ばしく、肉は柔らかくジューシー。サクッとした食感の「酥炸天婦羅」は紅茶の葉を揚げ、パッションフルーツジャムと塩胡椒でいただく前菜。「茶香煎蛋」は紅茶の粉末を使った玉子焼き。玉子の旨味のあとに淡い紅茶の香りが続く一品。
南投県魚池郷大雁巷47-7 号+886-49-289-9725
平日11:00-14:00、16:30-21:00、週末11:00-21:00
カード: 不可/ミニマムチャージ: 無/サービス料: 無/予約: 可
水里周辺スポット
台湾鉄道車埕駅
台湾でもっとも美しい駅とも称えられる「車埕駅」は水里郷車埕村にあり、集集線の終点にあたる。地震で損壊後、日月潭風景区国家管理処がヒノキで再建した。駅名の字体もレトロな雰囲気を添えている。駅を出ると古民家にアートが施され、街に生命力を与えている。
南投県水里郷民権巷2 号
車埕木業展示館
林業の拠点であった古い作業場をリノベーション。旧作業場の構造の上に新しく木製の構造を加え、独特の美感を醸している。館内には五十年代の製材場のシーンを再現しているほか、各種材木のサンプルを展示。さまざな木の香りに包まれ、森に迷い込んだ心地がする。
南投県水里郷民権巷110-2 号平日9:30-17:00、休日9:30-17:30
貯木池
かつて原木を浮かべた池が、日月潭国家風景区管理処の手で緑あふれる生態池にリニューアルされている。池畔の木道を散策すれば、マガモやオシドリの群れとともに、遠くに山並みと緑の林を遠望できる。
南投県水里郷車埕村民権巷105 号9:00-17:00
木茶房
「木茶房」は木桶便当で有名な店。吹き抜けの店内は広々と快適で、名物のお弁当を食べながら、窓からの景色をゆっくり楽しむことができる。食後は、工場で木桶に焼き印を押して記念品として持ち帰ろう。
南投県水里郷車埕村民権巷5 号+886-49-277-2873
平日10:00-18:00、週末10:00-18:30、火曜定休
カード: 可/ミニマムチャージ: 一人NT$100 /サービス料: 無
水里の伝統工芸体験
林班道体験工廠
「林班道」は木工にチャレンジできる体験工場。車埕はかつて林業の基地だったところ。「林班道」の経営者は台湾最大の材木サプライヤー「振昌木業」の二代目、三代目にあたる。初代の理念を受け継ぎ、また車埕のかつてのにぎわいを取り戻そうと、ショッピングと体験イベントが楽しめる観光工場を設立した。
館内は、エコロジーをコンセプトに廃材で造られている。四つの広場は各種体験教室とショップになっている。木工体験に用いられる素材はすべてノルウェーから輸入し、台湾で加工したクモスギ。きめが細かく、やさしい色合いで、しかもすべての作品は釘を一本も使わず組み立てられる。キュートな焼印が押されたら完成だ。
南投県水里郷民権巷5 号+886-49-277-7426
平日9:30-18:00、週末9:00-19:00、火曜定休
DIY 料金は体験項目による
grove.com.tw
水里蛇窯
日本時代から続く陶器の里。「蛇窯」とは登り窯の一種で、山の傾斜を利用した窯が長く伸びている様子から「龍窯」ともいう。水里の蛇窯は台湾最古といわれる。1999 年の地震で倒壊したが、翌年には復元され、陶芸文化園として再スタートした。現在も陶器の制作が続けられているほか、観光客も茶碗作りのDIY を楽しむことができる。ぜひ当地ならではの茶器の名品を見つけたい。
南投県水里郷頂崁村水信路一段512 巷21 号8:00-17:30、水曜定休
入園料ひとりNT$150
www.snakekiln.com.tw
五つ星ホテルの極上ステイ
雲品温泉酒店
日月潭で最初の五つ星温泉ホテル。一面のガラスウォールから自然の景観が取り込まれ、天候にかかわらず、変化に富んだ日月潭の美しさが堪能できる。シンプルな幾何学的ラインとともに、石材・ガラス・原木・金属が印象的な建物は、落ち着いてハイグレードな空間を演出している。客室数は211 室。マウンテンビュー、レイクビュー、和室、和風スイートルーム、豪華レイクビュースイートルームなどがあり、すべての客室に、掃き出し窓とバルコニー、独立した大理石のバスタブを設置。プライベートな空間で、自然と触れ合いながらの至福の時間を過ごすことができる。
ロビーラウンジ、雲水坊、丹彤ブュッフェレストラン、寒煙翠、彩雲軒鉄板焼、あわせて六つのレストランで中華料理や西洋料理を提供する。「Crystal mountain Coffee」では、最適な緯度、優良な水質、寒暖差が育てたコーヒーが味わえる。「ジャパン・サイフォニスト・チャンピオンシップ」で準優勝の栄誉に輝いたこともある。結婚式場「雲月舫」では、日月潭を背景に思いのままの披露宴をデザインしてくれる。千坪の敷地に花園遊歩道、親水テーマ館、SPA 水療などの施設があり、家族連れにもカップルにも人気の宿だ。
+886-49-285-6788
www.fleurdechinehotel.com
一足のばして行きたい観光スポット
南投 埔里・草屯・清境エリア
酒造りや製紙で有名な埔里や高原の牧場が広がる清境農場のある南投の埔里・草屯・清境エリア間では車で1時間ほど。日月潭 とあわせて旅行の日程に組み込みたい。
埔里まで
日月潭 (水社ビジターセンター)から「台湾好行」日月潭線に乗車し、埔里ビジターセンターまでは約50分。
集集線
山を越えたすぐ先は、レトロなローカル線・集集線が走っている。日程に余裕があれば、ぜひ足をのばしてみたい。
集集線まで
日月潭(水社ビジターセンター)からシャトルバスに乗車し、集集線終点・車埕駅までは約30分。
南投 魚池・水里 観光マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。