湖口 ・ 新竹 ~台湾鉄道 途中下車の旅~
企画構成/朱佳雯 文/高田雅子 写真/宋育玫
台湾ならではの風情をじっくり感じるには各駅停車の旅が最適。車窓から海と山、田園と集落が織りなす風景が流れ、車内にはほのぼのとしたドラマが展開する。時間に縛られず気ままに途中下車すれば、そこには思いがけない出会いが待っている。
台湾の鉄道には百十年以上の歴史があるが、苦難の歴史を物語るように本島を一周する鉄路の輪が完結したのはごく最近のことである。台湾を周回する鉄路は西部幹線・東部幹線・北回線・南回線に分かれ、その他数本の支線からなる。列車の等級は普通車・復興号・莒光号・自強号に分かれるが、途中下車の旅には普通車・区間車あるいは復興号が便利で、料金もお手頃。
目次
湖口駅
客家文化の息づくレトロタウン
台北から各駅停車に揺られて一時間余り。タクシーに乗り換え10分ほどで、古い時代に迷い込んだような街並みにであう。台湾に数ある老街の中で、「最も完全な老街」として名高い湖口老街だ。幅10m、長さ約300mの街道が老街の中心を走り、美しい赤レンガのアーチがどこまでも長く続く。建物の軒先を飾る、一軒ごとに趣向を凝らした屋号の彫刻も趣がある。休日は、レトロな雰囲気の商店や屋台がならび賑わうが、混雑しているということもなく、街を歩く人々の歩調もゆっくりしている。台北とは異なり、時間の流れがゆったりしているのを確かに感じるだろう。ここでは急がず、のんびりと、ノスタルジックな雰囲気を醸す街並みを楽しみたい。
湖口老街
街道沿いに、「大正式建築」とよばれるレンガ造りの和洋折衷湖の商店兼住宅が佇む。過度な観光開発を受けておらず、往時を忍ばせるモダンで華やかな面影をよく留めている。
老街散策
休日にはメインストリートに多くの屋台が並び、あれこれ見て回るのも楽しい。日本では見かけない食べ物もあるので、試食販売をしている店を見かけたら、思い切ってトライしてみよう。
三元宮
湖口老街の信仰の中心、三元宮は日本統治時代の大正七年(1918年)の建立。典型的な客家の廟の建築様式を擁し、歴史的文化的価値の高さと廟内彫刻の美しさを誇る新竹県県定古跡。
新竹県湖口郷湖口老街278号
老湖口天主堂文物館
天主堂は、イタリア人神父によって建設されたカトリック教会。聖壇の壁画に描かれた青い地球を聖母マリアに託すキリスト図やステンドグラスが美しい。資料館として一般公開されている。
新竹県湖口郷湖口老街108号
復興戲院(湖口風情)
復興戲院は、昔の映画館の跡地を客家料理レストランとして再利用した建物。当時利用されていた券売窓口や放映室などが、半露天式の映画館だった面影を今に伝えている。
新竹県湖口郷湖口老街155号
百年歳月餐坊
湖口老街は客家人の街。ぜひとも客家料理を堪能しよう。味がしっかりしていて白いご飯がすすむ客家料理は、日本人の口にとてもあう。脆腸炒薑絲(豚大腸の生姜炒め)などがおすすめ。
+886-3-5693177
11:00-22:00
新竹駅
少し昔の台湾にふれる鉄道の旅
あまり遠くに行く時間はないけれど、台北以外の街にも行ってみたい。そんな旅人にぴったりな街のひとつが、台北の西南部に位置し、「台湾のシリコンバレー」と呼ばれる科学技術都市、新竹だ。新竹へは台北から自強号(特急)で一時間あまり、各駅停車でも一時間半ほど。改札をくぐり、駅のトラベル・インフォメーション・センターでもらった観光パンフレットをめくれば、ガラス工芸などの博物館や古跡、廟、老舗の商店や名物グルメなど、想像以上に各種多彩な観光案内が掲載されており、どこから回ればよいか迷うほど。有名な観光スポットは駅周辺にちらばっているので、地図を片手にぶらりと探検に出かけてみても、楽しい旅になるだろう。
新竹駅 駅舎
大正12年(1913年)に建設された台湾鉄道新竹駅は、台湾に現存する最古の駅。美しいバロック建築の駅舎は「台湾で最も美しい駅」の呼び声も高く、国定古跡に指定されている。
新竹市立動物園
台湾で現存する最も古い動物園である新竹市立動物園は、地元の人々の子供時代の記憶が詰まった場所。門の両脇で、鼻を振ってあいさつをしてくれているゾウは、今でも子供たちに大人気。
新竹市東区博愛街111号8:30-17:00、月曜休園(国の祝日は除く)
NT$20
zoo.e-tobe.com/
※2017年5月より改修工事中。2018年8月ごろ再開予定。
湖畔料亭
動物園前の新竹公園内の麗池湖畔には、日本時代に高級官僚の接待に利用されていた料亭の跡が残っており、現在はショップや展示スペースとして利用されている。
辛志平校長故居
辛志平校長故居は、大正時代に建立された新竹中学校歴代校長の宿舎跡。本館である校長宿舎跡は平屋造りの日本家屋。新竹市の市定古跡として登録され、無料で一般公開されている。
敷地内のカフェでは、デンマークの伝説的家具デザイナーであるハンス・J・ウェグナーの手による椅子に座り、庭園や本館を眺めながらゆったりとお茶を楽しむことができる。
新竹市東門街32号+886-3-5220351
資料館:11:00-17:30、カフェ11:30-17:30、月曜休館
※古跡保護のため入館時には靴を脱いで入館。靴下が無い場合は受付で購入可。
竹塹城迎曦門
九本の道が交差する円環中心に立つ竹塹城迎曦門。新竹の旧名は竹塹といい、清の時代、城郭都市であった新竹の外周は城壁が張り巡らされていた。竹塹城迎曦門は新竹城城壁の東門。
新竹市北區区東門円環
新竹州廳
日本時代に設置された新竹州庁舎は、現在も新竹市政府庁舎として使用されている。昭和2年(1927年)の落成当時の姿をよく保存しており、国定古跡に指定されている。
新竹市北区中正路120号
新竹城隍廟
新竹城隍廟は清代乾隆13年(1748年)の建立。清代には皇帝より台湾の城隍爺としては最高位の官位を授与され、今も台湾最大の城隍廟として広く信仰を集めている。
廟敷地内や敷地外壁に沿って各種多様なB級グルメの屋台が並び、信心深く、食べることが大好きな台湾人のパワフルな熱気に触れることができる。休日ともなると人気の店は昼夜ともに行列が絶えることがない。土産店では、名物のビーフンの種類も豊富。
新竹名産といえばビーフン。廟口小吃で一番有名なのも、やはり焼きビーフン(炒米粉)。あっさりとした肉団子のスープ(貢丸湯)やぷりぷりカキのオムレツ(蚵仔煎)も美味。
新竹市北区中山路75号4:30-22:00
新復珍商行
百年の伝統を誇る竹塹餅(肉餡入り中華菓子)は、米粉(ビーフン)と貢丸(肉団子)とともに「新竹三宝」に並び称される新竹名物。城隍廟脇の老舗、新復珍商行で購入できる。
新竹市北區北門街6號8:00-22:30
一足のばして行きたい観光スポット
新竹市の最も南にある台湾鉄道香山駅。日本式木造駅舎の残る香山駅を過ぎると、鉄道は苗栗県へと進んでいく。苗栗県で最初に鉄道を迎えてくれるのは、鉄道遺跡と美しい風車の風景が広がる崎頂駅、迫力満点の巨大な神像にであう竹南駅。香山 ・ 崎頂 ・ 竹南 ― 風車が回る風の街の、途中下車。
台湾鉄道新竹駅を起点とする、全長27.9kmの内湾線は、素朴な田舎の風情が楽しめると人気のローカル線。竹東、合興、内湾の三駅を歩く途中下車の旅。帰りに新竹によって廟口の小吃を楽しむのもおすすめ!
湖口 ・ 新竹 途中下車の旅マップ
※掲載情報は取材時のものであり、現在の情報とは異なる場合があります。